都内特別支援学校の子供たちの作品展 東京藝大で始まる

 東京都の特別支援学校に在籍する児童生徒による作品展「第6回 東京都特別支援学校アートプロジェクト展~未来へ 心ゆさぶる色・形~」(都教委主催)が1月5日、東京藝術大学大学美術館で始まった。展示は16日まで。今回は都内の特別支援学校70校に在籍する児童生徒から748点の応募があり、その中から展示作品51点が選ばれた。一般公開に先立って開かれた報道向けの内覧会では、作者である特別支援学校高等部の生徒が自身の作品を紹介。学校や教育委員会の立場からは、特別支援教育における芸術の意義が語られた。

高等部の美術の時間は貴重

 「私の作品はエイリアンの世界。闇が好きだから、赤と緑を使った。真ん中にあるのはライフゲージ(ゲームでキャラクターの生命力を示すゲージ)」。4日に行われた報道向けの内覧会では、都立王子特別支援学校高等部(知的障害)3年の西田恋蘭(あらん)さんが、自身の作品「私の住処」の説明に立った。

西田さんの作品「私の住処」

 美術の時間に木製パネルや新聞紙、樹脂粘土、アクリル絵の具などを使い、2~3カ月をかけて制作した。西田さんの指導に当たった同校高等部の鳥山千佳主任教諭は「『私の住処』というテーマに沿って、オリジナリティーを追求しているところが素晴らしい。全体的に暗い印象だが、よく見ると一つ一つのキャラクターがとてもかわいくて、それもまた魅力の一つだ」と笑顔を見せた。

 「ほとんどの生徒は卒業後に就労すると、芸術活動とは縁が切れてしまう。だからこそ高等部の美術の時間は貴重だ。自分の生活を美しく彩る色彩感覚や、空間の構成力などを学ぶ最後のチャンスになるため、いろいろな素材や絵の具に触れてほしい」と、鳥山主任教諭は生徒たちへの思いを語る。

 同校の久保井礼校長は、「学校として大々的に芸術活動を掲げているわけではないが、授業で作った児童生徒の作品や教材、素材などを教室の前や廊下などに掲示しており、学校全体が美術館のようになっている。子供は自分の作品を見てもらいたいもの。作品を通じて会話が生まれ、子供や教員の間での交流が増えたことは大きい」と話す。

専門的な知見で美術の授業が変化

 東京都では2011年度から、特別支援学校の児童生徒の自己表現を目指した美術教育を推進。東京藝大の教員や研究室スタッフが指定校を訪れ、美術を担当する教員らに指導や助言を行っている。15年度からは作品展を開いており、会場での開催は今回が6回目。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンラインでの開催となったが、今回は作品の魅力を直接感じ取れるよう、会場開催に踏み切った。

都立王子特別支援学校の取り組みについて語る久保井校長(左)と西田さん

 審査に当たっては作者の学年や障害種を問わず、作品そのものが持つ力が重視され、「人を引き付け、未来につながる力強さや繊細な表現」などが審査の観点となっている。

「特別支援学校には自己表現が難しい子もいるが、作品を作ることで認められ、自分を出せるようになることもある」と、東京都教育庁指導部の島添聡・特別支援教育指導課長は語る。

 また東京藝大の協力を得たことで、美術を担当する教員にも良い影響があったという。島添課長は「これまでは『自由に作ってごらん』という授業が多かったが、専門的な知見を得ることで、教員自身の授業のスキルが格段に上がり、作品の質が向上している」と話す。

 さらに、東京藝大美術学部の青栁路子准教授も「この作品展は(東京藝大の)学生にとってもかなり刺激があるようで、自身の制作の原点を見直したり、制作のヒントを得たりしているようだ」と述べた。

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