「教職員が集中できる環境づくりに全力」 文科相が所信表明

 末松信介文科相は2月25日、衆議院文部科学委員会で、教育政策の方針についての所信を明らかにした。グローバル化や少子化の進展、コロナ感染など、学校教育を取り巻く環境が大きく変化している中で、「学校の持つ福祉的機能や教師の存在意義、対面で実体験を通して学ぶことの価値が再認識されつつある」として、「令和の日本型学校教育」の具体化や教職員が安心して本務に集中できる環境づくりに全力で取り組んでいくことを強調。「同一年齢・同一内容の学習を前提とした教育の在り方に過度にとらわれず、『個別最適な学び』と『協働的な学び』を一体的に充実させることが不可欠」と指摘した。

衆議院文部科学委員会で所信を表明する末松文科相

 末松文科相はまず、GIGAスクール構想による1人1台端末環境を前提として、教育D X を着実に進め、「リアル」と「デジタル」の最適な組み合わせによる価値創造的な学びを具体化することを表明。

 不登校をはじめ、さまざまな課題を抱えている子供たちについては、「誰一人取り残さず、可能性を最大限に引き出す学校教育。その理念を実現するため、子供たちへの教育機会の保障にこれまで以上に取り組む」と明言した。障害のある児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒、貧困や不登校、虐待などの困難を抱える児童生徒、特異な才能のある児童生徒、へき地の児童生徒についても「特例校の設置促進やオンライン指導・取り出し指導を促進する」と前向きな姿勢を見せた。

 また教師の資質能力の向上が「喫緊の課題」と指摘。「現職研修のさらなる充実と免許更新制の発展的解消を実現する法案を提出するとともに、学校 D X 推進本部を設置し、デジタル技術の活用も含め、研修の高度化の方策を検討する」とした。公立小学校の学級35人制や小学校高学年の教科担任制にも触れた上、「給特法等の法制的な枠組みを含めた教師の処遇の在り方や、多様な専門人材・支援スタッフを含めた教職員の配置の在り方、勤務形態の柔軟化を検討する」方針を説明。

 さらに、社会が一体となって教育活動を支えていくことが必要として「全ての学校でのコミュニティ・スクールの導入に向けた取り組みを加速させていく」と話し、地域住民や地元企業と連携した学習支援や、起業家との触れ合い、異年齢集団での地域活動やボランティア、職業体験など豊かな体験機会を学校内外で抜本的に拡充することを強調した。

末松信介文科相が衆議院文部科学委員会で表明した所信(抜粋。テーマ別タイトルは教育新聞が追加)

【総論】
 新型コロナウイルス感染症は発生から2年以上を経ていますが、いまだ収束に至っておりません。困難な状況下で活動の継続に尽力されている全ての関係者に改めて敬意を表します。文科省が担う分野の歩みを決して止めてはいけないという強い決意の下、引き続き、新型コロナ対策を迅速かつ柔軟に実施してまいります。

【令和の日本型学校教育】
 明治5年の「学制」発布から、今年で150年となります。グローバル化や少子化の進展など、学校教育を取り巻く環境は大きく変化しています。また、コロナ下で臨時休業を余儀なくされる学校も出る中で、学校の持つ福祉的機能や教師の存在意義、対面で実体験を通して学ぶことの価値が再認識されつつあります。

 このような中で、全ての子供たちの可能性を最大限に引き出す「令和の日本型学校教育」の具体化、その直接の担い手である教職員が安心して本務に集中できる環境づくりに全力で取り組んでいきます。

 令和の日本型学校教育の実現には、同一年齢・同一内容の学習を前提とした教育の在り方に過度にとらわれず、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させることが不可欠です。

【教育のデジタル化】
 社会の急激なデジタル化は多くの果実を生み出していますが、実体験からの学びが大事という声もいただいております。GIGAスクール構想による1人1台端末環境を前提として、個人情報を保護しつつ教育DXを着実に進め、「リアル」と「デジタル」の最適な組み合わせによる価値創造的な学びを具体化していきます。その際、デジタル教科書については、紙の教科書との関係整理も含め、課題を検証しながら本格的な導入に向けた検討を進めます。

【子供たちへの教育機会の保障】
 不登校をはじめ、様々な課題を抱えている子供たちを誰一人取り残さず、可能性を最大限に引き出す学校教育。その理念を実現するため、支援が必ずしも十分ではなかった子供たちへの教育機会の保障にこれまで以上に力を入れて取り組みます。

 障害のある児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒、貧困や不登校、虐待等の困難を抱える児童生徒、特異な才能のある児童生徒、へき地の児童生徒等については、特例校の設置促進やオンライン指導・取り出し指導を促進するなど、支援の充実を図ります。

【夜間中学】
 夜間中学については、各都道府県・指定都市で1校以上という目標達成に向け、設置を促進してまいります。

【いじめ問題】
 いじめ問題については、痛ましい事案が続き、学校や教育委員会の対応が不十分と指摘される事例も見られます。課題を早急に整理し、必要な施策を講じてまいります。

【こども家庭庁】
 「こどもまんなか社会」実現の司令塔として、こども家庭庁の創設には大きな意義があります。その円滑な設置と連携体制の構築に向け、積極的に協力してまいります。

【新学習指導要領】
 高校段階では、来年度より、新学習指導要領がスタートします。新科目「公共」や「情報Ⅰ」の趣旨の徹底や指導体制の充実を図り、着実な実施に努めます。

【理数系教育】
 義務教育修了段階では、比較的高い理数リテラシーを持つ子供が約4割いるにもかかわらず、大学学部段階では理工系が約2割となっていることを踏まえ、理数系教育を一層充実します。また、課題の発見・解決やそれを価値の創造に結び付けていく資質・能力を育成するため、STEAM教育等の教科等横断的な学び を推進します。

【教師の資質向上】
 教師の資質能力の向上も喫緊の課題です。現職研修の更なる充実と免許更新制の発展的解消を実現する法案を提出するとともに、私の下に学校 D X 推進本部を設置し、デジタル技術の活用も含め、研修の高度化の方策を検討します。児童生徒に対する教師の性暴力は、決してあってはなりません。教育職員性暴力等防止法を踏まえ、取り組みの抜本的充実を図ります。

 昨年三月、義務標準法を改正し、公立小学校の学級編制の標準を三十五人に引き下げました。令和三年度から五年間かけて、計画的に定数改善を図るとともに、小学校高学年の教科担任制を四年程度かけて段階的に進めます。また、来年度には勤務実態調査を実施し、給特法等の法制的な枠組を含めた教師の処遇の在り方や、多様な専門人材・支援スタッフを含めた教職員の配置の在り方、勤務形態の柔軟化を検討します。特別免許状の積極的な活用等を促進し、多様な専門性を持つ社会人が教職に就きやすい環境整備も進めてまいります。

【コミュニティ・スクール】
 子供たちに豊かな学びを保障するためには、社会が一体となって教育活動を支えていくことが必要です。まず、全ての学校でのコミュニティ・スクールの導入に向けた取組を加速させてまいります。その中で、地域住民や地元企業と連携した学習支援や、起業家との触れ合い、異年齢集団での地域活動やボランティア、職業体験など豊かな体験機会を学校内外で抜本的に拡充します。経済界とも直接対話し、企業やNPOを学校の活動に本格的に巻き込むための大きな流れを作っていきます。

【高等教育】
 ソサエティ5.0に向けた人材育成やイノベーション創出の基盤として、大学等への期待は高まるばかりです。「教育」「研究」「ガバナンス」の一体的改革を推進し、教育研究基盤の強化を図ってまいります。特に、わが国の公教育を支える私立学校が社会の信頼を得て一層発展していくため、学校法人の沿革や多様性にも配慮しつつ、社会の要請に応え得る、実効性ある改革が必要です。

 わが国の将来を担う若者が未来を切り拓くために必要な資質・能力の育成を目指して、高大接続改革を引き続き進めます。本年の大学入学共通テストで発生した試験の公平性・公正性を損なう事案などを踏まえ、専門家の協力も得ながら実効性ある対策を検討してまいります。

 高等専門学校は、産業界や諸外国から高い評価を受けてきました。制度創設六十周年を迎え、更なる機能の高度化、海外展開と国際化、地域の人材ニーズを踏まえた取組の促進に努めます。

【教育の負担軽減】
 経済事情に左右されず、誰もが質の高い教育を受けられるようにすることは大変重要です。幼児期から高等教育まで切れ目ない形で、教育の無償化や負担軽減を着実に実施するとともに、コロナ下で学びの機会が奪われることがないよう、必要な支援措置を講じ、その十分な周知に努めてまいります。

【終わりに】
 子供は国の宝、国の礎です。文科省が担当する行政分野は、「人」を教え育み、「人」の英知や創造力を最大限引き出すことにより、国民の人生を幸福で豊かなものにし、我が国の成長の源泉ともなる、極めて重要な行政分野です。私としては、出来る限り現場に足を運び、その声にしっかりと耳を傾け、文部科学行政が直面する様々な課題に対して果敢に取り組んでまいります。

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