答えのない問いを考え続ける 「哲学対話」で道徳の授業

 なぜ勉強をするのだろうか――。埼玉県戸田市立美女木小学校(山田一文校長、児童683人)で1月17日、児童がそれぞれ意見を交わしながら、答えが容易に出ない問いをさらに深めていく「哲学対話」を取り入れた道徳の授業が行われた。授業後の校内研修では、教員も実際に「哲学対話」を体験。他者と議論しながら考え続ける教育活動の価値を再認識した。

グループの議論の展開を発表する児童

 授業が行われた5年3組では、昨年秋ごろから「哲学対話」を取り入れており、この日はクラスを2つのグループに分けて、各グループの児童が車座になって「なぜ勉強するのか?」をテーマに議論した。グループにはぬいぐるみが1つ配られ、ぬいぐるみを持っている児童が発言しているときは、周りの児童はその児童の意見をじっくり聞き、発言し終えると、ぬいぐるみは挙手している別の児童に渡されるというルールで行われ、議論で出たポイントは、ホワイトボードにまとめて可視化していった。

 ある児童が「生きるために必要なもの以外は勉強なんてやらなくてもいいのではないか」と問題提起すると、すかさず別の児童が「それなら、必要ではない勉強とは何なのか」と質問。最初の児童が「例えば、仕事でパソコンを使うならローマ字は必要かもしれないけど、パソコンを使わない仕事なら必要ないのではないか」と返すと、また別の児童が「職業によって必要なものは違うということか」と、次々に問いを重ねていった。

 最後に、出された意見を図示したホワイトボードを使いながら、各グループの代表の児童がどんな議論になったかを説明し、各自のノートに考えたことをまとめて授業は終了した。

「哲学対話」を体験する美女木小の教員

 「哲学対話を始めたことで、自分の意見を言う子どもが増えてきた。最初は意見をもっと深めようとして教師の私が入り過ぎたために、かえって議論の自由度が低くなってしまった気がした。そこで今は、このやり方で子どもたちになるべく任せるようにしている」と授業を行った後藤宏清(ひろき)教諭は話す。

 授業後は同小の教員が参加した校内研修も行われ、「てつがく創造活動」と呼ばれる「哲学対話」とPBLを融合させた実践を展開しているお茶の水女子大学附属小学校の神谷潤教諭が講師となり、授業と同じ「なぜ勉強するのか?」をテーマに、教員も「哲学対話」に挑戦した。

 神谷教諭は「安心・安全な環境で議論ができるように、まずは他者の意見に耳を傾ける習慣をつくることから始まる」とアドバイス。「他者の意見が自分と違うということを前提に話を聞き、多角的に物事を考え続けることは、まさに道徳の狙いと重なる」と解説した。

 その上で「『子どもの話は面白い』と教師が思えるかどうか。子どもと一緒に正解のない問いを考え続けることで、子どもと同じ視点に立つことができる。それが実感できるのが『哲学対話』だ」と、同小教員に「哲学対話」の実践を働き掛けた。

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