「平均点主義を脱し、評価軸を変える」 3府省WGが最終案

 文科省など3府省で作る「総合科学技術・イノベーション会議の教育・人材育成ワーキンググループ(WG)」(座長・藤井輝夫東京大学総長)は3月3日、最終回となる第7回会合を開き、これからの学習環境の整備に関する政策パッケージの最終案を議論した。そこでは子供たちが多様化する中で「紙ベースの一斉授業は限界」だとして、ICTを活用しつつ自分で自分の学びを調整しながら試行錯誤したり、多様な子供たちが協働で学んだりする機会を確保するという学校の役割を明記。平均点主義を脱し、「みなと同じことができる」ことのみを評価するといった評価軸を、社会全体で変えていく必要性を強調した。

対面・オンラインを併用して行われた第7回会合(オンラインで取材)

 最終案では「①子供の特性を重視した学びの『時間』と『空間』の多様化」「②探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムの確立」「③文理分断からの脱却・理数系の学びに関するジェンダーギャップの解消」の3つの政策を柱とし、それぞれの施策の実現に向けたイメージとロードマップを示した。

 1つ目の柱である「子供の特性を重視した学びの『時間』と『空間』の多様化」では、学級の中に発達障害や特異な才能など、さまざまな特性のある子供がいることや、同学年による同年齢の集団の中で同調圧力に苦しむ子供がいること、一斉授業スタイルでは一定の学力層に焦点を当てざるを得ないことから、「子供たちが多様化する中で、教師一人による紙ベースの一斉授業スタイルは限界に来ている」と指摘した。

 こうした状況を踏まえWGは「そろえる」教育から「伸ばす」教育へ転換し、子供一人一人の多様な幸せを実現することが重要だとした。同WGでは当初、従来の「教師による一斉授業」と、目指すべき「子供主体の学び」などを二項対立の形で示していたが、最終案では双方のハイブリッド化、グラデーション化を図るイメージに修正された=図表

WGが示した新たな学びのイメージ(出所:総合科学技術・イノベーション会議 教育・人材育成WG 第7回会議資料)

 多様な子供たちが自分のペースで学びを調整したり、学校外のリソースにつながったりする際には、ICTの活用が有効だとしつつも、みなと同じことができることだけを評価したり、大人が測りやすい力を評価したりする構造や価値観を変えなければ、ICTを導入しても、自分で自分の学びを調整する力の育成にはつながらないと指摘した。

 その上で「個別最適な学びの本質とは、自分で自分の学びを調整しながら、試行錯誤を繰り返すことであり、さらに多様な子供たちが協働で学ぶ機会が確保されることが学校教育の役割」と明記し、平均点主義を脱して評価軸を変えていくためには、企業・大学・保護者など社会全体の理解が不可欠だとした。

 2つ目の政策の柱である「探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムの確立」については、小学校からの「なぜ?」を引き出す好奇心に基づいた学び、高校段階での本格的な探究・STEAMの学びが実現できるよう、学校だけでなく、社会全体で学校や子供たちの学びを支える体制が必要だとし、小学校の理数の専科指導の充実、免許制度改革による専門人材の活用、特異な才能のある子供への支援などの施策を挙げた。

 さらに3つ目の政策の柱である「文理分断からの脱却・理数系の学びに関するジェンダーギャップの解消」については、「女子は理系に向いていない」といったジェンダーバイアスの排除、専門性の高い教員による理数指導、高校段階の早期の文理分断からの脱却、大学入試での探究的な学びの成果の評価、多面的・総合的な評価の実施などの施策を盛り込んだ。

 中教審から同WGに参加している秋田喜代美委員(学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授)は「公教育は、子供たちの可能性を伸ばす、引き出すことが基本。特性を踏まえることは重要だが、現状を受け入れるだけでなく、その子供の可能性に期待し、これからの社会を作っていくという観点をぜひ加えてほしい」と要望した。

 また今村久美委員(認定NPO法人カタリバ代表理事)は、同WGで10代から寄せられた意見を、議論の俎上(そじょう)に載せたプロセスを評価。「大人が決めた学びのもと、心を殺して座席に座っているのが学校の学びだと思っている子供たちがいるが、本当は自分も、その状況を変えていくために意見表明する権利を持っていて、『偉い人』に見えるような大人たちも、その意見を聞く価値があると思っているのだ、というメッセージを発信できたのではないか」と述べた。

 WGは今回の議論も踏まえて年度内に最終まとめ・政策パッケージを策定し、その後、政府の「総合科学技術・イノベーション会議」などでの議論を経て、ロードマップに基づき施策を推進するとしている。現時点でのロードマップ案は内閣府のウェブサイトで確認できる。

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