ウェルビーイングのためのデータ利活用 中室牧子氏語る

 未来の教育をどのように創造するかをイノベーターと共に議論する国際カンファレンス「Edvation×Summit 2021」に11月19日、デジタル庁デジタルエデュケーション統括を務める中室牧子氏が登壇し、これからの教育データの利活用について語った。中室氏は「所管によってばらばらに管理されているデータをどうつなぐかが最初の山。これだけで解決される問題はかなりある」と述べ、子供たちのウェルビーイングの実現に向けたデータ利活用の重要性を指摘した。

Edvation×Summit 2021で対談するデジタル庁デジタルエデュケーション統括の中室氏(左)と、グーグルの秋元氏

 中室氏は10月にデジタル庁や文科省などが公表した「教育データ利活用ロードマップの検討状況について」をもとに解説。教育のデジタル化のビジョンとして示された「データの①スコープ(範囲)、②品質、③組み合わせ、の拡大・充実により、教育の質を向上させる」という点について、詳しく説明した。

 ①スコープ(範囲)については、「これまでは学力テストのスコアや偏差値などが重視されてきたが、最近の研究成果を踏まえると、必ずしも学力のみならず人格面の問題や、やり抜く力、自制心のような非認知能力が重要だとされている。心理学、経済学のさまざまな知見を応用して計測できるようにしつつ、多様な側面をしっかり見ていきたい。また塾や習い事といった学校外の学びにもスコープを広げつつ、アナログな世界では十分に行き届かなかったところにも貢献が可能になるようにしたい」と説明した。

 また②品質については、「教育の効果はすぐには出ないし、ある技術や知識を獲得すると、それをレバレッジにして次の新たな技術や知識を活用できるという相乗効果もある。時間軸で見て、どのようにスキルが蓄積されてきたのかを可視化することが極めて重要。ただデータに欠損や抜け漏れがあると、予測や効果測定の精度が落ちることがあるので、品質管理をどのようにしていくかが大切になる」と語った。

 ③組み合わせについては、「目的に応じて行政データと学習データ、学校内外の学びといったさまざまなリソースの組み合わせが非常に大事になる」と指摘。さらに「学校でも行政でも、所管によってばらばらに管理されているデータをどうつなぐかが、最初の山だろうと考えている。こうしたデータをつなげるだけで、解決される問題はかなりある」と述べた。

 例として「学校ではなんとなく不登校傾向があることが分かっており、福祉の部署では家庭の中でさまざまな問題を抱えていることが分かっていたとしても、教育委員会と福祉の部署が情報を連携できていなかったがために大きな問題に発展してしまったということが、各自治体で起こっている。一人の子供について別々の部署でデータが管理されている障害を、最初に打破していかなければいけない」と強調した。

 また「誰が情報を見られるようにするかは、必要性に応じてきちんと縛っておきながら、プライバシーの問題に配慮しつつ、子供たちのウェルフェアやウェルビーイングを高める方向にしっかり使っていく」と説明した。

 中室氏と対談した秋元禮グーグル・クラウド・ジャパン合同会社パブリックセクター本部EdTech東日本エリア責任者は「教育DXの議論では、技術的にできることよりも、組織としてどうしていくかが大きなポイントとなる」と指摘。

 中室氏は「技術的にできないことは、実はものすごく少ない。国民的な合意形成ができているかということや、制度や規制の問題によるところがかなり大きい」として、デジタル庁などが検討するロードマップについて、意見を寄せてほしいと呼び掛けた。意見募集は11月26日までで、詳しくは同庁ウェブサイトで確認できる。

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 同イベントの一環として明日20日午後8時からは、教育に関する問題・課題への賛成・反対を読者・視聴者に聞き、インタラクティブに議論・討論するライブ番組「教育新聞 Edubate LIVE!」が配信される。

 ゲストの有識者はウスビ・サコ京都精華大学学長、佐藤昌宏デジタルハリウッド大学大学院教授。司会は教育新聞編集長の小木曽浩介。

 テーマは「GIGAスクール 子供は主役になれているか?」「いじめ、校則… 指導提要で特に見直すべきは?」「教職の魅力向上策は?」「オンライン授業を対面授業と同じ扱いにし、日常的に認めるべきか?」を予定。参加費は無料で、事前に特設サイトから要申し込み。

 現在から20日の配信終了までリアルタイムで投票・投稿できるEdubate「オンライン授業を対面授業と同じ扱いにし、日常的に認めるべきか?」の投票はこちらから。

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