授業づくり通して子供のSOS受け止める力を 自殺対策会議

 政府の自殺対策の指針となる「自殺総合対策大綱」の見直しを検討している、厚労省の「自殺総合対策の推進に関する有識者会議」の会合が12月6日、オンラインで開かれ、児童生徒の自殺予防教育に取り組む関西外国語大学の新井肇教授が、子供の自殺の現状や自殺予防の課題について報告した。新井教授は、児童生徒の自殺の急増について「極めて深刻な上昇傾向にある」と指摘し、学校の自殺予防教育について、「学校現場は極めて忙しいが、自殺予防の授業づくりをすることで、子供のSOSを受け止める教員の力の向上につながる」と強調し、年間2時間程度、工夫して自殺予防教育を実施してほしいと呼び掛けた。

児童生徒の自殺予防対策について報告する新井教授

 同会議は、コロナ禍で子供の自殺が急増していることなどを踏まえ、来年にかけて「自殺総合対策大綱」を見直すための議論を進めており、同日の会合では新井教授をはじめ、職場のメンタルヘルスの課題に取り組む専門家など4人からヒアリングを行った。

 新井教授は報告の中で、去年1年間の小中高生の自殺者が、コロナ禍で前年より25%も増えて過去最多の499人に上ったことについて、「極めて深刻な上昇傾向にある」と指摘。特徴として▽衝動性が高いこと▽大人からみると些細(ささい)に思える動機▽死への親近性――などが挙げられると説明した。この中で、俳優の自殺した月に自殺者が増えるなど、報道の影響による連鎖とみられる状況があったことも、データとともに示した。

 その上で自殺予防教育の大きな柱として、①心の危機への気付き②相談する力――の2つを柱にプログラムを展開していると説明。「特に困ったときに相談できる力を子供に身に付けさせることを中心に考えている」と述べるとともに、教職員も学校や地域の中で子供たちが相談したくなるような信頼できる大人になることが重要だと強調した。

 質疑応答では、向笠章子委員(福岡県スクールカウンセラー)が「自殺予防教育の重要性は強く感じているが、小中学校で年間どれくらい必要と考えているか」と質問。これに対し新井教授は「学校は極めて忙しく、非常に難しい問題だが、今行っている授業の中で自殺予防につながるものを洗い出し、スクールカウンセラーと組みながら授業を作ってほしい。授業づくりをすることで、危機に陥った子供のSOSを受け止める教職員の力を向上させる。できれば、危機の気付きと、相談する力について2時間行ってほしい」と答えた。

 また、田中幸子委員(全国自死遺族連絡会代表)が「子供がSOSをたくさん発信していても、子供が守られていないケースも多い。どうしたら組織に浸透すると考えるか」と尋ねたのに対し、新井教授は「学校や教委が当事者意識をどれだけ持てるかが重要だが、先生がリスクの高さに気付きながら周囲に言いづらい環境もあるのではないか。先生たちも弱音を吐いて周囲に助けを求められる心理的安全性を、組織として持つことも非常に大事だと思う」と述べた。

 同会議は次回も自殺対策などに取り組む4団体からヒアリングを行い、今年度中に報告書を取りまとめる。政府はこれを踏まえて来年夏をめどに、新たな大綱を策定する方針。

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