教育データ利活用 ユースケース分けて示す必要性を確認

 教育データの利活用の基本的な考え方を整理している文科省の有識者会議は2月21日、第7回会合をオンラインで開き、デジタル庁などが1月に示した「教育データ利活用ロードマップ」などの最近の動向を踏まえて、教育データを利活用する目的について再整理を行った。ロードマップが公表された際に、国民からさまざまな懸念の声が上がったことを念頭に、座長の堀田龍也・東北大学大学院情報科学研究科教授は、システムを活用して目的を達成するまでのやりとりを定義した「ユースケース」について、学校で日常的に活用する場合と、個人情報を取り除いてビッグデータとして分析をする場合を明確に分ける必要があると強調した。

 有識者会議では昨年3月に中間まとめを公表し、教育データを利活用した場合の具体的なイメージや教育データの利活用に関する5つの原則を示したが、GIGAスクール構想の進展による学校のICT環境の変化などを踏まえ、これらをさらに精査していく必要があるとして、この日の会合でこれまでの議論を振り返りつつ、最新の動向について関連省庁などから報告を受けた。

 特にデジタル庁が関連省庁と連携して1月に公表した「教育データ利活用ロードマップ」を巡っては、公表後に「政府は個人の教育データを一元管理しようしているのではないか」といった声や、個人の教育データが行政や民間事業者に利活用される場合の個人情報の保護などに対する懸念が広がったことから、急きょ同庁でQ&Aを作成した経緯が説明された。

 また、実際に教育データの利活用を進めている自治体として、中村めぐみ・茨城県つくば市教育委員会指導主事が、同市のこれまでの取り組みを発表。従来は教員の勘や経験に頼っていた生活指導・授業支援、キャリア・進路指導において、適切な支援をするためにデータで可視化する必要性があるものの、さまざまな教育データをまとめたダッシュボードの現状として、アプリによってデータ形式やデータの格納場所が異なり、データの書き出しに困難を抱えていることが課題として挙げられた。

 これらの報告を踏まえ、橋田浩一・東京大学大学院情報理工学系研究科教授は、教育データの利活用に対する懸念について、「データを分析してどういうことをやるために、誰がデータコントローラーになって、誰がどういう分析をするのか。具体的なユースケースが示されると納得してもらえるのではないか。そのためには、効果の分かりやすいユースケースがよい。データを集めて研究して、それを将来使っていく道筋を描いた上で、誰もが納得するようなユースケースをデータの管理方法と一緒に示していくのが重要ではないか」と提案。

 白水始(しろうず・はじめ)・国立教育政策研究所初等中等教育研究部総括研究官は、ロードマップのQ&Aについて、「学習者に適した教材が分かるという例の出し方は、どうしても個人を単位にした学びに見える。ふるい分けではないと言いながら、やっぱり個人を単位としたデータの利用なのではないかという考えを呼ぶような、ピットフォール(落とし穴)があると思う。これまで、教室で子どもが学び合うプロセスが分からなかった。どうやって教室の中で子どもと教師が学んでいくのかを見るために、学びを記録して振り返るというのが教育データ利活用の出発点で、少しでも教室での教育の質向上になるということではないか」と、あくまで教室での学びのプロセスをデータで分析し、質の向上につなげることへの理解を求めていくべきだと指摘した。

 堀田教授は「教室で日頃から行われている授業や学び、学習支援、指導、子どもたちの人間関係の中で行われる生徒指導について、先生たちは今まで子どもをよく見ながらしっかり指導してきた。これをもっとデータで科学的に、そして先生を楽に、子どもたちからすれば適切に対応していくために、データの利活用をどうしていくか。それが個別最適な学びや協働的な学びの具体的な支援や指導にどうつながるかという観点が求められる。これは学習指導要領が求める姿でもあるので、これを先にしっかり見せていくのが重要だと思っている」と強調。

 一方で「ビッグデータになってから、いろいろなことが分かることもある。こちらは個人情報が全て抜かれた形でのデータ分析だと思う。その話と教室の中でのデータ活用の話がつなげられて誤解されてしまうと、自分のよくない成績がずっと先まで参照されるのではないか、というような話になる。だから、ユースケースがそもそも日常的に起こっていることと、ビッグデータとしてどのようなことが明らかになるかということを、きちんと切り分けながら示していくのが重要だ」との認識を示した。

 さらに、つくば市の取り組みを受けて座長代理の藤村裕一・鳴門教育大学大学院遠隔教育プログラム推進室長は、ダッシュボードで子どもの学習情報などのデータを教員にフィードバックすることは進んできていると評価しつつ、「教員側がどんな指導をしてうまくいったのか、うまくいかなかったのかといったデータがなく、ダッシュボードでどんなにデータを示されても良い指導ができない教員が結構いるということが見えてきた。授業力を向上するための授業力分析のデータが取れていないのが、現状の大きな問題だ。教員側のデータを取って、子どものデータと掛け合わせて、どうレコメンドするか。教員側のデータの標準化も必要だ」と話した。

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