【Edubate LIVE!】オンライン授業 日常も認めるべきか

 オンライン授業を日常的に認めるべきか——。教育に関する問題・課題への賛成・反対を聞き、インタラクティブに議論・討論する、教育新聞電子版の人気企画「Edubate(エデュベート)」。そのライブ番組「教育新聞 Edubate LIVE!」が昨年11月、国際カンファレンス「Edvation × Summit 2021」内で配信された。ゲストにウスビ・サコ京都精華大学学長、佐藤昌宏デジタルハリウッド大学大学院教授を迎え、司会は教育新聞編集長の小木曽浩介が務めた。「オンライン授業を対面授業と同じ扱いにし、日常的に認めるべきだと思うか?」をメインテーマに、今後の授業や学校の在り方について議論した。(全3回の最終回)

テーマ:「あなたはオンライン授業を対面授業と同じ扱いにし、日常的に認めるべきだと思いますか」結果はこちら

テーマ:「あなたは、オンライン授業を対面授業と同じ扱いにし、日常的に認めるべきだと思いますか?」


評価とセットで考えていくべき

——GIGAスクール端末が小中学校に行き届き、非常時におけるオンライン授業の環境も整いつつあることから、オンライン授業を対面授業と同等に扱い、出席扱いとしたり、単位認定したりといったことを可能にして、日常的に認めるべきではないかという意見があります。一方で、同等に扱うと、対面授業か、オンライン授業か、児童生徒が選択できるようになりかねないため、学校に登校する原則が崩れることにつながるとして反対する意見もあります。Edubateでは「条件付きで認めるべきだ」という意見が一番多かったのですが、この結果についてどう考えますか。

 佐藤 私自身もこれに関しては推進派ですが、丁寧に認めていくべきです。具体的には評価とセットで考えていくということです。人は分からないものが分かるようになったり、できなかったことができるようになったりするために学んでいます。オンラインであっても、対面であっても、そうしたビフォー・アフターをしっかり見取れていることがセットでなければいけないと思います。

 対面授業においては評価制度がありますが、オンライン授業におけるビフォー・アフターを評価するものが、まだ確立されていません。しかし、デジタルログを活用すれば、そうした評価も可能になると考えています。

 また、これはまだ夢物語かもしれませんが、例えば、オンライン上に補習部屋のようなものをつくって、全国一律で「今日の授業が分からなかった」という子たちを集めて教えたりするような仕組みも、知恵を絞れば可能になるのではないかと思っています。

「何をオンライン授業とすべきか、何を対面授業とすべきかを考えていく必要がある」とサコ氏

 サコ 「条件付きで認めるべきだ」と答えた皆さんにとっての「条件」とは何なのかを、もっと掘り下げて知りたいですね。

 皆さんのイメージは、「オンライン=家」だと思います。でも、家にいるからオンラインというわけではありません。キャンパスの中にいて、オンラインでやっている学生もいるわけで、「オンライン=どこでも学べる」ということです。私はこの課題と共に、教室の意味、キャンパスの意味を問うべきだと思っています。

 また、本学の学習内容の多くは、芸術、デザイン、漫画など、オンライン授業だけでは難しい側面があります。一方で講義系の授業の場合は、オンライン授業の方が有効だと感じました。将来的には、何をオンライン授業とすべきなのか、何を対面授業とすべきなのかを考えていく必要があるのではないでしょうか。

 これからは、「これはオンラインで学びたい」「これは対面で学びたい」と選ぶことができるようになるでしょう。つまり、学びの選択肢が増えたのです。ただ、現状ではオンラインでどう教えるかについて、教員側のスキルが追い付いていません。ですから、そうした教員研修をもっとやっていくべきだと思います。

将来的には標準授業時数の廃止も可能

——読者から「Edtechと学習ログは、標準授業時数の廃止を可能にすることができるのか」「通信制、単位制高校の知恵を普遍化できないか」という質問がきています。

 佐藤 結論から言うと、私はどちらもできると思っています。

 そのためには、学習者の状態に合わせた学びを提供するための、学習ログが必要です。例えば、オンライン授業といっても、ライブ配信かオンデマンドかという違いがあります。これらを一緒くたにするのではなく、「この生徒は自律しているから、この授業はオンデマンドでOK」といったように、学習ログを活用して、一人一人の丁寧なカルテを作っていくのです。

 また、どんな学習ログをとるかということが議論になっています。どんな学習ログを使って、どんな解析をしたら、どんなアウトプットが出るのかというのは、私たち人類の永遠の課題なので、答えはありません。進化を続けていくしかないのですが、なるべく早く最初のフォーマットを決めて、学習ログの活用をスタートできたらと思っています。

佐藤氏は「なるべく早く最初のフォーマットを決め、学習ログの活用をスタートできたら」と語る

 今、「子どもたちを年齢で区切るのは乱暴なのではないか」という議論ができるほど、テクノロジーがそろってきています。標準授業時数に縛られるよりも、学びを習得した子は次のステップにいってもいいし、もっと自分のペースでゆっくり学びたい子はゆっくり学べるようにした方が、一人一人に合った学びの状態を作れるのではないでしょうか。

 また、不登校も非常に増えています。そうした子どもたちの中には、例えばオンラインで、アバターで出席することで発言できるような子もいるでしょう。画面に本人の顔が映っていることよりも、発言している内容を見てあげられるような、そうした多様性も少しずつ認められてくるといいなと思います。

 今後、サコさんがおっしゃるように「この授業はオンラインで」「これは対面で」というようなハイブリッドな仕組みができてくれば、通信制や通学制の境目もなくなってくるでしょう。私は早くそこまでいきたいと思っています。

学習ログのオーナーシップは学習者が持つべき

——先ほど、学習ログの話が出て来ましたが、子どもたちの学習履歴のデータ活用をどの範囲まで認めるべきなのかということは、今後、議論されなければいけないことの一つです。

 佐藤 個人情報なので、慎重に扱わなければいけないというのは当然のことです。誰がその学習ログのオーナーシップを取れるかを考えたときに、学校側がオーナーシップを持つという方向は危険だと思っています。なぜなら、学習者は学校だけで学んでいるわけではありません。家庭、学校、塾、社会、そうしたところをシームレスに渡り歩いて学び、自分自身の成長や学びを構成しています。学校は1つの側面でしかないのです。

 だから、私は学習者がオーナーシップを持つのがいいと思っています。未成年であれば保護者が一緒に管理しながら持つべきでしょう。そして学校は、学習者の許諾を得て学習ログを使うべきだと考えています。

 サコ これは非常に難しい議論ですよね。私も佐藤さんと同意見です。著作権と同じように、使いたいところが許可をもらうようにすればいいと思います。データ化していくことで、自分自身がどういう方向を選ぶかについてもかなり分析しやすくなるし、選択もしやすくなるというメリットも伝えながら、進めていけばいいと考えています。

「Edubate LIVE!」中にもチャット欄に多くの意見が寄せられた

 例えばヨーロッパなどでは、学習データが非常に重要視されています。データを取らないと何を根拠にその子の方向性を決めていくのかが見えづらいからです。さらに、保護者は学校に任せるだけではなく、自分たちでもデータを分析した上で、議論しています。

 日本でもこうした学習ログが活用されるようになれば、保護者が分かっている子どものことを学校と共有し、みんなで一緒になって子どもの成長を見守っていくためのデータとして使っていけば良いのではないでしょうか。

 佐藤 学びのデータ化というのは、もうすでにアナログの中ではやっていますよね。それをデジタル化すると、皆さん極端に怖がるわけです。それはなぜなんだろうと不思議に思います。

 ハッキングされたり、漏えいしたりという心配があるのかもしれませんが、アナログよりもデジタルの方が安全性は高いのです。そうした意識を変えるためにも、デジタルリテラシーもセットで進める必要があると思います。


【プロフィール】

ウスビ・サコ 京都精華大学学長。マリ共和国生まれ。高校卒業と同時に国の奨学金を得て中国に留学。北京語言大学、南京東南大学を経て1991年に来日。99年、京都大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了。博士(工学)。専門は空間人類学。「京都の町家再生」「コミュニティ再生」など社会と建築の関係性を様々な角度から調査研究している。バンバラ語、英語、フランス語、中国語、関西弁を操るマルチリンガル。京都精華大学人文学部教員、学部長を経て2018年4月から現職。編著に『現代アフリカ文化の今』(青幻舎)、著書に『「これからの世界」を生きる君に伝えたいこと』(大和書房)、『アフリカ出身 サコ学長、日本を語る』(朝日新聞出版)、『アフリカ人学長、京都修行中』(文藝春秋)など。

佐藤昌宏(さとう・まさひろ) デジタルハリウッド大学教授・学長補佐。教育イノベーション協議会代表理事。92年、日本電信電話株式会社(NTT)入社。02年にデジタルハリウッド株式会社執行役員、21年4月に同大学学長補佐に就任。日本初の株式会社立大学院の設置メンバーの1人として学校設立を経験。04年、E-ラーニングシステム開発事業を行う㈱グローナビを立ち上げ代表取締役に就任。09年、同大学院事務局長や産学官連携センター長を経て、17年には(一社)教育イノベーション協議会を設立、代表理事に就任。現在は専任教授として学生指導を行う。また、内閣官房教育再生実行会議技術革新ワーキンググループ委員、経産省未来の教室とEdTech研究会座長代理など、教育改革に関する国の委員や数多くの起業家のアドバイザーなどを務める。著書に『EdTechが変える教育の未来』(インプレス)。

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