少人数学級「十分と考えていない」 文科相、教育団体に表明

 校長会や教育長会、日本PTA全国協議会など、教育関係23団体で構成される「子どもたちの豊かな育ちと学びを支援する教育関係団体連絡会」は11月16日、東京都千代田区の参議院議員会館で全国集会を開き、中学校や高校も含めた少人数学級の実現や、小学校高学年の教科担任制導入に合わせた教職員定数の改善、学校における働き方改革の推進などを求めるアピールを採択した。末松信介文科相は小学校全学年の35人学級について「文科省はこれで十分と考えていない。中学校の35人学級や、さらなる少人数学級を含め、検討を進めていく」と述べ、さらなる少人数学級の実現に取り組む考えを強調した。

教育関係23団体の代表者を前にあいさつする末松文科相

 採択されたアピールでは、「小中学校のみならず、高校、特別支援学校などのあらゆる学校の教育環境の改善を実現し、より一層の良質な教育を子供たちに約束することが、私たち教育に携わる者の責務。学校教育の直接の担い手である教職員の資質能力の向上と数の充実は、とりわけ重要」と強調。

 来年度予算編成に向けた要求事項として、▽中学校・高校も含めた、少人数学級の計画的な整備を図る。小学校高学年の教科担任制を推進するための教職員定数の改善を行う▽スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、教員業務支援員、学習指導員、部活動指導員の配置促進▽運用面への支援も含めた、学校のICT環境の整備充実▽優れた教職員を確保するための教員の処遇改善。教育の機会均等の維持向上を図るための義務教育費国庫負担制度の堅持▽既存の教育予算の削減や付け替えではなく、計画的·安定的な財源確保を行う--の5項目を挙げた。

 開会のあいさつに立った日本PTA全国協議会の清水敬介会長は「今年3月、小学校における少人数学級が実現し、この全国集会で気持ちを同じくする教育関係者は、誰もがその成果を喜んだ。こうして集い続け、歩み続けることが、子供たちの学びの環境を整えていくための力になる、と改めて感じた。明日から政府および関係国会議員に対し、中学校、高校、特別支援学校も含めた、あらゆる学校の教育環境の改善を実現することや、教育関係予算の計画的安定的な財源確保を要請する活動に入っていきたい」と話し、来年度予算編成に向けて教育関係団体が足並みをそろえて予算獲得に向けて働き掛けていく考えを強調した。

 来賓として出席した末松文科相は「このたびは約40年ぶりに小学校の学級編制標準を引き下げ、35人学級が実現することになった。しかしながら、文科省として、これで十分と考えていない。35人学級の教育効果を分析・検証し、中学校の35人学級や、さらなる少人数学級を含め、学校の望ましい指導体制の在り方について検討を進めていく」と述べ、一層の少人数学級化に取り組む決意を表明した。

 続いて、「わが国は人口減少が続く中、ICTも活用しながら、教育を通じて誰1人取り残すことなく、全ての子供たちの可能性を開花させていく必要がある。そのために、個別最適な学びや協働的な学びといった、令和の時代にふさわしい新しい学びへと転換していかなければならない。この職責を担ってもらう教員の働き方改革は喫緊の課題と認識している。文科省としては、教育免許更新制の発展的解消を含む、教師の養成・採用・研修等に関する改革を進めていく。加えて、小学校における教科担任制など教職員定数の改善、支援スタッフの配置拡充、ICT環境のさらなる整備充実などに全力で取り組んでいきたい」と説明し、来年度予算編成に臨む文科省の姿勢に理解を求めた。

 この日の集会は新型コロナウイルス感染防止のために参加者を絞り、各党の代表者や文科省職員、関係団体代表者ら、約100人が出席した。

子供たち一人一人に対するきめ細かな教育の実現と学校における働き方改革の推進等を求めるアピール(案)

 次代を担う子供たちの健やかな成長は、すべての大人たちの願いです。子供たちが全国どこに生まれ、どんな家庭環境で育ったとしても、等しく良質な学校教育を受けられるようにすることは、私たち大人、そして国の責務です。
 Society5.0時代の到来を見据え、子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びを実現するとともに、今般の新型コロナウイルス感染症対応を踏まえ、安全・安心な教育環境を確保しつつ、すべての子供たちの学びを保障するためには、学校の指導・運営体制の充実やICT教育環境の整備等、新しい時代の学びの環境整備を進めることが不可欠であり、小中学校のみならず、高等学校、特別支援学校等のあらゆる学校の教育環境の改善を実現し、より一層の良質な教育を子供たちに約束することが、私たち教育に携わる者の責務であります。その中でも、学校教育の直接の担い手である教職員の資質能力の向上と数の充実は、とりわけ重要です。
 加えて、教員の長時間勤務は看過できない状態であり、持統可能な学校の指導·運営体制の構築に向け、学校における働き方改革の推進は急務となっています。

 以上のことを踏まえ、私たちは日本のすべての人々に、次の事項の実現を強くアピールします。

○ICTの効果的な活用を含むきめ細かな指導の充実、個別最適な学びと協働的な学びの実現および次なる感染症等の緊急時においても、すべての子供たちの学びを保障するため、中学校・高等学校も含めた少人数学級の計画的な整備を図るとともに、教科指導の専門性を持った教員による小学校高学年の教科担任制の推進を図るための教職員定数の改善を行うこと。

○教育現場が抱えるさまざまな課題への対応、感染症対応、教員の負担軽減による教育の質の向上を図るため、右の定数改善に加え、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置促進やSNSなどを活用した相談事業を推進するとともに、教員業務支援員、学習指導員、部活動指導員の配置促進を進めること。 また、東日本大震災をはじめとする地震や豪雨等の自然災害により被災した児童生徒のための教職員やスクールカウンセラーによる支援を今後も継続的に行うこと。

○1人1台端末環境における本格的な教育活動が全国の学校で展開される中、すべての子供たちの学びを保障し、より一層質の高い教育活動を実現するため、運用面への支援も含めた学校のICT環境の整備充実を進めること。

○意欲と情熱をもって教育に取り組む優れた教職員を確保するため、人材確保法の趣旨や令和四年度に実施予定の勤務実態調査の結果を踏まえた教員の処遇改善に努めるとともに、教育の機会均等とその水準の維持向上を図るため、その根幹となる義務教育費国庫負担制度を堅持すること。また、地方財政を圧迫し、人材確保に支障を生じたり、地域間格差が生じたりすることのないよう、義務教育費国庫負担金および地方交付税の財源確保を行うこと。

○教育投資は未来の日本への先行投資であり、国の最重要事項であることから、諸方策の実現にあたっては、既存の教育予算の削減や付け替え等によるのではなく、計画的·安定的な財源確保を行うこと。

 令和3(2021)年11月16日
 子どもたちの豊かな育ちと学びを支援する教育関係団体連絡会

 日本PTA全国協議会、日本教育会、全国市町村教育委員会連合会、全国都市教育長協議会、中核市教育長会、全国町村教育長会、全国連合小学校長会、全日本中学校長会、全国公立小・中学校女性校長会、全国特別支援学校長会、全国連合退職校長会、全国高等学校長協会、全国公立学校教頭会、全国特別支援教育推進連盟、全国へき地教育研究連盟、日本連合教育会、全国養護教諭連絡協議会、全国公立小中学校事務職員研究会、全国学校栄養士協議会、日本教職員組合、全日本教職員連盟、日本高等学校教職員組合、全国教育管理職員団体協議会

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