困窮世帯へのオンライン学習支援 機器配布だけでは逆効果

 家庭でのオンライン学習支援には、機器の整備だけではなく、コミュニケーション面での支援が極めて重要になる――。NPO法人カタリバが3月8日に報告した、困窮世帯へのオンライン学習・生活支援の取り組み「キッカケプログラム」の成果からは、そうした現実が浮かび上がってきた。パソコンの配布に加え、面談などの伴走支援があるかないかで、子供たちの自己肯定感や授業理解が大きく変わることや、機器の配布だけでは「逆効果」になる恐れも指摘された。

 「キッカケプログラム」では、パソコンと通信機器を無償で配布するとともに、「メンター」と呼ばれるスタッフが面談を通じて伴走支援を行う。コロナ禍で一斉休校が行われた2020年5月、15人にパソコンと通信機器を配布したことから始まり、同8月には200人を超える規模に拡大。22年4月時点には400人を超える見込みだ。

 同プログラムの対象者は、小学4年生~高校生の子供がいる、就学援助受給世帯やシングルマザー世帯など経済的な困難を抱える家庭。さまざまなオンライン教材を用意するとともに、子供には週1回、保護者には月1回、メンターとのオンライン面談の機会を設けており、対話を通した伴走支援を行う体制になっている。

 取り組みを開始した当初は、全員に伴走支援をする体制が整っておらず、対象者の中には機器の配布のみを受けた子供と、それに加えて伴走支援を受けた子供がいた。双方にアンケートを行い、支援前後の自己肯定感の変化を確認したところ、伴走支援を受けた子供では「私は自分に満足している」などの設問に「はい」「どちらかといえばはい」と答えた割合が、支援後に4ポイント改善していた=図表

【図表】伴走支援の有無による自己肯定感の変化(カタリバ提供)

 一方で伴走支援を受けず、機器の配布だけされた子供では、支援後の自己肯定感が22ポイント悪化していた。カタリバで同プログラムを担当する中島典子さんは「伴走支援がない場合、『パソコンをうまく操作できなかった』という、失敗経験につながってしまうこともあった」と分析する。

 また「あなたは学校の授業がよく分かりますか」という授業理解度に関する設問でも同様に、伴走支援の有無によって支援の成果に差がみられ、「機器の配布だけでなく、伴走支援を届けていくことの重要性を認識した」と中島さんは話す。

 支援を受けた子供たちからは「毎週1回、メンターさんに話を聞いていただくことで、親や先生・友達にも相談しがたいモヤモヤが晴れて、気分がすっきりする。メンターさんの留学経験をうかがって、私も行ってみたくなった」(高2女子)、「将来のことや、受験に向けての不安などが相談できて助かっている」(中3女子)といった声が寄せられており、子供にとってメンターが信頼できる大人の一人となっていること、将来の夢や目標に影響を与えていることがうかがえる。

 これまでの活動を振り返り、カタリバの加賀大資さんは「別の支援団体を通してこのプログラムを知り、応募してくれる家庭が多いが、世の中にはどの支援団体にもつながっていない家庭がある。そこにどうリーチしていくかが、これからの課題だ」と語る。

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