【GIGA発進】「ネットは公共空間」 元SE教師と児童の約束

 GIGAスクール構想で整備された1人1台端末。新たな学びの可能性を開く一方で、いじめに使われるなどのリスクも指摘されている。そうした背景も踏まえ、東京都江東区立明治小学校の植木竜司主幹教諭が日々、児童に伝えているのは「インターネット空間は、教室と同じ公共空間である」ということだ。民間のシステムエンジニア(SE)として働いた後、教職に転じた経歴を持つ植木主幹教諭。将来、インターネットやSNSの世界にデビューする子供たちに、身に付けてほしいことを聞いた。

ぶっきらぼうな言葉に「心配」
東京都江東区立明治小学校の植木主幹教諭

 植木主幹教諭は大学卒業後、民間IT企業に就職。SEとして2年働いた後に教職を志し、教員免許状を取得した。その間、小学校でITスタッフとして働いた経験が、小学校教員の仕事の面白さに気付くきっかけとなった。「小学生は幼いものだと思い込んでいたけれど、思ったよりもずっと大人の会話ができた」。中央区、葛飾区の公立小で経験を積んだ後、明治小に赴任。今年度は4年生の担任を務める。

 校内のインターネット環境が整い、日常的な端末活用が始まった2学期。植木主幹教諭のクラスでグーグル・クラスルームを使い始めた頃、「子供たちが強い言葉、ぶっきらぼうな言葉を書き込むことがあった」。クラスメートの投稿に「見れん」と一言で済ませたり、「なんで」「それは駄目だろ」とだけ答えたりといったふるまいが見られたという。

 「クラスの中でバランス感覚のよい子が、『あの言い方は気になる。心配だな』と私に話してくれた。普段、教室で話している分には、ニュアンスが伝わるので問題ない。ただ、インターネット上で文字に残ると、表情も説明もないため、言葉のとげが強く印象に残ってしまう」と植木主幹教諭は語る。

 そこで植木主幹教諭は、児童にこう伝えた。

 「インターネットの空間は顔が見えないけれど、教室と一緒の公共の空間なんだよ。教室だと顔が見えるから、使った言葉で相手が傷ついたり、悲しんだりするのが分かる。インターネットでは顔が見えないけれど、だからこそ気を付けてほしい。発信する前に踏みとどまって、正確に伝わるかな、傷つかないかなと考えてから発信しよう」

 同校では教師用のアカウントで、児童の投稿や削除の履歴を確認することができるようになっている。植木主幹教諭は毎日、児童の投稿を確認する中で、児童がインターネット上での言葉遣いに気を付けるようになった様子に気付いた。削除の履歴から、取り消した最初の投稿より丁寧な言い方に変える、伝わりやすい表現にするといった工夫が見られたという。

学校での活用を「練習台」に

 教師が児童の投稿履歴をチェックできるようになっていることは、児童にも伝えている。学級のグーグル・クラスルームには学校管理職も招待しており、校長や副校長も投稿履歴を見られるようにしてある。「インターネット上であっても、閉ざされた空間だと、担任が独善的になるリスクがある」と植木主幹教諭は説明する。

 「子供たちには『校長先生、副校長先生、学年の先生、みんなで見ているよ』とか、『使い方が上手だね、と校長先生が褒めてくれたよ』などと伝えており、子供たちもその公共性を十分に理解してくれている。こうした、現実の世界と極めて近いバーチャルの世界は、情報モラルやITスキルをつけるのに、非常によい空間だ」

 世間ではいじめなど不適切な使い方を懸念し、制限をかけるべきだという意見もある。植木主幹教諭は「インターネットでは言いやすいし、書きやすい。いじめが起きても不思議ではない」と危険性を認識しながらも、「端末が入ったからいじめがスタートするというよりは、やはり普段の人間関係がうまくいっていないところに、端末があることで拍車を掛けてしまう、ということなのだろう」とみる。

 「インターネットを使わせないようにするという考え方もある。でも使ってみなければ、子供たちにはインターネットのリスクが分からない。学校で使用しているグーグル・クラスルームは、SNSのように完全に外に開いているわけではないからこそ、子供たちがインターネット上での振る舞いを、試行錯誤し、改善していく『練習台』とすることができる。問題が出てきたら、その都度みんなで一緒に考えていければよいと思う」と植木主幹教諭は話す。

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