【秋のレビュー】学校ICT活用 「達成度測る指標の改善を」

 国の予算執行の無駄や事業の効果を公開で検証する政府の「秋のレビュー」が11月9日行われ、教育現場のオンライン化の推進が取り上げられた。席上、評価者である有識者から「教育の目標に向かって、どのような効果が期待できるのか、そうしたICT活用の目的をはっきり示すべきだ」「ICT活用によって教育の目標がどの程度達成できたのか、客観的で多面的な指標を数多く設定し、達成度合いを語っていくべきだ」などと、ICT活用の目的の明確化や達成度を測る指標の改善を求める意見が相次いだ。評価者による議論の取りまとめでは「3つの観点(学習の効果、教職員の能力向上、学校運営の効率化)から教育現場におけるICT活用の目的と目標を明示し、そこに至るロジックモデルを実証的データや事例に基づいて作成することが必要」とされ、文科省に対応を求めた。

秋のレビューであいさつする牧島かれん行革相(左)

 この日のレビューでは、これまで4819億円が投じられているGIGAスクール構想について、外部有識者で構成される7人の評価者が問題点や疑問を指摘し、それに文科省の担当官が答える形で進められた。

 牧島かれん行革相は冒頭、昨年の秋のレビューで▽教職員の能力向上▽目的の達成状況や事業効果の測定に資する適切な指標の設定▽事業の効率化や予算規模の適正化の追求--が指摘されたことを踏まえ、「教職員の能力はほとんど向上していないのではないかということがデータから見えてきている。またICTの活用は不十分なのではないかという指摘もある。何がICT活用のネックになっているのか。問題解決のためにどのように対応していくのか。どのようにICTを活用していくのか、といった具体的な方策についても議論してほしい」と、論点を提示した。

 取りまとめ評価者の永久寿夫・PHP研究所取締役は、文科省が学校教育を通じて育てたい資質・能力の3つの柱として「学びに向かう力」「知識および技能の習得」「思考力、判断力、表現力などの育成」を説明したのに対し、「この教育の目標に対するICTの関わり方が分からない。3つある目的に向かって、何を使ってどのような効果が期待できるのかという、ロジックモデルが見られない」と指摘。「ロジックモデルというのは、因果関係の連鎖で記述していくもの。どのように目的を達成するかということが書かれていなければいけない。そのロジックモデルがなければ、達成度合いを測るKPIや指標を作ることも難しいと思う」と疑問を投げ掛けた。

 これに対して、文科省初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチームの板倉寛・チームリーダーは「資質・能力の3つの柱を実現していくことが学校教育の目的」とした上で、その実現に向けた手段として「主体的・対話的で深い学びの視点からの学習改善(アクティブ・ラーニング)」「組織的・計画的な教育活動の質の向上(カリキュラム・マネジメント)」「教師の資質・能力の向上」「専門人材の活用など指導体制の充実(チーム学校の実現)」の4つの項目を挙げ、「それぞれの項目で可能な範囲でKPIを設定していくことが大事だろうと思っている」と説明した。例えば、主体的・対話的で深い学びの視点からの学習改善では、今年度の全国学力・学習状況調査からスタートさせた児童生徒へのICT機器の活用に関する質問紙調査の内容などが、達成度合いを測る指標になり得るのではないかとの見方を示した。

 河村小百合・日本総合研究所主席研究員は「学校にICT機器を整備した目的をはっきりさせて、何のためにICTを生かしていくのか、もっとはっきり考えていくべきではないか。昨年秋から1年間がたち、どのくらい進展をしているのか正直、疑問に思う。個別最適な学びと協働的な学びと言っても、目標も設定されてもいないし、成果を測りようがない」と厳しく指摘。「指標は一つである必要はない。複数の指標を設定して、それをきちんと確認して達成度合いを測っていくべきだ」と述べた。

 この指摘に対して、板倉・チームリーダーは「指標については、まだまだ不十分な点があると思っている。特にアウトカムの指標について、さまざまな取り方が考えられる。例えば、どういった手法ならば経年的に取れるかなど、いろいろな観点から指標について考えていきたい。来年度には改善したものが示せればと思っている」と応じ、文科省としてICT活用の目的の明確化や達成度を測る指標の改善に取り組む考えを示した。

 こうしたやりとりを受け、7人の評価者は▽3つの観点(学習の効果、教職員の能力向上、学校運営の効率化)からICT活用の目的と目標を明示し、そこに至るロジックモデルを実証的データや事例に基づいて作成する▽ICT活用に関わる具体的方針を示した上で、その過程における問題点を整理し、その解決方法と目標達成の時期を示したロードマップを作成する▽目標の達成度について客観的および多面的な指標を設け、測定可能性を改善する--などとする取りまとめを公表した。

教育現場のオンライン化について、「秋のレビュー」評価者が取りまとめた内容

【1】学習の効果、教職員の能力向上、学校運営の効率化という3つの観点から、教育現場におけるICT活用の目的と目標をそれぞれ明示し、そこに至るロジックモデルを実証的データや、事例に基づいてそれぞれ作成することが必要である。
【2】それぞれのロジックモデルを成立させ得る、ICT活用に関わる具体的方針、つまり、何を何のためにどう使うかを示した上で、その過程における問題点、課題を整理し、その解決方法と、目標達成の時期を示したロードマップを作成する必要がある。
【3】ICT活用の進捗(しんちょく)と3つの観点(学習への効果、教職員の能力向上、学校運営の効率化)からの目標に向けた達成度について、客観的および多面的な指標を設けることにより測定可能性を改善するとともに、情報の共有を進め、その結果に基づいてPDCAを実施しなくてはならない。
【4】端末の自宅への持ち帰りの可否の相違から、地方公共団体間で成績や学習の結果に格差が生じているという指摘がある。その因果関係を調査した上で、ICT活用においては、地域間格差が生じないよう努めるとともに、格差が生じた場合は是正を図らなければならない。
【5】教職員がICT能力を高めるための時間的・精神的余裕を持てるよう、学校における働き方改革にも注力すべきである。
【6】学習への効果、教職員の能力向上、学校運営の効率化は、教育方法の改善、創意工夫、組織改革、また教員免許制度の規制緩和、改革などさまざまな方法によっても可能と考えられ、ICTの導入と並行して、多角的な検討が求められる。
【7】新規事業の要求に当たっては、3つの観点における目的など学校現場の向上に資するよう、ICT活用によるメリットのエビデンスのあるものに限るべきである。
【8】デジタル庁との連携を進め、その他の領域との協働による効果的な活用を進めてほしい。

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