都立高校1人1台の活用事例報告 来年度からの整備見据え

 東京都教委はこのほど、1人1台端末を先行して導入した研究校の高校による成果報告会と、シンポジウムを開催した。端末の導入により、授業や探究活動が進めやすくなったという事例のほか、導入にあたって教員や生徒の間で工夫したことなどが報告された。東京都では来年度から、都立高校での1人1台端末の整備を計画しており、それに向けて好事例の周知を図る。

オンラインで配信された成果報告会

 今回、成果を報告したのは西高校、三田高校、三鷹中等教育学校、向丘高校、練馬特別支援学校の5校の都立学校。三田高校の井上裕徳主幹教諭は、同校の生徒が取り組む課題研究で、先行する研究論文を探して読み込んだり、マイクロソフトのOneNoteを用いてロジカルツリーを作ったりする作業や、担当教員からの助言、成果発表会などが進めやすくなったと報告し、「生徒全員が、課題研究に積極的に関わるようになった」と話した。

 向丘高校の石平幸(ゆうき)主任教諭は、同校での1人1台端末の配布にあたり、教員同士が活用法について議論する研修を開き、ベテランや若手を問わず、各教科でどのように使いたいかを話し合いながら活用のイメージを描いていった経緯を説明。また各クラスで2人の生徒が「ICT係」を務め、通信のトラブルなどが発生した場合などにサポートしていることも紹介した。

 また高等部で知的障害のある生徒が端末活用に取り組む、練馬特別支援学校の田中聡主幹教諭は、生徒に分かりやすいよう、使用時のルールを厳選して示したことを報告。「①教員の説明や許可を得て使用する②決められた場所に戻す③写真や名前などの個人情報を撮影したり保存したりしてはならない④画面が割れたり壊れたりした場合はすぐに報告する」の4つのルールに基づき、混乱なく使用していると述べた。

 ただ「視覚教材として生徒の興味関心を高めるツールだが、教員の説明が頭に入らないこともある」という課題もあった。そこで「資料の間に黒一色のスライドを挟み、説明を聞くときは画面から意識をそらす工夫をすることで、有効に活用できると分かった」という。

 こうした学校現場での事例を踏まえ、シンポジウムに登壇した鈴木寛東京大学・慶應義塾大学教授は「少しずつ講義(レクチャー)の比率を意図的に減らして、子供たちにやらせてみることが必要。高校生はなかなか教員には聞きづらいが、友達には聞きやすいこともある。友達同士で取り組むのは双方にとって有効だ」と話し、ICTを用いた学習でも、生徒の自律的な学びを促すことの重要性を強調した。

 「大事なことは、公正に個別最適化された学びをどれだけ徹底して進めるかだ。単に講義を減らすだけでなく、その分、リアルの1対1(の対話)を増やしてほしい。先生たちが忙しいのは十分承知しているが、1対1(の対話)は今の高校生にとって、学びの動機付け、意欲付け、キャリアデザインの上で非常に重要だ」と指摘した。

 都教委は2020度から2年間、都立学校18校を指定校とし、ICT機器や学習支援クラウドサービスを活用した、協働学習や探究学習などの学習方法の研究、デジタル教科書の活用により可能となる学習方法の研究、採点支援システムを活用した採点データの分析による授業改善と効果的な個別学習の研究、ICT機器などの活用による校務の効率化についての研究――に取り組んでいる。

 東京都では来年度の新入生から、保護者が一律3万円を負担する形で高校の1人1台端末を整備する。学校ごとに、3種類の機種から1種類を選ぶ形式。都の担当者は「高校生では興味関心や希望する進路も多様になる。1人1台の端末を活用して、各自が自在に使えるようにしていきたい」と話している。

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