精神疾患による教員の休職や休暇取得が微減 20代は増加

 公立学校教員の精神疾患による病気休職者および1カ月以上の病気休暇取得者は、2020年度に前年度より190人少ない9452人と微減になり、在職者数に対する割合も1.10%で前年度に比べて0.02ポイント改善したことが12月21日、文科省の「令和2年度公立学校教職員の人事行政状況調査」で明らかになった。ただ、年代別にみると、20代だけは前年度よりも190人多い2140人と増加傾向が続いており、調査を始めてから5年連続で増えていることも分かった。このうち、精神疾患による病気休職者は前年度より298人少ない5180人で、在職者に対する割合も0.56%で前年度から0.03ポイント改善した。

 この調査では、従来、教員の精神疾患による病気休職者を全国規模で集計してきたが、病気休職に至る前段階として有給の病気休暇を取得する教員が多いことから、教員の精神疾患の実態をより正しく把握するために、2016年度から病気休職者に1カ月以上の病気休暇取得者を加えた数値についても、学校種別、性別、職種別、年代別で調べている。

 それによると、20年度に精神疾患による病気休職や1カ月以上の病気休暇を取得した公立学校の教員は9452人で、教員の在職者数に対して1.03%を占めた(以下、カッコ内は在職者に対する割合)。

 学校種別では▽小学校 4691人(1.13%)▽中学校 2292人(1.00%)▽義務教育学校 43人(1.01%)▽高校 1273人(0.71%)▽中等教育学校 10人(0.55%)▽特別支援学校 1143人(1.27%)。性別では男性4007人(0.91%)に対し、女性は5445人(1.13%)だった。職種別で見ると、▽校長 35人(0.11%)▽副校長等 134人(0.36%)▽主幹教諭等 159人(0.65%)▽教諭等 8684人(1.14%)▽養護教諭等 281人(0.74%)▽その他 159人(0.68%)。年代別でみると、▽20代 2140人(1.43%)▽30代 2563人(1.22%)▽40代 2138人(1.12%)▽50代以上 2611人(0.84%)--となっている。

 教員の在職者数に対する割合で見ると、精神疾患による病気休職や1カ月以上の病気休暇を取得した教員は、学校種別では特別支援学校、小学校の順で多く、性別では女性が男性よりも多い。職種別では一般の教諭が人数でも割合でも多く、年代別に見ると、在職者に対する割合では、20代が最も多い。

グラフ1=教育職員における病気休職者および1カ月以上の病気休暇取得者の年代別状況

 さらに、年代別のデータを過去5年間にわたってさかのぼってみると、コロナ禍の長期休校を経験した20年度には、20代だけが増え続け、他の年代では微減になっていることが分かる=グラフ1参照。教員の在職者数に対する割合で見ると、20年度には20代と40代で増え、30代と50代以上で減っている=グラフ2参照

グラフ2=年代別の教員在職者数に対する病気休職者および1カ月以上の病気休暇取得者の割合

 一方、教員の精神疾患による病気休職者は5180人で、在職者に対する割合は0.56%だった。学校種別では▽小学校 2541人(0.61%)▽中学校 1272人(0.55%)▽義務教育学校 22人(0.52%)▽高校 699人(0.39%)▽中等教育学校 6人(0.33%)▽特別支援学校 640人(0.71%)。性別では男性2168人(0.49%)に対し、女性は3012人(0.63%)だった。職種別でみると、▽校長 21人(0.07%)▽副校長等 80人(0.22%)▽主幹教諭等 93人(0.38%)▽教諭等 4757人(0.62%)▽養護教諭等 143人(0.37%)▽その他 86人(0.37%)。年代別でみると、▽20代 839人(0.56%)▽30代 1431人(0.68%)▽40代 1346人(0.70%)▽50代以上 1564人(0.50%)--となっている。

 病気休職者だけのデータを、1カ月以上の病気休暇を取得した教員を含めたデータと比べると、学校種別では特別支援学校、小学校の順で多く、性別では女性、職種別では一般の教諭が多いことは同じだが、年代別では在職者に対する割合で40代がもっとも多く、30代、20代と続いているところが異なっている。

 教育研究家・学校業務改善アドバイザーで、『教師崩壊』(PHP新書)などの著書もある妹尾昌俊氏は「精神疾患による病気休職者の推移を見ると、多少の増減はあっても、この10年あまり5000人前後で横ばいになっている。ずっと高止まりのままだと言ってもいい。状況が改善されていないのだから、今までの政策がうまくいっていないのではないかと疑う方が健全な思考ではないか。反省が必要だと思う」と述べた。

 さらに「このデータだけでは、苦しんでいる教員がいることは分かるが、背景や要因に迫ることはできない。精神疾患と言っても、いろいろな背景があるはず。上司のパワハラ、学級崩壊、保護者の理不尽なクレーム、教員間のいじめやハラスメント、あるいは私的な理由なのかもしれない。それらの複合的なものもあると思う。そうした背景や要因を把握しないと、対策の取りようがないのではないか」と指摘。対策を考える前提として、教員が精神疾患に見舞われる背景や要因の把握が不十分なことを問題視した。

 20代で精神疾患による1カ月以上の病気休暇を取得する教員が増えていることについては「有給で取れる病気休暇は、病気休職の予備軍になる。その意味でも、比率としても、絶対数としても、5年前の倍近い数字になっていることは、とても心配なデータだ。背景や要因は推測するしかないが、教員の人口構成が変わってきたため、都市部を中心に、育成しないといけない若手は増えている一方、育成役の中堅シニアが減っている。若手の相談相手や職場のサポートが不足している可能性はある。また、コロナ禍の影響で、顔を合わせる集合研修ができなくなり、昨年度はオンラインでの研修に対応できない自治体も多かった。職場を離れて同世代の教員と悩みを話し合うような機会が減ったこともあるのではないか」との見方を示した。

 その上で、妹尾氏は「教員不足が懸念される中で、精神疾患だけで毎年1万人ぐらいが病気休暇を取っている。教員採用試験の倍率や教員養成課程の議論も大事だけれども、現職の教員をもっと大事にしないと駄目だと思う。不本意な離職をする少なくすることは、人材マネジメントの基本中の基本。精神疾患で休職せざるを得ない教員をもっと減らすことができないか、いろいろな人が知恵を出していかなければならない」と話した。

 教員の精神疾患による病気休職者の現状について、文科省は「全国の教育委員会からデータを集めるときに背景や要因を聞いていない」(初等中等教育局初等中等教育企画課)として分析やコメントを避ける一方、今後の対応として▽労働安全衛生管理などメンタルヘルス対策などの一層の推進▽勤務時間管理の徹底をはじめとする学校における働き方改革の一層の推進▽パワーハラスメントなどハラスメント防止策の徹底▽過剰要求などに適切に対応するための弁護士などによる法務相談体制の整備促進--などを挙げている。

 文科省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」では毎年、教職員の人事管理を目的とし、都道府県・指定都市の計67教育委員会を対象に、教育職員の精神疾患による病気休職者などの数、懲戒処分または訓告等の状況、女性管理職(校長、副校長および教頭)の割合、ハラスメントの防止措置の実施状況などを調べている。

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