【GIGA発進】 テストでのICT活用を推進する校内研修

 GIGAスクール構想が本格始動してから半年が過ぎ、教育新聞が10月初旬に行った教諭・学校管理職向けのウェブアンケート(有効回答数475人)によると、学校現場のさまざまな場面で1人1台端末の活用が進んでいることが分かった(関連記事:【GIGA発進】3人に2人が制限感じる 教育新聞調査  )。

 一方で、そのうちGIGAスクール端末が整備された中学校または中高一貫校の、前期課程の教諭・学校管理職126人に1人1台端末をテストで活用しているか聞いたところ、「小テスト・確認テストに活用している」と答えたのは35.7%、「定期テストに活用している」が4.8%と、まだ多くはなかった=グラフ1参照。

中学校、中等教育学校・中高一貫校(前期課程)での端末の使途(複数回答)

 校務の効率化や評価の考え方を変える上でも、テストにICTを活用することへ期待は高いが、スキル面での不安や校内でのコンセンサスが取れるかなど、実施までのハードルが高いのも現状だ。そんな中、学校全体で1人1台端末のテストでの活用を推進することが決定したという、千葉県船橋市立飯山満中学校(太田由紀校長、生徒312人)で行われた校内研修を取材した。

1人1台端末のテストでの活用を推進する校内研修

 10月末、飯山満中学校では1人1台端末のテストでの活用を推進しようと、校内研修が行われていた。研修を担当したのは、今年6月の前期中間テストにおいて2年生の理科のテストをグーグルフォームで行った学年主任の辻史朗教諭だ(関連記事:【GIGA到来】 定期テストをグーグルフォームで実施)。

 研修はまず、グーグルフォームでのテストの作り方について、辻教諭が説明。グーグルフォームを「テスト」に設定し、例えば択一式の問題を作る場合は「ラジオボタン」を選択、複数選択の問題を作りたい場合は「チェックボックス」を活用する。また、短文の記述の問題や、長文の記述の問題を作ることも可能で、教員らは自身のパソコン上でその機能を確認しながら、分からないところは辻教諭に質問していった。

校内研修でグーグルフォームのテストの作り方を説明する辻教諭

 辻教諭が記述式の回答設定について説明し、「例えば、長文の記述問題の場合、5点のうち2点をつけたいなども可能」と共有画面でやり方を示すと、「そんなことも出来るんだ」と驚きの声が上がっていた。また、カンニング防止のため、テスト中は生徒がインターネットで情報収集できないように設定できるなど、便利な機能についても説明があった。

 さらに、多くの教員が「これはいいね」とうなずいていたのが、自動採点後、正解の生徒にも不正解だった生徒にも、フィードバックのコメントを入れられたり、リンクを貼ったりできることだった。不正解の生徒に分かりやすい解説を届けられることはもちろん、正解だった生徒に対してもプラスαの学びを提案できる。

 その後、教員らは隣同士で相談したり、辻教諭に質問したりしながら、それぞれグーグルフォームでの簡単なテスト作りに挑戦していた。

グーグルフォームでは、今まで通りの定期テストはできない

 辻教諭は、定期テストでの1人1台端末の活用について、「やってみたいという声は周りからもよく聞く」と話す。しかし、一番重要なのは、「何のために、定期テストにICTを活用するのか」であり、例えば単純に採点を楽にしたいなど、業務改善の観点だけでやろうとすると、無理が生じてくるのではないかと指摘する。

 さらに、「これまでの授業スタイルのまま、今まで通りの定期テストをグーグルフォームでやるのは厳しいと思う」と続け、太田校長も「まず授業改善がないと難しいだろう」と強調する。

 中学校では今年度から新学習指導要領が施行され、評価については「知識・技能」「思考力・表現力・判断力」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理された。太田校長は「グーグルフォームを使ったテストで評価できるものは、ほぼ知識に限定されてしまう。まず、3つの観点について、何でどう評価するのかを分かっておくことが重要だ。それはつまり、授業をどうつくっていくのかにつながる」と指摘する。

 ちなみに、辻教諭は普段から積極的にICTを活用しており、1人1台が本格的にスタートした今年度からは、自身が担当する理科の授業が大きく変わったという。

 「私が教えずに、生徒たちが主体的に学んでくれるためにはどうすればよいのかを考え、成果物から逆算して授業をデザインすることが多くなった。その分、知識が定着しているのかが心配なので、それを単元テストや定期テストで確認している。知識を長期的な記憶に変えていくために、グーグルフォームのテストを繰り返し解けるようにしている」

 また評価についても、生徒に「何で、どのように評価するのか」をしっかりと伝えている。こうした授業改善を続けることによって、「評価における定期テストのウエートは、私の中ではかなり下がっている」と辻教諭は実感を込める。

学校全体で進めていくために

 校内研修後、早速、11月後半に予定されている後期の中間テストをグーグルフォームで実施すると決まった教科もある。同校ではこのようにして、学校全体でICT活用を推進していくことができているが、教育新聞のウェブアンケートにおいては、「校内の教職員の意識や意欲の差が大きい」と悩む声が多く聞かれた(関連記事 【GIGA発進】導入時の負担「スキル修得」最多 教育新聞調査)。

 太田校長は「今年度から、教員の約半数が参加する『GIGAスクール構想推進委員会』を年に数回、設けているのが大きい」と、学校全体で進めていく上でのポイントを上げる。GIGAに関する議題はまず同委員会で話し合い、基本的なコンセンサスを取り、大まかな方向性を決めるという。今回の各教科においてグーグルフォームを活用したテストを推進していくことも、10月の同委員会で決定しており、それを受けて辻教諭が校内研修を実施した。辻教諭も「私一人で広げようと思っても難しい。GIGAに関する学校全体の方向性を決める委員会があるのは非常に大きい」と強調する。

 また、校内研修についても、辻教諭は「30分から長くても1時間程度が適正だと思っている」と話す。あまり知識や技術を詰め込み過ぎないようにして、「ちょっと使ってみようかな」と思えるように、説明は短く、実際に教員らが使ってみる時間を長めに取るように意識しているという。

 同校では、教科を教えている教員21人のうち、すでに6人が小テストではグーグルフォームを活用している。「今回の校内研修も、いきなり定期テストではなく、まずは小テストや単元テストで使ってみるきっかけになればいい。全く強制はしていない」と辻教諭。太田校長も「教科の特性によっては、ふさわしくない場合もある。何を評価したいのかによって、試せる教員が試していけばいい」という姿勢だ。

 太田校長は「中学校では、新学習指導要領とGIGAスクール構想のスタートが重なったため、苦しい思いをしている教員も多い」と現状について話す。今後のICTの活用については、「ここはアナログの方がいいのか、デジタルの方がいいのかなど、教員も失敗を繰り返しながら、それらを分かるようになっていくのだろう。学習効果を問うことも大事だが、今はまず使いながらいろいろな可能性を探っていきたい」と前を向く。

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