学力調査も定期テストもCBTへ 愛媛県教委が新システム

 GIGAスクール構想によって学校現場で端末の1人1台環境が整う中、テストでも端末の活用を進める動きが活発になっている。愛媛県教委では、県内全ての公立学校で利用可能なCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)のプラットフォームである「えひめICT学習支援システム」を開発し、来年1月に県内の小学5年生と中学2年生の約2万人に悉皆(しっかい)で行われる同県学力診断調査を、このシステムで実施する。同県がCBTのプラットフォームに乗り出した狙いを取材した。

手書き入力・採点補助にも対応したCBTシステム

 「国際的な学力調査や全国学力調査でCBT化が進む中、児童生徒がCBTに慣れる必要がある。GIGAスクールで1人1台となった今年をICT元年と捉らえて、県としてもDX戦略に位置付け、全国に先駆けてCBT化に着手することにした」

 「えひめICT学習支援システム」の開発に取り組んでいる県教委義務教育課教育指導グループの加賀山芳明担当係長は、システム導入の経緯をそう説明する。現在は年内の試験運用開始を目指し、急ピッチで制作を進めている。

 システムの開発は、教育委員会向けに学校でのテスト採点システムを提供してきたシンプルエデュケーションが手掛ける。特徴的なのは、タップやキーボード入力以外にも、ペンや指による手書き入力の解答にも対応していることだ。キーボード入力でも、一般的なQWERTYキーボードが苦手でも入力できるように、50音キーボードやABCDE配列キーボードを備えるなど、さまざまな児童生徒の状況に配慮した。

 実際のテストでは、選択式・短答式の問題であれば自動採点を行えるのはもちろんのこと、長文の記述式問題や手書きで解答する問題は、AIによる採点補助・切り出し採点機能がサポートする。

えひめICT学習支援システムによるテスト問題のイメージ(シンプルエデュケーション提供)

 これまで開発してきた採点システムのノウハウを生かし、初めてCBTのシステム開発に乗り出したという同社。平田直紀代表取締役社長は「例えば数学の二次方程式の手書き解答は、紙のテストでは教師が目で見て採点していたので手間も掛かって大変だったが、この採点補助のシステムがあれば労力が10分の1程度になるだろう」と強調。加賀山担当係長は「児童生徒の学習成果や課題を早期に把握でき、個別最適な学びにつなげることができる。採点の集計もすぐにできるので、教員の業務負担も軽減される」と、CBTによって生じるメリットに期待を寄せる。

問題バンクで定期テストの問題共有も

 愛媛県教委では、来年1月に小学5年生の国語、社会、算数、理科と中学2年生の国語、社会、数学、理科、英語の各教科が出題される学力診断調査をこのシステムを使ったCBTで実施するが、学校の定期テストなどでも活用していく予定だ。システムの中に問題バンク機能を搭載し、各校の教員が教科や学年、単元ごとに問題を登録。登録された問題は県教委が確認し、著作権処理が必要な場合は県教委が行うなどして、学校間で問題を共有する仕組みだ。

 問題が蓄積されていけば、児童生徒の実態などに適した問題をテストに使うことができ、学力面だけでなく教員の指導力の向上なども期待できる。さらにCBTであれば、紙のテストでは難しかった画像や音声を使った問題や、単に知識を問うだけではない問題も作って共有することができるようになるなど、さまざまな可能性が広がっている。

 課題は、学校や教員にどれだけ使ってもらえるかだ。

 「システムはできるだけ簡易で使い勝手の良いものを目指しているが、慣れるまでは時間がかかる。マニュアル作成や解説動画の配信、オンライン研修などで、活用を促していきたい」と加賀山係長。

 平田社長は「教師の間ではテストの問題を見せ合う文化がない。システムのメリットを感じてもらい、多くの学校で事例を作れるかどうかが勝負になる」と意気込む。同社ではこのシステムで培われたノウハウを生かし、自治体で実施されている学力調査のCBT化や学習プラットフォームの導入支援を目指していくという。

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