【免許更新制廃止】教員研修の履歴をシステム管理 中教審がまとめ

 中教審の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会、教員免許更新制小委員会は11月15日、合同会議を開き、教員免許更新制を「発展的に解消」することで事実上廃止し、代わりに教員が受けた研修の履歴をシステム上で管理し、それを基に教員と学校管理職が積極的に対話することを通して研修の受講を奨励し、「学び続ける教師」の実現を目指すとした審議まとめを了承した。文科省は来年の通常国会で必要な法改正を行い、2023年度から新制度を導入する方針。特別部会では、今後、新たに基本問題小委員会を設置し、教員の養成・採用・研修について専門的な議論を深め、実現に向けた工程表作りを検討する。文科省は今後の議論のたたき台を示し、スポーツ選手やアーティスト、博士号取得者への特別免許状制度の基準緩和や、社会人が教員免許を取得しやすくなるように実務経験による試験の一部免除などを検討事項に挙げた。

審議まとめを報告する渡邉光一郎・中教審特別部会長(左前列中央)と、末松信介文科相(右列中央)

 今回の審議まとめは、今年3月、萩生田光一前文科相が、教員の養成・採用・研修の在り方について包括的な諮問を行った際、教員免許更新制の抜本的な見直しについて先行して結論を出すよう求めたことに応じたもので、教員免許更新制の廃止とそれに代わる新たな教員研修の方向性に絞った内容となっている。

 冒頭では、教員は主体的に学び続ける存在であることを確認。一人一人の教師の個性に応じた「個別最適な学び」と、他者との対話や振り返りなどを通じた「協働的な学び」の双方が重要であり、そうした学びは適切な目標設定と現状把握、そして学校管理職などと積極的な「対話」を通じて実現されると整理した。

 こうした「新たな教師の学びの姿」を実現するためには、教員が受けた研修の履歴をシステム上で管理し、それを手掛かりとして教員と学校管理職が対話することを通じて、その教員が最適な研修を受けられる仕組みの構築が必要と指摘。文科省に対して、任命権者や学校管理職などに、教師に研修の受講を奨励することを義務付けるよう制度改正を求めた。また、適切な研修を受けない教員に対しては、職務命令による研修の受講や、職務命令に従わない場合には適切な人事上または指導上の措置を講じることも盛り込んだ。

 新たな教員研修制度では、研修受講履歴の管理システムを導入。▽学習コンテンツの質保証▽ワンストップ的に情報を集約し、適切に整理し提供するプラットフォームの構築▽学びの成果を可視化するための証明の仕組み--の3つの仕組みを整備する構想を打ち出した。こうした仕組みの一体的構築は、教職員支援機構が中核になって整備する。

 その上で、従来の教員免許更新制について、「新たな教師の学びの姿」と矛盾すると指摘。「教員免許更新制の継続は『現場の経験』も含む学びのスタイルの多様性の実現を阻むことになりかねない」として教員免許更新制を「発展的に解消」し、事実上廃止することを結論付けた。

 また、審議まとめに対するパブリックコメントに、1126件の意見が寄せられたことが報告され、主な内容が紹介された。続いて、特別部会長の渡邉光一郎・第一生命ホールディングス会長が審議まとめの了承を求め、承認された。

 この日の合同会議では、これに続き、諮問内容である教員の養成・採用・研修の在り方について、文科省が今後の検討の方向性を検討するたたき台を提示した。

 教員養成については、教師に求められる基礎的な資質能力をICTや情報・教育データの利活用を含めて再整理し、教職課程の見直しにつなげることや、教員養成大学・学部や教職大学院の機能強化などが挙げられた。

 教員の採用では、教員採用選考試験を抜本的に見直し、大学3年時に1次試験を受験可能にしたり、特定の専門性を重視した特別選考を促進したりするなど、受験時期の早期化や受験ルートの複線化などを検討対象とする。教職課程を履修したのに採用試験を受験しなかった学生の実態調査も挙がった。

 社会人を教員に登用する仕組み作りも重要な検討課題に浮上した。特別免許状制度については、スポーツや文化芸術で優秀な活動実績がある人や、専門的な研究で博士号などの学位保有者に対して、免許授与の区分や授与基準の見直しを検討する。社会人に対して免許状取得の道を広げるため、実務経験によって一部の試験免除を行うなど、試験制度の見直しに着手することも検討課題とする。

 また、校長を中心に学校管理職に求められる資質能力を明確化することも課題となる。マネジメント能力やファシリテーション能力など校長に求められる役割や資質能力について、各教育委員会の育成指標となるよう大臣指針に盛り込むことも検討する。

 こうしたたたき台に対し、委員からはさまざまな見解が出された。岩本悠・地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事は「教員がキャリアチェンジを行い、再就職できる環境整備を考えた方がいい。若い社会人や学生と話していると、多くの人は一度教員になってしまったら、もうほかの仕事にはつけないと思っている。そう見えていると、優秀な能力の高い人材は、教職を選ばない。多様な働き方、人材の流動化が特別なことではなくなってきている中、教員のキャリアチェンジの在り方ができてくると、意欲や能力の高いさまざまな人が教員にチャレンジするようになり、より教職の魅力が高まる」と述べた。

 中原淳・立教大教授は「教師の人材確保は、入口を増やして、出口を減らすのが基本。(学校が教員を)選んでいるのではなく、(教員に学校が)選ばれているという意識の下、多様な採用をしていくことが非常に重要ではないか。採用を複線化すれば、育成も複線化することになる。採用の経路に応じた適切な育成の手法を今後、セットで考えていかなければならない」と、複線的な育成方法を視野に入れる必要性を指摘。「そのときには長時間労働の是正が採用増に向けた最大のメッセージになる。さらに組織が多様化していけば、管理職の管理コストや必要なマネジメント能力が爆増する。社会人がいろいろな経路で学校に入ってくると、管理職の育成が必須になる」と、人材マネジメントの重要性を強調した。

 教員免許更新制小委員会の主査を務めた加治佐哲也・兵庫教育大学長は「世の中の変化は非常に激しい。いまは教師不足と言われているが、今後は定年が伸びるし、何よりも少子化が進む。コロナ禍で出生数がかなり減っており、これは幼稚園で3年後、小学校では5、6年後に現実になってくる。そうした今後の教員へのニーズをにらんで考える必要があるのではないか。いまの状況が一変する気がしないでもない」と、少子化の加速を踏まえた対応の必要を挙げた。

 永田恭介・筑波大学長(国立大学協会長)は審議まとめも踏まえながら、「どうしても教員に対する管理や制限という視点から書かれているようにみえる。教員は尊敬されなければいけないのに、こんなにがちがちに書かれていいのか。教員の創造性を高めるとうたっているのに、本当にそれができるかどうか分からないような内容になっていないか。大切なのは、教員がより専門を磨くとか、より広い教養を身に付けることなのに、そういうことを検討する書き方がない」と、たたき台の考え方に疑問を投げ掛けた。この指摘について、複数の委員から賛同する意見が出た。

 全日本中学校長会(全日中)会長の宮澤一則・東京都板橋区立中台中学校校長は「個人の教員の研修は充実してきているが、学校は協働的な学びを通してチームとして力量を上げて行かなければいけない。(たたき台では)そこを校長に任せる、校長のマネジメント次第だよ、と書かれている。校長はその辺は自覚して、学校の力量を高めるために気を引き締めていかなければいけないが、いまの状況だと校長の力量によって取り組みが変わってくる。これからの議論では、研修の在り方として、個人の研修だけではなく、組織的な研修も考えていけるといい」と述べ、校長の力量次第となる仕組みに対する懸念を表明した。

 合同会議終了後、渡邉部会長らは、末松信介文科相を訪ね、教員免許更新制の事実上の廃止を結論付けた審議まとめを手渡した。

 渡邉部会長は「審議では、3つの重要な指摘があった。教師は主体的な学びを重視する必要がある。教師の管理職が積極的な対話を行い、体系的計画的な学びをすることが重要。質の高い学習コンテンツを整備し、教師の新たな学びの姿を確立する。そうした教師の新たな学びの姿に対して、教員免許更新制は阻害要因になってしまうという検討結果が出た。そこから更新制は発展的な解消というまとめを出した」と報告。

 末松文科相は「教師はいま現場で大変疲弊している。教師が疲れていたのでは前に進まないので、まず働き方改革を進めたい。その上で、子供たちには自分で問題点を考え、教師からアドバイスをもらいながら、友達といろいろ問題点を語り合いながら、自分で解決する力を付け、そういう人生を送らせてやりたいと思っている。法改正を含めて前に進めていきたい」と応じた。

「『令和の日本型学校教育』を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて」審議まとめのポイント

■「令和の日本型学校教育」を担う新たな教師の学びの姿

○学び続ける教師
・教師は学び続ける存在であることが強く期待されている
・時代の変化が大きくなる中で常に学び続けていくことが必要
・主体的に学び続ける教師の姿は、児童生徒にとっても重要なロールモデル
○教師の継続的な学びを支える主体的な姿勢
・一人一人の教師が安心して学びに打ち込める環境の構築
○個別最適な教師の学び、協働的な教師の学び
・一人一人の教師の個性に即した、個別最適な学びが必然的に求められる
・他者との対話や振り返りなど、協働的な教師の学びも重視される必要がある
○適切な目標設定・現状把握、積極的な「対話」
・適切な目標設定(「将来の姿」)と現状(「現在の姿」)の適切な把握
・任命権者や服務監督権者・学校管理職等と教師の積極的な「対話」
○質の高い有意義な学習コンテンツ
○学びの成果の可視化と組織的共有

■「新たな教師の学びの姿」の実現に向けて早急に講ずべき方策

○公立学校教師に対する学びの契機と機会の確実な提供
 (研修受講履歴の記録管理、履歴を活用した受講の奨励の義務づけ)
・一人一人の教師が「将来の姿」を適切に設定することができるようにするためには、①任命権者や服務監督権者・学校管理職等が個々の教師の学びを把握し、教師の研修受講履歴を記録・管理していくこと②教師と任命権者や服務監督権者・学校管理職等が、教員育成指標や、研修受講履歴等を手がかりとして、積極的な対話を行うとともに、教師本人のモチベーションとなるような形で適切な研修を奨励すること--が必要。
・文科省は、任命権者が教師が受けた研修の履歴等を記録及び管理し、任命権者や服務監督権者・学校管理職等が、教師との対話を通じて、教師に研修の受講を奨励することを義務付けることを検討すべきである。
・期待する水準の研修を受けていると到底認められない教師には職務命令による研修の受講や、職務命令に従わない場合には適切な人事上又は指導上の措置を講じる。

■準備が整い次第講ずべき事項と具体的方向性

○研修履歴を管理する仕組みの高度化
・研修受講履歴管理システムの導入
○新しい姿の高度化を支える3つの仕組み
・学習コンテンツの質保証
・ワンストップ的に情報を集約し、適切に整理・提供するプラットフォーム
・学びの成果を可視化するための証明の仕組み
○教職員支援機構の果たすべき役割
・研修受講履歴管理システムと3つの仕組みの一体的構築に向けた構想の具体化
・都道府県教育委員会等の人的参画を得るために必要な環境の整備

■「新たな教師の学びの姿」と教員免許更新制の矛盾

・更新しなければ職務上の地位の喪失を招きかねず、自律的かつ主体的に学ぶ姿勢は発揮されにくい。
・10年に1度の講習は、常に最新の知識技能を学び続けていくことと整合的でない。
・個別最適な学びが求められる中で、共通に求められる内容を中心とする更新制とは方向性が異なっている。
・教員免許更新制の継続は「現場の経験」も含む学びのスタイルの多様性の実現を阻むことになりかねない。
 ⇒当面の方策と同時に、教員免許更新制を発展的に解消し、「新たな教師の学びの姿」を実現し、教師の専門職性の高度化を進めていく。
「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会 検討の方向性(案)

1.教師の養成に関する検討の方向性
・教師に求められる基礎的な資質能力と教職課程の見直し
・特定分野に強みや専門性を持った教師の養成・採用
・教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化
・教育委員会における大学・教職大学院との連携協働の促進

2.教師の採用に関する検討の方向性
・教職への志望動向に関する実態把握
・人物重視の多面的な採用選考
・教員採用選考試験の実施スケジュールの在り方
・効果的・効率的な教員採用選考試験の実施

3.社会人等の登用促進に関する検討の方向性

4.教師の研修に関する検討の方向性
・新たな教師の学びの姿の実現に向けた体制整備
・学校管理職(特に校長)に求められる資質能力の明確化

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