教員不足が起こるメカニズム 持続可能な教員配置の課題

 先生の数が足りない――。教育新聞が昨年11月に実施した小学校教員へのウェブアンケートでは、来年度から始まる高学年での教科担任制の実施や3年生にまで拡大する35人学級に関連して、学校現場の「教員不足」を課題に挙げる声が多数寄せられた。文科省もこの問題を認識し、初めて教員不足についての実態調査を実施。近日中に結果が公表される予定だ。教員不足はなぜ起きてしまうのか。ウェブアンケートから浮かび上がってきた課題を基に、教科担任制や35人学級を持続可能な制度にしていくための対策や、教員不足が起こるメカニズムについて深掘りする。

学校現場から寄せられる懐疑的な声

 「ただでさえ教員不足なのに、どこから専科担任を配置するのか」(北海道/公立/教諭)

 「人的資源が潤沢であれば問題ないが、往々にしてそうならない場合が予想される。その場合、教科担任をする教員が負担過重になる可能性がある」(東北/公立/教諭)

 「教員数の不足。教員の質を担保できない」(東京都/公立/教諭)

 「学級担任の交換授業を専科と呼んで良いものかどうか。専科教員を配置するには人員確保が必須」(東海/公立/教諭)

 「教職員未配置などの問題があり、実施ができない学校がある。教職員の定数配置を確実に行うこと」(近畿/公立/教諭)

 これらの意見は、小学校高学年での教科担任制の導入に向けた課題について、自由回答で寄せられたものの一部だ。35人学級を実施する場合の今後の課題に関する自由記述でも、同様に学級数の増加で必要になる教員の確保を挙げる声は多かった。それだけ、学校現場では教員不足が深刻であり、教科担任制や35人学級に必要な教員が配置されるのか、懐疑的な見方が強いことを物語っている。

 実際、文科省は来年度予算の概算要求で、小学校高学年での教科担任制の実施に向けて2000人の教員定数の改善を求めていたが、財務省との閣僚折衝で新規の加配定数は950人とすることで合意した。概算要求の時点では4年間で8800人の定数改善となる見込みだったが、それも3800人と大幅に縮小した形だ。

加配ではなく基礎定数の改善が必要

 全国各地の教員配置の問題などを調べている民間団体の「ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会」事務局長で、元小学校教員の山﨑洋介さんは、教科担任制の導入に必要な教員の配置も、加配定数としてではなく、基礎定数の改善に手を付けるべきだと呼び掛ける。

 「今の単年度措置による加配定数によって教員を増やすやり方は、いつでも外されてしまうはしごのようなものだ。結果的に、いつか予算が付かなくなるリスクが常に伴うので、地方自治体では正規の教員を採用しようとはならず、非正規の教員で賄おうとしてしまう。やはり、『乗ずる数(※)』の見直しによる基礎定数の改善で教員を増やすのが正道ではないか」と話す。

 また、基礎定数の改善と合わせて、国が教職員定数改善計画を策定する必要があるとも強調する。「養成・採用・研修のどこをさぼっても教員の質は落ちる。国が10年、20年単位の長期的な計画を立てなければ、大学での養成も、教育委員会での計画的な採用もできない。その上で、教員が安心して育っていくような職場環境にしないといけない」と、現状の教員育成の在り方に危機感を募らせる。

教員不足が発生する構造

 そもそも、なぜ学校現場では本来配置されるべき教員が配置されない状態が生じてしまうのか。

 慶應義塾大学の佐久間亜紀教授の研究室は昨年、ある県の公立小中学校の教員未配置の実態を分析した。その結果、この県では2021年5月1日時点で、本来配置されるべき正規の教員が、小中学校で合わせて1971人配置されておらず、基本的に1年任期の臨時的任用教員(臨任)や非常勤講師を充ててもなお、28人分の教員の未配置が起きていたことを明らかにした。

 「少子化が進んでいることもあり、正規の教員をここで雇うと将来的に減らせないという理由が一番大きい。これに加えて、産休・育休が増えていることや、特別支援の必要な子どもに対応するために、特別支援学級の数が多くなっていることなどもある。裏を返すと、この県の正規の教員は臨任や非常勤講師ではできない仕事を、約2000人分カバーしているとも言える」と佐久間教授はこの問題の原因を考察する。

 佐久間教授は、この1971人の教員未配置がどのように穴埋めされているかを4段階に整理した。

 まず、この県が定める公立小中学校の教員の配当定数よりも、教員が足りていない最初の状態を「第一次未配置」とする。ここで生じていた1971人(小学校1185人、中学校786人)の正規教員の不足について、この県では臨任を1821人(小学校1089人、中学校732人)配置。教員不足の約9割をカバーしていた。

 しかし、それでも150人(小学校96人、中学校52人)の教員が足りない。そこでこの「第二次未配置」の段階では、非常勤講師を122人(小学校80人、中学校42人)確保して補った。「教員採用試験の合格者数が増えて、主に不合格者で構成される臨任の名簿登載者が少なくなっていることもあり、臨任をかき集めても圧倒的に足りない。この県ではそんな状態がここ2、3年前から起こっている」と佐久間教授。この「第三次未配置」では、まだ不足する28人分は各学校で何とかやりくりすることで、カバーしていた。他県では校内でカバーできず授業ができなくなる「第四次未配置」も起きたことが報道されたが、この県では21年度に授業実施が不能になった事例は発生しなかったという。

教員未配置の過程(佐久間教授の解説を踏まえ作成)

 「一般的には、学級担任の先生を教頭が兼任したり、非常勤講師が見つからなくてその教科の授業が実施できなくなったりした段階で教員不足は表面化するが、それは氷山の一角に過ぎない。本来正規で配置されるはずの教員が不足しているこの状況は、もっと深刻だ」と指摘する。

年度当初の教員不足は始まりに過ぎない

 さらに佐久間教授は、この1971人という教員未配置は「学校現場に最も教員が配置されている4月の段階の状況だ」と強調する。実際に、19年度のこの県の教員未配置の推移を、5月1日時点、9月1日時点、翌年の1月8日時点で追い掛けていくと、5月1日時点の「第二次未配置(臨任の未配置)」の教員数は83人、「第三次未配置(非常勤講師の未配置)」の教員数は43人だったのが、2学期が始まる9月1日時点では「第二次未配置」が142人、「第三次未配置」が89人にそれぞれ増加。3学期を迎えた1月8日時点では、「第三次未配置」こそ61人に減少したものの、「第二次未配置」は218人と、5月1日時点と比べると2.5倍以上に増えている。

19年度における教員未配置の推移

 この背景について佐久間教授は「年度の途中で産休育休に入る教員が抜けていく上に、臨任を頼みたくても、名簿登載者も5月1日の段階ですでに枯渇している。1月8日の時点で『第三次未配置』が減ったのは、現場から悲鳴が上がり、県教委が途中から1人分の欠員を複数の非常勤講師で対応することを認めたからだ。それでも、157人の非常勤講師で28人分の穴を埋めるのがやっとだった」と説明する。

 こうした教員不足の問題を踏まえ、文科省は初めて、教員採用を行っている教育委員会を対象にした全国的な実態調査を実施。今年度中には結果が公表される予定だ。佐久間教授は「文科省の調査は年度当初の4月と5月の段階を基準に集計している。しかし、4月1日や5月1日の状態は出発点に過ぎない。そこからどれだけ教員が足りなくなるかを注意深く見ていく必要がある」と話す。

※義務標準法で教職員標準定数を算定する際に用いられる、学級規模ごとの学級数に「乗ずる数」として定められている係数の数値。

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