【Z世代の教育論】 大人になるのを待たなくてもいい

 大学は待ってくれるけれども、気候変動は待ってくれない——。2020年11月から大学を休学し、全国の学校で気候変動をテーマとした講演活動を行っているのが、20歳の環境活動家・露木志奈さんだ。SDGs(持続可能な開発目標)が2015年に国連で採択され、特にここ数年でSDGsをテーマとしたPBLや探究型学習に取り組む学校が増えている。社会課題を自分事として捉え、その解決のために自ら行動を起こしている露木さんの姿から、私たちが学ぶべきことを探っていく。

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世界で一番エコな学校で学んだ3年間

 大学を休学して、この1年で全国の小学校から大学まで約140校、約2万2000人に気候変動についての想いを届けてきました。

 私は、高校の3年間を「世界で一番エコな学校」と呼ばれる、インドネシア・バリ島にある「グリーンスクール」で学びました。もともと英語を学びたくて留学を考えていましたが、母に「英語だけを学ぶのであれば、日本でもできる。それ以外のことも学べるのであれば、海外の学校でも応援するよ」と言われ、偶然見つけたのがグリーンスクールでした。全て竹から作られている校舎を見たとき、「絶対にここで学びたい」と思い、進学しました。

全国の学校で講演を続けている露木さん(本人提供)

 ユニークなのは、校舎だけではありません。例えば、教科書がなく、授業の多くはプロジェクト型の学びでした。その中では環境問題について学ぶ授業もたくさんありました。世界各国から集まった多様な生徒と協働する中で、「自分の当たり前は当たり前じゃない」「人の数だけ答えはある」ということを学んでいきました。

 私が環境問題に興味を持つようになったのは、グリーンスクールでの経験がきっかけです。でも、野外活動が中心で生きる力を学んだ幼稚園時代や、自ら志願して行った小学校4〜5年の山村留学での自給自足生活など、幼少期のさまざまな体験の積み重ねがあったからこそ、グリーンスクールで環境問題や社会課題について学んだときにピンときたのだと思います。

体験こそが行動を変えるきっかけになる

 「みんな誰かが解決してくれるだろうと思っているから」

 これは、ある学校で講演後に生徒さんから「なぜ気候変動の問題は解決しないのだと思いますか?」と質問された時の、私の回答です。

 もちろん、これが答えかどうかなんて分かりません。いろいろな考え方があると思います。誰も解いたことがない問題だから答え合わせもできません。そもそも、世の中の多くのことにおいて、答えは1つではありませんよね。だから、自分が納得するような答えを見つけるかどうかなのだと思います。

 日本では今、多くの学校でSDGsをテーマとした学びが展開されていると聞きます。こうした社会課題を自分事にして学んでいくためには、体験することが必要だと思います。

 例えば、気候変動を止めるためには、政府や企業の大きなシステムの変化が必要ですが、それと同時に、何を選ぶのか、どう使うのかといった、私たち一人一人の意識や行動の変化が欠かせません。教科書などで「こういう問題があります」と学ぶよりも、体験を通してその問題を肌で感じた方が自分事にできるし、学びも深くなります。私自身、体験こそが人の行動を変えるきっかけになることが多いと実感しています。

大人になるまで待たなくてもいい

 私が気候変動について「講演」という手段を取っているのには、理由があります。まず、私は人前で話すことが好きですし、得意です。だから、それを生かして、気候変動について知らない人や、知っているけれども何をしたらいいのか分からない人たちに、実際に今、地球でどんなことが起きているのか、取れる行動はどんなことなのかを伝えられると思ったからです。

 また、学校で講演するのは「今しかできないこと」だと思っています。気候変動の影響を一番受けるのは、これからの未来を生きる若い世代です。年齢が近い、または同世代の私が気候変動について発信することで、受け入れてもらいやすくなり、行動につながる可能性が高まると考えています。

 実際に、講演をした日に持続可能な電力会社に変更してくれたり、家畜の出す二酸化炭素排出量を知ったことからビーガン食を試してくれたり、環境問題をテーマにしたコミュニティを作ろうと声を上げてくれたりする生徒さんたちもいます。このように行動してくれる人たちがいたことは、本当にうれしかったです。

 さらには、講演活動をすることで、私の生き方も見てもらえると思っています。気候変動についてはすでに解決策が明確です。だから私が今やるべきことは、大学で学ぶことよりも行動することだと考え、休学しました。この決断ができたのは、これまでの自分自身の経験や周りの人たちから「行動するのは、大人になるまで待たなくてもいい」ということを学んできていたからです。

 講演に来る学校の子どもたちや同世代のみんなにも、やりたいことをやって、それを形にしていく喜びや楽しさを感じてほしいと心から願っています。学生の間にしかできないこともたくさんあるので、固定観念にとらわれず、どんどんチャレンジするべきです。そして、先生はそんな子どもたちの背中を押してあげたり、可能性をもっと広げてあげたりしてほしいです。

「なんで?」と思ったことを深掘りする

 私がこのように思うのは、今の子どもたちは、やりたいことをやれている子が少ないと感じるからです。その原因の一つは、学校でも家庭でも、自分が何をやりたいかを探せるような時間や、体験するような時間、没頭するような時間がないからではないでしょうか。

 生まれた時から自分のやりたいことが見つかっている人はいません。いろいろな体験をしながら「自分のやりたいことはこれだ!」と見つけていくものです。私はこれまでにそういう時間や体験があったからこそ、今があると思っています。

 もし、子どもたちが興味のあることや、やりたいことが見つからないならば、自分が「なんで?」と疑問に思ったことや、モヤモヤしていることを深掘りしてみてほしいと思います。例えば、私が化粧品の研究をしようと思ったのも、最初は一つの「なんで?」からでした。

 グリーンスクールに入る前、2歳下の妹と化粧品を買いに行きました。妹は昔から肌が弱かったので、「ナチュラル」と記載されている化粧品ならば大丈夫だろうと購入しました。ところが、それでも妹の肌は荒れてしまったのです。「ナチュラルと表示されているのに、なんで?」と、私はそこからいろいろなことを調べていきました。

いろいろな体験をしながら、やりたいことを見つけてほしいと語る(本人提供)

 すると、例えば、日本では「ナチュラル」「無添加」などの言葉が、必ずしも安全を示すわけではないこと、開発時に動物実験がされていること、そしてプラスチックの問題など、さまざまなことを学びました。グリーンスクールでは自分で授業をつくることができたので、私は化粧品について研究し、在学中にオーガニックコスメブランドを立ち上げ、校内で事業展開しました。それが今の活動にもつながっています。

 また、人それぞれ「なんで?」と思うことは違います。だからこそ、学校の学びにはたくさんの選択肢があるといいなと思います。「みんなでこの探究をやりましょう」ではなく、自分で課題も、学ぶ方法も、学ぶペースも選べたらいい。子どもたちが選べるものが多ければ多いほど、「自分たちは尊重されているんだ」と感じられると思います。

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【プロフィール】
露木志奈(つゆき・しいな)
2001年、横浜市生まれ、中華街育ち。15歳まで日本の公立学校に通い、高校3年間をインドネシアの「Green School Bali」で過ごし、19年6月に卒業。18年にCOP 24(国連気候変動枠組条約締約国会議)in Poland、19年にCOP 25 in Spainに参加。肌が弱かった妹のために口紅を開発し、化粧品ブランド「Shiina Cosmetics」を立ち上げる。19年9月、慶應義塾大学環境情報学部に入学。現在は気候変動についての講演会を全国の小・中・高校生に行うため、休学中。 講演の依頼はホームページから受け付けている。

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