これからの教師の学び(上) 対話から力を引き出す

 中教審の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会が11月15日に取りまとめた「審議まとめ」では、教員免許更新制の発展的解消と合わせて、これからの教師の学びの姿として、▽学び続ける教師▽個別最適・協働的な教師の学び▽適切な目標設定・現状把握、積極的な「対話」▽学びの成果の可視化と組織的共有――などがうたわれている。しかし、具体的な議論はまだ始まったばかりで、イメージが湧かないといった声も聞こえてくる。そこで、さまざまな新しい教員研修の取り組みから、「これからの教師の学びの姿」を探ってみたい。前半では、対話によって教師のやる気やチームワークを高めるプログラムに注目した。

対話の文化をつくり、「チーム学校」へ

 「この『目』のブロックにはどんな意味があるの?」

 「あらためて考えると、『見守っている』ということかも」

 8月下旬、埼玉県戸田市立美女木小学校で行われた研修で、全教員に配られたのはレゴブロック。大教室では、それらを自由に組み立てて自分の教育観をイメージした作品をつくり、それをきっかけに活発な対話が行われていた。レゴブロックを媒介させて、個々の教員の思いを知り、学校としての最上位目的を共有することが目的だ。

 後半は学年ごとにグループを再編し、各学年で大切にしたいことや、それを実現していくための具体的な取り組みについて表現し、全体に向けて発表を行った。教員からは「レゴブロックで手を動かしながら教育について考えることができ、自分の中であいまいだったものが言語化された」などの感想があった。

レゴブロックで教師同士の対話を引き出す研修(今年8月撮影)

 教員研修プログラムなどを提供するcokowill(ココウィル)では、同校を含めた5つの公立小中学校で、こうした教職員間での対話を促す組織開発をファシリテートしている。フィンランドの教育を目の当たりにして、日本でチームとしての学校づくりを支援する事業を始めた代表の寒川英里さんは、チェンジメーカーになれる教師がいても、学校では周囲から浮いてしまい、組織を変えていくまでには至らないケースが多いことに課題を感じてきたという。「教師は、目の前の子どもや教育への『私』としての思いは強い。しかし、公立学校の場合は数年で異動するので、こうした思いを共有し、『私たち』の思いとして捉える仕組みが弱い」と指摘する。

 「学校の話をしよう」では、基本的に講話型の研修は行わず、ファシリテーターとして長期間、学校に伴走する。それぞれの学校では、個々の教職員が大切にしている思いや感じている課題などを可視化していきながら、少しずつ学校全体で対話する文化を作り上げていく。こうした対話が進んでいくと、教職員の関係性も変化していき、次第に課題解決に向けた問いとして「How(どのように)」だけでなく「Why(なぜ)」の発想が出てくるなど、より本質的なものになっていくそうだ。

 「私たちは、変化は一瞬で起こるものではなく、少しずつ変わっていくものと考えている。私たちが関わっている学校も、いつか対話を始めた半年前と今では違う景色にいることが分かるときが来る。変化を焦らないことが大事だ。変化を外から強いられるのはしんどい。私たちは外科手術ではなく、漢方のようにじわじわと体質を変えていくような変化を目指したい。その方が学校に合っている」と寒川さん。今後、ココウィルはNPO法人「学校の話をしよう」に衣替えし、スタッフなどを充実させていくという。

教師が「ワクワク」するための仕事の再定義

 探究的な学びやPBLを行うには、教員が探究的な学びにワクワクしていなければ始まらない。

 そんな発想から、研究職の経験があるスタッフが学校現場のSTEAM教育を支援する事業を行っているリバネスはこの夏、学校教員向けの「ワクワクジョブクラフティング研修サービス」を新たにスタートさせた。同社の教育総合研究センターでは、生徒の主体性や学びに向かう力といった「ワクワク」を可視化する研究に取り組んでおり、この「ワクワク」した感情は周囲の人に伝播していくことが明らかとなった。

 センター長を務める前田里美さんは「ワクワクは可変性があり、みんながワクワクするポテンシャルを持っている。そしてワクワクは伝染する。その2つをコアとして考えている。学校現場で生徒の近くにいる存在は先生なので、先生がワクワクし、自分のワクワクを軸に学校での仕事を再定義して、違うやり方を見つけていくことによって、先生のワクワクが生徒に伝染していく。そして、もっとワクワクしたり、そこから行動したりしていく生徒が増えていく。その仮説の下、教師向けの研修を開発した」と、この研修サービスを始めた理由を説明する。

仕事への「ワクワク」をテーマにしたリバネスの研修体験会(Zoomで取材)

 10月の体験会では、全国から参加した約10人の教員や教育関係者らが自分の今の仕事にさらにワクワクする要素を加え、言語化するというワークショップが行われた。参加者は90分程度のプログラムの中で、これまでの教師生活から、どんなときに仕事でやりがいを感じていたかを振り返り、自分自身を他者に紹介する際に、名刺に刷るキャッチコピーを考えた。

 体験会に参加した沖縄県の離島にある公立小学校に勤務する教員は「自分で子どもたちをコントロールしようとするところがあったが、限界を感じて学習者中心の学びを意識するようになった。離島では子どもの人数が少ないのでそれがやりやすい。学校が地域とこんなに近いのは初めてで、伝統文化と学校をつなげるととても歓迎されるし、GIGAスクールで攻めることもできる。もっと企業とも一緒にできないかと思っている」と話し、「社会と学びをつなぐブリッジマン」というキャッチコピーを自分自身に付けていた。

 研修を担当した教育総合研究センター研究員の中島翔太さんは「今後、PBLなどで企業が学校に入って一緒に学びをつくっていくのが当たり前になれば、学校がより社会とつながって、教師が周りの企業の人をエデュケーターにして巻き込んでいくようになる。そうなったときに、人それぞれにある内発的な動機である『ワクワク』を言語化していけるかが、生徒にも先生にも、そして企業の側も必要になる」と強調する。

(藤井孝良)

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