先生のむちゃぶりで夢を決めた 渡辺直美さん、10代と語る

 インスタグラムで950万人以上のフォロワーを抱え、ユニークなファッションや行動で注目を集めるお笑い芸人の渡辺直美さんがこのほど、10代向けEdTechプログラム「Inspire High(インスパイア・ハイ)」に出演し、参加者と「自分らしさ」について語り合った。渡辺さんは自身が中学生の頃を振り返り、芸人になりたいという決意を固めたきっかけが「先生のむちゃぶり」にあったと説明。これまでの歩みや、その中で培ってきた考え方を率直に語り、「失敗を引きずってしまう」「自分を認められない」といった、10代の参加者の悩みに真剣に向き合った。

ネガティブな自分も抱き締めてあげる
10代とのオンラインイベントに登壇した渡辺直美さん

 渡辺さんは1987年、茨城県出身。2007年にデビューし、米国のアーティスト・ビヨンセのダンスパフォーマンスで大ブレークした。バラエティー番組やラジオ、舞台、CMなどで幅広く活躍した後、19年から米ニューヨークとの2拠点生活を開始。今年4月には、活動の拠点をニューヨークに移した。

 幼少期から人を笑わせることが好きだった渡辺さんだが、中学校に入り「恥ずかしい」という気持ちが生まれ、仲の良い友達の間だけで物まねを披露していた。ところが中学2年のある日、授業が早く終わった時に当時の教師が「渡辺さんに物まねしてもらいましょう」と、約10分間、物まねをするよう「むちゃぶり」をしたのだという。

 「私が物まねをやっていること、先生は知っていたんだ」と驚いたという渡辺さん。「10分間の物まねはプロでも大変。それに、クラス全員が求めているわけではない。自習したい人もいるだろうと、ドキドキしながら物まねをした。そこで、仲の良い友達以外もみんな笑ってくれたのを見て初めて、『やっぱり芸人になりたい』と強く思った」と、将来への決意が固まった瞬間を振り返った。

 現在、インスタグラムで多くのフォロワーを抱える渡辺さんが心掛けているのは「SNS中心の人生にはしない」ということだという。「人に良いと思われるために載せることはせず、本当に楽しい、面白い、かわいいと思ったものだけを載せている。SNSのために『盛り』続けると疲れてしまうし、自分の心がヘルシーではなくなってしまう」。

 SNS上での批判に対しては「その状況を楽しんでしまう」タイプで、「自分の意図と違う感じで伝わっているのだなと考えたり、バカにされても『今に見ていろよ、面白いと思わせてやる!』と、ガソリンに変えたりできる」という。ただ、「自分と一緒に写っている人を悪く言うコメントなどは、消すようにしている」と話した。

 同時に「こう見えて私もネガティブで、『失敗したらどうしよう』と考え過ぎて動けなくなることもある」と告白。「そういう時は『ポジティブにならなきゃ』と思うのではなく、『私って、なんてネガティブなのでしょう』と、ネガティブな自分を抱き締めてあげる。ネガティブな自分のおかげで、失敗した場合のイメージトレーニングができるし、失敗したからこそ前に進めることもある」と語った。

情報過多の時代、自分の気持ちを大事に
留学を控えた高校生に「このくらい心の距離を詰められても一度、こんにちは、と受け入れてみて」とアドバイス

 参加した10代からは、さまざまな相談が寄せられた。神奈川県の高校2年生・taketoさんは「授業の中でグループ活動があったが、チームに貢献できずに終わってしまい、自分を責めて苦しい時期があった」と心境を吐露。それに対し渡辺さんは「私も、6年前にすべったことをいまだに思い出すし、全然立ち直れていないと思うことがある」と共感を示した。

 そして「自分はできなかったと思って引きずっているかもしれないけれど、知らないうちに他の人を助けていることもたくさんある。自分の魅力を抱き締めながら、前向きに進んでいけたらよいのでは。私も自分ができないことはできる人にお願いして、その人ができないことを私がやってあげるという感覚になったら、気持ちが楽になった」とアドバイスした。

 また、広島県の高校2年生・Meiさんは「自分で『頑張っている』となかなか思えない」と相談。「頑張っているね」と周りの人に言われても、素直に受け入れられないという悩みを語った。渡辺さんは「一度、立ち止まるきっかけだと思ってもよいかもしれない。私も周りが見えないほど仕事をしてしまうことがあり、立ち止まって一度、自分を見つめ直し、一つ一つ褒めてあげればよかった」と自身の経験を語った。

 さらに、「ずっと走り続けていると『私の目標は、まだまだ先だ』と思ってしまうかもしれないが、それだけでは疲れてしまう。周りから『頑張っているね』と言われたら、一度立ち止まって『私は頑張っているんだ、今日はちょっと休んでもいいかな』と、好きなパンケーキでも食べてみて」と励ました。

 米国への留学を控えた佐賀県の高校2年生・MISUさんは「新しい環境への適応方法」を尋ねた。渡辺さんは渡米直後の時期を振り返り、「驚くこともたくさんあったし、思ってもみないことを聞かれたこともあった。そういう時は『オーケー、ちょっと待って。こんなこともあるのね』といったん受け入れる。そうすると、かなりのスピードで適応していけた」と語った。さらにMISUさんに対し、「10代のうちに留学を決めたのは素晴らしいこと。自分の決断を誇りに思って、思いっきりぶちかましてほしい」と背中を押した。

 渡辺さんは最後に「人と比べないことが一番大事。人のことを認めて、素直に『すてきだな』と思える気持ちがあれば、自分のことも最高だと思える。たくさんの人と知り合い、たくさんの経験をして、自分の思い描く素敵な未来を走ってほしい。情報過多の時代だが、まずは自分の気持ちを大事にして、自信をもって前に進んで」とエールを送った。

 今回のイベントを主催したInspire Highは中学・高校向けに、探究学習やキャリア教育、SDGs教育の一環として、普段触れ合う機会の少ない大人たちと答えのない問いについて考え、同世代で共有し合うICTを活用した双方向型のプログラムを提供している。これまで台湾デジタル大臣のオードリー・タン氏、詩人の谷川俊太郎氏、タレントの田村淳氏などが出演している。

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