【GIGA発進】「より良く使う」段階に 公立校3教諭が語る

 「とにかく使ってみる」から「より良く使う」へ——。GIGAスクール構想により、1人1台端末が整備されて半年。公立校でも活用が進み、導入期を過ぎたからこそ、「これでいいんだろうか?」と悩む教員も増えてきている。9月に発売後、すぐに重版が決まった『いちばんやさしいGoogle for Educationの教本』(インプレス)の著者である、東京都調布市立多摩川小学校の庄子寛之指導教諭と練馬区立石神井台小学校の二川佳祐主任教諭、八丈町立三根小学校の古矢岳史主任教諭が、公立校におけるそれぞれの現状と、今後の展望を語り合った。

もう少し先の未来には新しい形の授業が見えてくる

——4月から本格的に1人1台がスタートし、半年がたちました。教育新聞が10月に行った教諭・学校管理職向けのウェブアンケート(有効回答数475人)では、個人の特性や習熟度に合わせた学びや、児童生徒同士の協働的な学び、探究的な学びといった、新しい学びができているかについては、「そう思う」「まあそう思う」と答えた割合がそれぞれ7割ほどに上りました。一方で、「使うことが目的化している」との声も目立ちました(関連記事【GIGA発進】新しい学びに7割が手応え 教育新聞調査)。それぞれの現状について、教えていただけますか。

 古矢 まだまだ混沌(こんとん)としている状態ですね。例えば、一斉授業のスタイルをそのままタブレットに置き換えようとしている人もいるし、新しい授業のために使おうとしている人もいます。「ただ使う」だけから、「どのように使うのか」を議論しながら活用していくべき段階に差し掛かってきていると感じます。

 また、使い続ける中で「これはアナログでやった方がいいよね」という瞬間があります。例えば、詩を書くこと。手書きだと、リズムを感じることもできるし、字の大きさや書き方で表現できます。白い紙を一枚与えて、イラストも書いて、廊下に掲示した時に伝わるものがあります。

 教師がデジタルとアナログのそれぞれの良さや価値を説明して伝えることで、子どもたちもそれらをつかみ取れるようになっていくのではないかと思います。

 二川 4月から一通り使ってきて、学校全体としてもICTが浸透しつつあるけれども、まだまだ試行錯誤している段階です。古矢先生の話にも関連しますが、改めてアナログの良さも感じています。例えば、私の勤務校ではクロームブックなので、iPadなどと比較すると起動までの時間が少しかかります。その点、紙のノートは一瞬で開いて使えるので、その良さを再認識しているところです。

 ある程度の量をこなしたからこそ、アナログとデジタルのどちらが有効なのかなど、今後はいろいろと取捨選択されていく時期に入っていくのだろうと感じています。

 庄子 二川先生が言うように、起動するのに時間がかかったり、パソコンで文字を打つよりもノートに書いた方がより良く書けたりするなど、そもそもダウングレードしてしまうところは、まだたくさんありますよね。一斉授業スタイルの場合、「タブレットを使うと授業が止まってしまうから効率的にできない」と感じる人もいます。

 私は、GIGAスクール構想においては、ステップが3つぐらいあると考えています。ステップ1は、ダウングレードする部分もあるけれど、まずは「とにかく使ってみる」という段階。ステップ2は、「より良く使う」という段階。アナログがいいところはアナログで、デジタルがいいところはデジタルでと、より有効にそれぞれ使い分けられるようになっていくと思います。

 そして、ステップ3は「新しい形をつくる」という段階です。今は45分という授業時間の中で「10分調べて、10分でまとめて」とすることも多いと思います。しかし、ICTを生かして個別最適な学びを実現していく上では、そもそも授業は45分が適しているのでしょうか。私は限界があると感じています。

「GIGAスクール構想にはステップが3つぐらいある」と庄子教諭

 みんなが黒板の方を向くのではなく、ひたすらパソコンと向き合うこともあるだろうし、教室を飛び出すこともあるだろうし、もっと根本から新しい形の授業を考えていく段階がステップ3なのかな、と考えています。私自身は、現在ステップ3を考えつつも、ステップ2でもがいているという日々です。

 二川 ステップ2とステップ3の間には、とても深い溝があるような気がしますね。率直に、ステップ1から2はいけるけれども、2から3は長いんだろうと感じます。

 使い続けていくことで、ICTが日常に溶け込んでいくだろうし、そうなると息を吸うようにICTを使えるようになるんだと思います。テクノロジーも個別最適な学びにかじを切っているし、一斉授業のスタイルから個別最適な新しい学びの形になっていく。そうなった先に初めて見える景色が、庄子先生の言うステップ3なのではないでしょうか。

担任を超えて学びの履歴が残ることで、子どもの成長を見取れる

——ウェブアンケートにおいても、各校で授業の中でのICT活用は進んでいるようですが、その他の面ではどうでしょうか。

 古矢 例えば、教材準備の時間はかなり削減されました。また、本校にはとても前向きにICTを勉強している事務員の方がいて、なんでもグーグル化してくれるんです。例えば、石灰の注文などもQRコードを読み取ればグーグルフォームで発注できるような仕組みを整えてくれました。こうしたことによって、私たちもICTの便利さが分かって、校務や授業にも使ってみようと士気が高まっています。

 二川 私は、評価が今後の課題だと捉えています。例えばグーグルクラスルームで提出された課題に対してどのようにフィードバックするのかなど、自分の中でまだ確立されていないので、試行錯誤しているところです。

 ただ、ICTが入ることで、主体性などは評価しやすくなりました。特に、今までいわゆる「吹きこぼれ」と言われてきた子どもたちを救えると感じています。「もっとこうしていいよ」「もっとクリエーティブにやっていいよ」と促しやすく、強みを伸ばしていけるのではないでしょうか。

二川教諭は「今後はもっと評価について深めていきたい」と話す

 庄子 評価におけるメリットは私も大いに感じています。まず、子どもたちの学びを蓄積できるというメリットは大きい。本校の学区ではタブレット学習用ソフト「ミライシード」を使っていますが、例えば「2学期の◯日から◯日の国語」とクリックすれば、児童一人一人の学びの履歴がすぐに出てきます。評価しやすいのはもちろん、細かいところまで良さを見取ることができます。私は、児童に手書きのノートなども写真に撮って、ミライシードの中のオクリンクで送るように指示しています。

 こうしたことで、担任を超えて学びの履歴が残ります。これまでも子どもたちの1学期から3学期の成長は評価できましたが、1年生から6年生までの成長についても評価できるようになります。それによって、子どもたちの自己肯定感も高まるのではないでしょうか。

 もう一つ、これまでテスト以外では、ノートに書いたことや、やったことに関する振り返りの文字を評価してしまいがちでした。そうすると、その子がものすごく良い発想を持っていても、書くエネルギーが弱いと評価しにくいという現状がありました。それが、タブレットが入ったことによって、書くことが苦手な子でも、キーボードを打てば勝手に文字に変換してくれます。目が悪い子には眼鏡があるように、タブレットを自由に使いこなせる段階になれば、書くことに対するハンデがなくなっていくのではないかと思っています。

人と人がつながるために1人1台が使われるようになってほしい

——1人1台になって改めて気付いたことや、これから大事にしていきたいことについて教えてください。

 二川 この2年のうちに、一斉休校やGIGAスクール、コロナなど、いろいろなことを考えさせられました。そうして改めて感じたことは、学校はコミュニケーションを学びにくる場だということです。

 人とつながることが人を豊かにしてくれるし、人と人はつながることで高め合っていくものだと思っています。そういうことに1人1台が使われるようになっていってほしいし、自分もそのように使っていきたいと思っています。

 古矢 私は八丈島という離島にいるからこそ、1人1台のメリットをより大きく感じています。ここでは、保育所から高校3年までほぼ同じメンバーで育ちます。だからこそすごく仲が良いし、学校に集う意味もあるのですが、どうしても新しいコミュニケーションが生まれづらかった。それが、ICTで外の人とつながれるようになったというのは、非常に大きいと感じています。

「小学生からデジタルリテラシーを高めるチャンスがきている」と古矢教諭

 また、SNS上での振る舞いをはじめ、インターネット上でやっていいこと、やっていけないことなどを小学生から学べる最大のチャンスが目の前にきています。いろいろと小さなトラブルは起こるけれども、学校の中で大人がちゃんと見守りながら解決策を一緒に考えていけば、子どもたちはいいテクノロジーの使い手になっていくと思って、日々取り組んでいます。

 庄子 これまで教育が変わるタイミングは幾らでもありましたが、GIGAスクール構想がスタートした今が、一番大きく変化する時だと思っています。戦後から、いわゆる「チョーク&トーク」が変わらず続いてきたけれども、1人1台になったことでその考え方を大きく変えられます。みんなですぐ共同編集できるし、学びの履歴が貯められるなど、一人一人により良い学びを届けるためには、タブレットは必要不可欠です。

 情報化社会のこれからは、子どもたちが「平均的に満遍なくできるようになる」ことよりも、「それぞれの好きなことを突き詰められる」ような教育に転換していかなければなりません。1人1台をきっかけに、教師も子どもも親も「なぜ学ぶのか」を共に考え、より良いものを生み出していくことが大切だと思っています。

【プロフィール】

庄子寛之(しょうじ・ひろゆき) 調布市立多摩川小学校指導教諭。前女子ラクロス19歳以下日本代表監督。学研道徳教科書作成委員。2020年の休校中、教育の未来について考えるオンラインイベントを企画し、2000人程度の参加者を集める。オンライン授業のあり方、教師のためのライフハック、働き方をテーマとしてイベント登壇多数。『残業ゼロの仕事のルール』(明治図書出版)など著書多数。

二川佳祐(ふたかわ・けいすけ) 練馬区立石神井台小学校主任教諭。Google認定教育者レベル2。GEG Nerimaを立ち上げ、区内の教員に学びの機会を提供。教員と企業の越境をテーマとした「先生インターン」の活動のほか、武蔵野市や吉祥寺を中心とした地域、そしてオフラインとオンラインを掛け合わせたコミュニティーのBeYond Laboを主宰。習慣化の伴走をする「マイチャレンジサロン」を運営。

古矢岳史(ふるや・たけし) 八丈町立三根小学校主任教諭。情報教育担当兼プログラミング教育推進担当。東京都小学校理科教育研究会 研究推進委員。viscuitファシリテーター。「テクノロジーとサイエンスでワクワクするような学び」をモットーに、離島より発信中。未来を創る子どもたちを育てる教育者の「鼓動」をつなぐイベント「BEAT」を主宰。

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