「未然防止を日常から意識」 いじめ対策で議論まとめ案

 いじめの重大事態対応について議論している、文科省の「2021年度いじめ防止対策協議会」(座長:新井肇・関西外国語大学外国語学部教授)は3月9日、第5回会合を開き、議論のまとめ案について話し合った。重大事態調査の課題として挙がっていた「保護者との対立」「調査委員の不足」といった課題への対応策に加え、いじめの未然防止に向けた取り組みなどが盛り込まれた。同協議会は来年度以降も、最終的な審議の取りまとめに向け、議論を続ける。

オンラインで行われた会合を進行する新井座長(Zoomで取材)

 議論のまとめ案では①学校・教育委員会のいじめ防止対策推進法などへの理解の徹底②学校・保護者・地域でのいじめの対応にかかわる共通認識の促進③関係機関と連携した人材の確保のための体制整備④その他、調査中における児童生徒への指導・支援に関する留意点――といった4つの観点から、課題と対応策の案が示された。

 まず指摘されたのは、学校・教職員のいじめに対する理解不足やいじめ防止対策推進法に対する認識不足のため、いじめに早急かつ適切に対応できず、対応の遅れにつながるなどの課題。適切な初期対応だけでなく、未然防止への取り組みを日常から意識できるよう、文科省が教育委員会に、教育委員会が学校に周知・徹底する機会を設けることが示された。

 また、重大事態調査についての保護者への説明が不足し、学校・教育委員会と保護者の間で十分な信頼関係が構築できず、対立構造に陥るという課題が挙げられた。これに対しては、学校いじめ防止基本方針を定期的に児童生徒、保護者に周知することや、保護者・地域の閲覧を念頭に置いたガイドラインの改訂などを通して、いじめの対応に関する共通認識を深めていく必要があるとした。

 さらに、重大事態調査の調査委員となる人材が不足していたり、調整が困難であったりすることで、調査が長期化し、児童生徒や保護者に不信感を抱かせることになると指摘。人材の公平性・中立性を担保することや、地域で確保できない場合は広域な職能団体から推薦できる体制を作ることが必要だとした。対応策として、調査委員を担う人材確保を促す取り組みや、人材プールの整備の検討のほか、調査委員を育成するための研修などが挙げられた。

 そのほか、保護者対応に注力するあまり、被害児童生徒への支援や、加害児童生徒への指導がおろそかになり、児童生徒にとって事態の悪化や長期化につながるケースがあるとして、調査と並行して、児童生徒への指導支援などにいっそう留意する必要があるとした。その上で、教育委員会が適切に重大事態調査を実施できるようにするためのガイドラインの改訂、調査委員会内での役割分担の例示の周知などが対応策として挙げられた。

 この案に対し、村山裕委員(日本弁護士連合会)は「教員の非常に忙しいスケジュールの中、子供たちの問題について意見交換ができるような時間を取れるよう、配慮を求める必要はないか」と指摘。

 池辺直孝委員(神奈川県立湘南高等学校長、全国高等学校長協会生徒指導研究委員会委員)は「(未然防止のための)目配りや声掛けなどのノウハウを持っている教員はたくさんいる。法律の理解を、教員の感覚と結び付けていけるような研修をしていただきたい」と話した。

 同協議会では来年度以降もさらなる議論を続ける予定で、新井座長は「いじめの重大事態調査や未然防止など、これまでの議論で浮かび上がってきた課題に対して、必要と思われる具体的な対応策を、本協議会の提言として示していきたい。最終的には子供たち一人一人が安心して学べるような学校環境、さらには社会を作っていくために今、文科省や学校、教育委員会が何をすればよいのか、というところに結び付けていきたい」と述べた。

あなたへのお薦め

 
特集