オミクロン株急拡大 学校現場が警戒する「教員の感染」

 新型コロナウイルスのオミクロン株による感染が急拡大している。政府は1月19日、関東、中部、九州など1都12県にまん延防止等重点措置を適用。文科省は従来の感染対策を徹底するとともに、臨時休校になった場合には、オンラインによる学びを継続するよう求めた。学校現場での感染も急増し、臨時休校や学級・学年閉鎖などが続出している。児童生徒だけでなく、教員が感染したり濃厚接触者となったりするケースも出ており、現場からは「教員が不在になるケースが増え、学校運営に支障を来すのではないか」と警戒する声が上がっている。

感染急拡大を受け、文科省が相次ぐ通知

 「昨年末にかけて感染が一度落ち着き、子供たちの感染対策も、気持ちも少し緩んでいた。今回のオミクロン株の感染拡大は、今までとスピードが違い、急激すぎて現場でも困っている。緩んでいた子供たちの感染対策も気持ちも、もう一度徹底させるのがちょっと大変だ」。ある茨城県の公立小校長は、新型コロナウイルスのあまりの急拡大に困惑を隠さない。

 新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受け、政府は広島県、山口県、沖縄県の3県に続き1月19日、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県、新潟県、岐阜県、愛知県、三重県、香川県、長崎県、熊本県、宮崎県の1都12県への、まん延防止等重点措置の適用を正式決定した。期間は1月21日から2月13日まで。

 文科省は今年1月に入り、感染対策や臨時休校時の対応などを全国の教委などに改めて周知。7日には、これまで以上に基本的な感染対策を徹底することを要請した。また12日には、臨時休校などでやむを得ず登校できない児童生徒が増加することを想定し、オンライン学習を活用して、切れ目なく学習が継続できるような体制を整えるよう求めた。

 さらに入試のシーズンと重なったこともあり、11日には高校入試での受検機会のさらなる確保を要請。新型コロナウイルスの急拡大を想定し、追検査の機会を設けたり、調査書などの書類のみによる選考を実施したりするなど、柔軟な対応を徹底するよう、各都道府県教委などに通知した。

臨時休校の中学校「感染力の強さを実感」

 学校現場では実際に、臨時休校や学級・学校閉鎖となるケースが相次いでおり、懸念が広がっている。ある公立中では今週、臨時休校の措置を取った。同校の校長は「今週初めに学年をまたぎ、生徒に感染者が出たことを踏まえ、休校に踏み切った。特に、今月末から始まる高校入試を控える生徒のことを思うと、なるべく早い対応が必要だった。保護者からは特に苦情はなく、逆に『よく決断してくれた』とねぎらいの声をいただいた。生徒や保護者も不安な中、学校生活を送っていたのだろう」と話す。

 同校では、休校を決定した時点で4人、翌日にはさらに4人と陽性者が出た。「これまでと比べ生徒の感染が増えており、感染力の強さを実感している。当校の場合は家庭内感染で、無症状か軽症のケースが目立つ。陽性だった生徒の一人は、『鼻づまりが気になる』ということで耳鼻科に行き、念のためPCR検査を受けたところ陽性反応が出た」と同校長。

 「学校ではこれまで、発熱や胸の苦しさなど症状があれば登校を控えるように注意喚起し、校内で感染が広がらないように努めてきた。今回は無症状や軽症が多く、知らずのうちにウイルスを学校に持ち込むケースもあり、これまでの方針では対処しきれず非常に困惑している」と眉をひそめる。

 オミクロン株についての情報が不足していることや、現時点で文科省から「従来通りの感染対策を徹底する」以上の対応策が示されていないことが、不安を加速させている。同校長は「結局は、今までの消毒や換気、健康観察などを徹底して、同居家族に体調不良者がいるときは登校を控えてほしいと念押しするにとどまっている」と話す。

 また生徒の学習保障については、昨年から活用してきたGIGAスクール端末を駆使し、双方向のオンライン授業に取り組んでいるという。特に高校入試を控えた3年生には、きめ細やかな対応が求められる。「入試までに教科書の内容を終わらせなければならないので、教員たちも必死に取り組んでいる。さらに学習以外にも、入試日に必要な持ち物や注意事項の共有など、事前準備についての指導も必要。彼らにとっては、初めての入試で不安も多いはず。感染状況を見ながら、入試を控える生徒だけはその前に一度登校してもらい、サポートする時間を取りたいと考えている」と明かした。

「人を増やして、欠勤に対応できるようにしてほしい」

 臨時休校になっていない学校でも、警戒は広がっている。取材でまず聞かれたのは、オンライン授業になお残る不安の声だ。

 着実に準備を進めている学校からは「すでにパソコンの持ち帰りをしており、使用率も高め。教委がWi-Fiのない家庭に貸し出してくれれば、オンライン授業は可能だと思う」(大阪府・公立小教諭)、「第5波の時にオンライン授業のマニュアルを作成した。焦らずに進めようとしている」(大阪府・公立中教諭)と、落ち着いた対応が見られた。

 一方で「秋ごろにオンライン授業を試してみた。各家庭とつないで参加できたので、やろうと思えば可能だと思う。ただオンライン授業をしたことがない教員も多く、ハードルは高そう」(東京都・公立小教諭)と不安をにじませる教員もいた。また「私はいつ(オンライン授業への対応が)来ても大丈夫。ただ正直、昨年9月の第5波以来、どうにも『GIGA熱』が下がっていたので、苦労する先生もいると思う」(別の東京都・公立小教諭)と、教員により対応に差が出ることを懸念する声もあった。

 それに加えて多くの教員が不安視するのが、教員の感染や濃厚接触が増えた場合の学校運営だ。家族が濃厚接触者となり、出勤できないという教員は「私のような教員がこれから増えた時に、どのように学校を運営していくかが課題だ」と語る。前出の大阪府の公立中教諭は、教員に感染が広がった場合、「なかなか厳しい状況。その時が来たら本当にどうするのか、打つ手が見つかっていない」と懸念する。

 前出の東京都の公立小教諭は「以前、教員が感染したり、濃厚接触者となったりした時は、専科教員や管理職で対応した。教員もGIGAスクール端末を持ち帰っているので、家や出張先から連絡を取り合っている。ただもう少し人を増やして、教員の欠勤が出ても対応できる体制にしてほしい。人を増やせないなら、気軽にオンラインに切り替えられる自治体のガイドラインがほしい」と話す。

 教員が自宅待機を余儀なくされた場合の対応について、文科省初中局の学校デジタル化プロジェクトチームの担当者は「教員の端末整備も進んでいるため、教員が自宅から教育活動を展開することも環境としては可能」としながらも、「臨時休校になっておらず、子供たちが登校していてリアルな学びができる状態であれば、通常の体調不良の時と同じく、副担任や教務主任など、他の先生が代わりに対応するのが基本となる」と話す。

 一方で「(臨時休校となり)子供たちが学校に来ていない状態であれば、教員も無理に出勤する必要はないということも考えられる。地域によって、教委や学校の判断が異なるため、地域の実情に応じて、学びを止めない体制を検討していただきたい」と要望する。

教員が自宅からライブ配信

 「ここ数日で、教員の子供の学校で陽性者が出るケースが増えてきている。教員の欠勤が出るのも時間の問題だろう」。そう語るのは、ある義務教育学校の校長だ。「特に中3は、これから高校入試を控えている。これ以上感染が拡大してくると、試験当日に濃厚接触者になる可能性も高まる」と警戒する。

 そのため同校では、対面とオンラインのハイブリッド型の授業に取り組み始めている。通常は各学級で行う授業を、一部は学年全体で行うオンライン授業に置き換え、授業を確実に進めるとともに、教員のコマ数を減らし、さらに学校に来られない児童生徒もオンラインで参加できるようにする。

 同校長は「教員の欠勤が出た場合も、この方法である程度カバーできると考えており、これでできるところまで対応していくつもりだ。コロナ禍で、チームで働くことを進めてきたことが、こうした緊急時に生きている」と話す。

 前出の茨城県の公立小校長の勤務校でも今週、学級閉鎖の措置が取られた。「突然だったので、端末は学校に置いてある。どうにか保護者に取りに来てもらうことができないか、検討している。それができたら、学級閉鎖中には自宅待機となっている担任が、自宅から授業をライブ配信できないか計画している」という。

 また「教員が多数、欠勤になった場合は何とか回していくしかないが、タブレットをうまく活用していきたい。授業参観や懇談会もオンラインに切り替えようと考えている」と、現場で工夫を重ねていく意向を示した。

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