本格実施迎える子どもにやさしいまち 成果と課題を探る

 省庁横断で子ども関連施策を推進するこども家庭庁の構想が具体化していく中、市町村でも、子どもを真ん中にしたまちづくりの重要性が再認識されている。日本ユニセフ協会は昨年12月17日、2018年から2年間の検証作業を踏まえ、モデルとなった5市町と「日本型子どもにやさしいまち事業(CFCI)」の本格実施に向けた覚書を結んだ。CFCIの検証作業で見えてきた成果や、他の自治体に広げていくための課題を取材した。

PDCAサイクルで子どもに関する施策を改善

 CFCIは「Child Friendly Cities Initiative」の略で、子どもの権利条約を自治体レベルで具体化するためにユニセフが提唱している活動。現在は58以上の国と地域で展開されている。日本では、日本ユニセフ協会が有識者や自治体関係者によるCFCI委員会を設置し、CFCI事業の構成要素に基づいたチェックリストを開発。これを踏まえてモデル自治体で自己評価を行い、さまざまな施策についてPDCAサイクルで改善していくことに取り組んだ。

CFCI事業の覚書締結について説明する町田市の石阪市長

 チェックリストは10個の項目で構成され、▽子どもの参画▽子どもにやさしい法的枠組み▽子どもの人権を保障する施策▽子どもの人権部門または調整機構▽子どもへの影響評価▽子どもに関する予算▽子ども報告書の定期的発行▽子どもの人権の広報▽子どものための独立したアドボカシー――の9つが共通項目として位置付けられ、残りの1項目は自治体が独自に設定する。

 覚書では、検証作業に参加した北海道ニセコ町、同安平(あびら)町、宮城県富谷市、東京都町田市、奈良市が、それぞれユニセフ日本型CFCI実践自治体として、CFCI を実践するための行動計画を策定し、チェックリストを活用して、3年間で成果をあげることが求められている。

 その一つである町田市では、昨年12月21日に石阪丈一市長が記者会見を行い、「先進国の場合には子どもの権利や、子どもが社会に参画する権利を行使できているかが大きな要素になると、ユニセフは考えている。私たちの、中高生の意見を取り入れて政策作りに反映させる取り組みが評価されている」と強調。高校生が参加した市民参加型事業評価や、子どもセンターと呼ばれる児童館で開催された市長と子どもの意見交換会など、子どもがまちづくりに主体的に参加し、子どもの意見を聞く機会を増やしていった実績を紹介した。

町の職員全員がキーパーソン

 「遊び」を軸にした教育に取り組んできた安平町では、こうした町の方針とCFCIの理念の親和性が高いとして検証に参加した。もともと、町内の認定こども園では非認知能力の向上に向けて遊びに力を入れており、町立早来小学校では、6年生の児童がこの認定こども園にある遊具を研究し、子どもの発達に必要な遊具を自ら作るプロジェクト型の幼小連携の実践などを展開していた。

新しい義務教育学校の建設現場で説明を受ける子ども(安平町教委提供)

 しかし、2018年に北海道胆振東部地震が発生したことで、同町の子どもたちが置かれている環境は大きく変化することになった。

 そこで、子どもたちの心のケアを目的に、地域の団体などと連携して社会教育の機会を充実。さらに、子どもたちが地域で遊び、学び、挑戦しながら好奇心を育む取り組みに力を入れる「あびら教育プラン」を策定した。

 また、地震で中学校の校舎が甚大な被害に遭ったことを機に、早来地区にある3つの小学校と中学校を1つの義務教育学校に統合することを決定。新しい学校づくりでは、一般住民が参加する会議に子どもが混じったり、子どもたちの意見を聞く機会を設け、学校名をどれにするかで子どもによる投票を行ったりしてきた。今後は制服や校則でも、子どもたちの意見を聞いていくという。

 同町のCFCIチェックリストの10番目の独自項目では「遊びを通じた震災からの復旧・復興と、復興のシンボルとなる学校再建への着実な歩み」を掲げ、これらの施策を推進していく際のアセスメントに活用している。

 CFCIを担当する同町教委学校教育グループの三上泰明主査は「CFCIについて年に1回、町の職員全体に研修を行い、教育委員会だけでなく町の職員全員がキーパーソンだと伝えている。すると、通行量の多い町道の改善に子どもの安全を守る視点が入るなど、さまざまな部署で子どもの視点が入るようになった。CFCIで子どもを共通言語にした文化ができている」と、行政の変化に手応えを感じている。

 「CCFIはあくまで理念なので、行政全体にどう浸透・認知させるかや、チェックリストの10番目の項目でどうオリジナリティーを出せるかが鍵だ。PDCAサイクルを回しながら、持続可能な事業にしていかなければいけない」と三上主査。まだ人口増加などの目立った成果にはつながっていないものの、認定こども園に子どもを入れたいという理由で町内に移住する人が出てくるなど、徐々に変化の兆しが生まれているという。

子どもを軸にした持続可能なまちづくりを

 都市計画が専門で、CFCI委員会の委員長を務めている木下勇・大妻女子大学教授は、「チェックリストは、子どもにやさしいまちを実現するための重要なツールだ。チェックリストの評価では、できるだけ数値を示したり、文章にしていったりすることで、エビデンスに基づいて次年度の見直しにつなげるようになっている」と説明。

 「これからの持続可能な地域づくりにおいて、『子どもにやさしいまち』の視点は欠かせない。部署の違いによる縦割りを取り払い、全体で子どもの最善の利益を考え、その市町村で独自の施策をしていく必要がある」と指摘。「子どもとまちづくりを両輪で考えて、新しいことにチャレンジする自治体が生き残る。部署横断で取り組むモデルがどんどん出てきてほしい」と、CFCIを実践する国内の自治体が増えることに期待を寄せる。

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