地域移行後の部活動の姿 為末大さんらアスリートが議論

 部活動の地域移行を見据え、その受け皿となる地域スポーツクラブの産業化を模索している経産省は12月14日、アスリートらが今後の部活動の姿を語り合うオンラインイベントを開催した。男子400メートルハードルの日本記録保持者で、オリンピアンでもある為末大さんや元女子バレーボール日本代表の大山加奈さんらが、自身の部活動や競技の経験を振り返りつつ、現状の部活動の問題点や全国大会の見直しなどの提言を行った。

 経産省では現在、「地域×スポーツクラブ産業研究会」を発足させ、地域が部活動を担う際に生じる課題などを洗い出すために、全国9カ所でさまざまな形態のフィージビリティ・スタディを展開している。

教員の負担が重過ぎる部活動の現状を指摘する為末さん(YouTubeで取材)

 同省の浅野大介サービス政策課長・教育産業室長は、フィージビリティ・スタディの取り組みで浮かび上がってきた障壁として①部活動は学校教育でもできるが、本質は社会教育活動であるという整理を明確にすること②学校だけでなく民間のスポーツクラブなども大会に参加できるようにすること③企業による学校施設を用いた収益活動を解禁すること④クラブで指導者として活動する教員の兼業・兼職の環境整備⑤部活動を受益者負担とした場合の家計所得格差への対応――を論点として挙げた。

 ディスカッションはこれらを踏まえて行われ、部活動改革について積極的に問題提起を行っている為末さんは、高校の陸上部にいたときのエピソードを紹介しながら、顧問が家族と過ごす時間を犠牲にして指導をしている現状を問題視。「私の人生は部活動で頂いたものからできているが、これでは立ち行かない。先生の負担が大き過ぎる。これを変えていかなければいけない。子どもの問題の全てを先生が解決する風潮がある。本来、子どもは地域でも育てていくのが理想の社会ではないか。先生がスポーツやしつけ、土日や放課後の非行の面倒など、全部を背負っている。学校側に期待している親や社会の意識を変えていくべきだと思う」と指摘した。

 フェンシングの日本代表として2度のオリンピックに出場した経験がある山形県スポーツ協会の池田めぐみさんは、中学校時代に所属していた陸上部では、顧問は新体操が専門だったと振り返った上で「先生の転勤で専門の指導を受けられるかどうかの違いが出るという課題がある。高校でフェンシングを専門にしていた先生の指導を受けられたが、もしその先生が異動していたら、私はオリンピックに出場していなかっただろう。山形では冬になると屋外競技は雪でグラウンドが使えなくなるので、廊下で基礎練習ばかりになる。そんな環境で1人1競技は苦しい。シーズン制で違うスポーツをやったり、文化部も含めて複数の部活動に所属したりすることがあってもいい」と話した。

 小学校から高校まで全国制覇を成し遂げた大山さんは「私自身は日本一しか意味がない、価値がないと思って、体を酷使してきた。その結果、20歳以降はけがでまともにプレーができず、試合に出られないことで自分の存在価値が分からなくなり、心を病んでしまった。勝利や結果でしか自分を評価できないのは苦しい」と、勝利至上主義の弊害を指摘。指導者や保護者が過熱して、子どもたちの気持ちを置き去りにして勝利至上主義に走る傾向もあるとして、全国大会をなくすことを提言した。

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