卒業アルバムを自分たちでつくるPBL 新渡戸文化小学校

 卒業アルバムを自分たちで撮影してつくる——。東京都中野区の新渡戸文化小学校(杉本竜之校長、児童355人)では、6年生が卒業アルバムを自分たちでつくるプロジェクト「Memory Journey」を進めている。学校の卒業アルバムは通常、業者に任せる部分が多い。しかし、今回は6年生が自分たちで「何を残したいのか?」を探究し、オリジナルの「マイページ」と個人写真を自分たちで撮影するプロジェクトに取り組んでいる。

友人がカメラマンになることで、撮影そのものが思い出になる

 プロジェクトのミッションは「10年後の私たちを、笑顔にする」。プロジェクトは「おしゃしんず」という「カメラ×デザイン×問い」の専門家チームと共に進められている。また、読売新聞とキヤノンの協力により、6年生61人に1人1台の一眼レフカメラが貸し出され、撮影を進めてきた。

 1人につきA4・1/4ページ分の「マイページ」は、▽私たちが今、記憶に残したいもの、残すべきものとは何か▽予想外の未来の自分に届けたいものとは何か▽思わず撮った写真には、どんな自分だけの価値があるのか——という問いを手掛かりに、まずは撮りたいものをリストアップ。カメラマンから教わった撮影方法なども駆使しながら、友達との集合写真や、校内の思い出のある風景などをそれぞれが撮りためてきた。

 12月8日の授業では、児童が担任教諭や「おしゃしんず」のメンバーに相談しながら、「マイページ」の最終的な写真の枚数や、レイアウトなどを固めていった。

 仲の良い友人たちと手を重ねあった写真をレイアウトした児童は「顔は写っていないけれども、誰の手か分かる。10年後にみんなで見返して、あの時こうだったよね、と話したい」と未来を想像しながら笑顔を見せた。他にも、入学式の時に最初に見た景色や、お世話になった警備員さんの写真、いつも使っていた文房具の写真を入れたりするなど、それぞれの個性や思いが表れたページづくりが進んでいた。

 子どもたちにアドバイスを送ってきた「おしゃしんず」のデザイナー・髙橋響子さんは「レイアウトに迷いがある子には、対話しながらその子が一番何を見せたいのかを引き出すようにしている。子どもたちから学ぶことが多い」と振り返る。6年生の担任の栢之間(かやのま)倫太郎教諭は「学校には卒業アルバムなど、作ってもらうもの、パッケージ化されているものが多い。それを作る側に立つと、見える世界が変わる」と新しい取り組みに手応えを感じていた。

 また、この日は同時に個人写真の撮影も進められており、約20人が同校の施設VIVISTOP内に設営された簡易のスタジオで、プロと同じ機材を使って撮影した。

 卒業アルバムの個人写真は、通常はカメラマンに「笑って」などと言われながら撮り、硬い表情のままという子も少なからずいる。そうしたことから、このプロジェクトでは「誰に撮ってもらいたいか」を自分で選べるシステムにした。

 児童はそれぞれ、自分の笑顔を引き出してくれる人、自然体のまま撮影してくれる人、写真を見返す度に「あの人に撮ってもらったな」と思い出したい人を考え、自分たちで指名。ほとんどの児童は、カメラマンに友達を指名したそうだ。

 実際の撮影では、「笑って」とカメラマン役の児童が言わなくても自然と笑顔になる子や、カメラマン役の児童が指示したポーズを次々と決める子も。普段から関係のある2人ならではの空気感で撮影は進み、シャッターが切られる度に「今の写真、めちゃくちゃいい!」「そんな表情もできるの?」と周囲から歓声が上がっていた。

 これまで撮影を見守ってきた「おしゃしんず」のカメラマン・きょういちさんは「写真はコミュニケーション。心が通じ合っている人同士で撮り合った方が、写真の奥行きが出るのではないかと始めてみたが、予想以上の素晴らしい写真が撮れている」と声を弾ませた。また、プランナー・田貝雅和さんは「個人写真を見る度に、この撮影自体も思い出してくれるのではないか。全国の学校にもこの取り組みを広めていきたい」と展望を語った。

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