GIGAスクールのその先へ デジタル庁が進める教育のDX

 GIGAスクール構想による1人1台環境にやっと慣れ始めてきた学校現場。しかし、これはまだ教育のデジタル・トランスフォーメーション(DX)のファーストステップにすぎない。9月に発足し、社会全体のDXを進めるため、省庁横断で国のデジタル政策を取り仕切るデジタル庁は、教育のDXをどう進めようとしているのか。文科省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長としてGIGAスクール構想をけん引し、現在はデジタル庁アドバイザーを併任している髙谷浩樹・理化学研究所経営企画部長に聞いた。

年内のロードマップ策定を目指す
教育データの利活用の構造(デジタル庁「教育データ利活用ロードマップの検討状況について」より)

 現在デジタル庁では、教育データの利活用に向けたロードマップの策定に向けて、同庁アイデアボックスから広く意見募集を行っている(10月28日付電子版既報)。そこで公開されている資料「教育データ利活用ロードマップの検討状況について」では、寄せられた意見や有識者との意見交換を踏まえ、年内をめどに教育データの利活用ロードマップを策定し、そのエッセンスはデジタル社会形成基本法に基づいて閣議決定する「新重点計画」に盛り込まれることが明記されている。

 「GIGAスクール端末が入って、学校で活用されるようになった。しかしそれはデジタル化に向けた第一歩だ。今後、デジタル技術をフル活用したら何ができるのかを描く必要があり、中でも教育分野は『待ったなし』で、この作業を急ぐ必要がある」と髙谷部長はロードマップの役割を説明する。

 学校現場にGIGA端末が入り、さまざまな活用が始まっている現在は、まだDXに向けた最初の段階「デジタイゼーション(Digitization)」に過ぎない。次の段階である「デジタライゼーション(Digitalization)」で本格的なICTの活用が進むことで、個別最適な学びや教員の働き方の改善が進むようになる。ロードマップは、そのデジタライゼーションを視野に入れたものだ。そして、最後の「デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)」を迎えると、教育制度の見直しなども含め、デジタルに合わせて教育の在り方もがらりと変わる。本来のデジタル化とは、そのようにICTによる組織や社会の在り方そのものの大きな変化を指すが、学校現場をはじめ多くの人のイメージは、まだ最初のデジタイゼーションの段階にとどまってしまっている。

教育データの蓄積と流通の将来イメージ(デジタル庁「教育データ利活用ロードマップの検討状況について」より)

 そこで、「教育データ利活用ロードマップの検討状況について」では、教育のデジタル化のミッションを「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」とし、「教育データ利活用の現状(as is)」として、民間も含めたデジタイゼーションの状態にある教育の現状を図解。その上で、デジタライゼーションではどうなるのかを「教育データ利活用の目指すべき姿(to be)」として描いている。

デジタル庁が急ぐアーキテクチャの重要性
教育関係者にも、デジタル庁での教育のDXに向けた動きにも注目してほしいと話す髙谷部長

 そして髙谷部長は「こうした姿を実現するためには、教育データを、誰が、どこで使うのか、どうひも付けるのかといったルールを決めなければならない。その教育データの蓄積と流通の全体のシステムを『アーキテクチャ』としてデジタル庁が示さなければ、うまく次のデジタライゼーションの段階に進まない」と指摘する。

 どういうことか。すでにGIGAスクール構想などを契機に、一部の企業などで教育データの利活用に向けた技術開発が先行して進められている。しかしこの際、各社が独自のルールで教育データを管理するなどの事態に陥れば、異なるシステム同士でのデータ連携は困難になり、例えば、学校や民間で学習履歴の共有ができず、個別最適な学びに支障を来すといった、デジタライゼーションの阻害要因になりかねない。

 こうならないようにするためにも、教育データをフルに利活用できる環境を整備するとともに、データの標準化に向けて、省庁や民間企業などが一体となって透明性の高い共通ルールを作る必要がある。この動きを加速させ、オールジャパンでデータ駆動型教育を実現する体制を早急に整えることが、デジタル政策の司令塔であるデジタル庁のミッションだ。

 「さまざまなシステムがレイヤーとなって複雑に連携しているアーキテクチャは、一気に実現できるものではないし、先にできる部分だけを進めればいいというものでもない。一体的に、いつまでに何をするのか、どこから手を付けてどう整理するのか、その道筋をしっかりつけていく必要がある」と気を引き締める。

外からのソリューション提供と外への意識を

 では、この教育のDXの動きに対して、学校現場はどのように対応すればいいのか。

 髙谷部長は「教育のDXに向けて鍵を握るのは、学校現場だけでなく、むしろ教育産業界だと考えている。とにかく学校現場は忙しいので、DXでさらにやることを増やすのではなく、現状の負担を減らし、教員にとっても子どもたちにとっても使いやすくて便利なソリューションとなるシステムを、教育産業界で早く提供してほしい」と呼び掛ける。

 一方で、意識変革は学校や教育委員会など教育関係者にも求められている。「学校は学校のことしか見えていない。もっと他の分野がどうなのかを知り、自分たちの業務を見直してもらいたい。外から見ると学校は閉じられた空間だ。もっと社会に対して学校を広く開いていく意識を持ってほしい」と要望。特にこれからの学校の管理職や教育委員会は、教育のDXが目指す方向性やアーキテクチャを理解することは必須になるだろうと強調し、今後のデジタル庁の動きにも注目してほしいと話す。

 意見は11月26日まで、PoliPoli Gov(β版)で受け付けている。詳しくは同庁ウェブページで確認できる。

(藤井孝良)

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