「学びの個別最適化」の課題は教師の意識改革 経産省WG

 学校の1人1台端末環境などを生かした「学びの個別最適化」に向けた課題などを検討する、経産省産業構造審議会教育イノベーション小委員会の「学びの自律化・個別最適化WG」の会合が12月3日、オンラインで開かれ、小学校で個々の児童に応じた学習計画作りに取り組む福島県大熊町の事例などが報告された。この中で、こうした取り組みを進める上で最大の課題は教師の意識改革だと指摘されると、教育現場の出席者からは「学校現場の負担も重く、財政などを含めたいろいろな改革が必要だ」といった意見も出された。

児童のプレゼンの様子などが紹介された福島県大熊町の報告

 同WGは「未来の教室」実証事業を展開する経産省が、学校での1人1台端末の整備が進む中、次世代に必要な学びや新しい学習環境について検討するために設置し、文科省の中教審のメンバーなども加わって「学びの個別最適化」に向けた課題を検討している。この日は、「学びの個別最適化」に先進的に取り組む福島県大熊町教委の木村政文教育長ら3人が、事例などを報告した。

 木村教育長は、今年4月から同町の小学校で児童一人一人に応じた5教科の時間割を作成している取り組みを紹介し、「教師によるカウンセリングを通して、子供が今の自分の学びの状態を知って自分の学びをデザインしている」と説明。また、児童がICT機器や実験用具などを活用しながらプレゼンする場を設け、複数の教員によって非認知能力を評価する取り組みも進めていると述べた。

 その上で、こうした取り組みを進めるにあたって最も大きな課題は「教師の意識改革」であると強調。「目の前の子供たちの伴走者としての役割が求められる。このため町では独自に、企業の人材育成プログラムの研修を教師に受けてもらっており、教員の仲間意識の醸成にもつながっている」と成果を述べた。

 続いて障害者の教育・就労支援サービスなどを展開する「LITALICO」の野口晃菜さん(LITALICO研究所所長)が、全国の小学校に指導員が訪問して個別計画の策定を支援する取り組みを紹介。スタッフについても個別計画が必要であることや、子供や保護者と相談の上で計画を策定することがポイントだと説明した。

 また、米国などでは通常教育と特別支援教育を分けずに、全児童へのジェネラルサポートをじっくりと検討した上で必要な子供に支援を加える「多層型支援」を行っていると紹介し、「この方式で進めると、特別支援教育が必要と思われる子供が、通常学級での個別最適化で学べるケースがたくさんあると聞いた。理想としては日本でも少人数教室を進めて、多層型支援を取り入れる体制を取れるといいのではないか」と提案した。

 出席した委員からは、こうした先進的な事例を高く評価する声が上がる一方、オブザーバーとして参加したさいたま市教委の細田眞由美教育長は「子供の学習ログを集めて教員が個別支援計画を作成するには大変な負担がかかり、多様な人材が必要となる。教員採用試験で特別支援学級の枠を増やしても人材がいないのが現実で、財政や教員免許の在り方も含めて、いろいろな改革が必要だと思う」と指摘した。

 森田朗座長(東京大学名誉教授)は「個別最適化の追求は、これまでの一斉授業では限界ということから出発した。教員にしかできない仕事に専念してもらうために、教育の質を高めるのがDXであるという視点が重要だ。また学習ログについて、どのデータをどのように活用して教員をサポートするかはまだ試行錯誤の段階だが、ICT技術をいかに教育に反映させて質を高めていくか議論を深めたい」と述べた。

 同WGは今後も会合を重ね、来年夏ごろに省庁の垣根を超えた政策提言をまとめる。

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