先端技術用いたICT教育研究の6事例を報告 文科省

 技術革新が進む教育現場でいかに先端技術を活用するか――。小中学校の授業に最新の情報通信技術を導入し実証研究を進める全国6つの地域・大学が3月6日、文科省主催のオンライン報告会でそれぞれの取り組みを発表した。GIGAスクール構想でオンライン学習システムが全国の学校に広まる中、先端技術が児童生徒の学びや教員の指導に与える影響やICT教育の在り方などを巡って、熱心な議論が交わされた。

 この事業は同省が2019年度から3年がかりで取り組んでいる「学びにおける先端技術の効果的な活用に関する実証事業」。児童生徒に1人1台の端末が普及する中で、「先端技術をどう使いこなせば、教員が授業の質を高め、子どもの力を引き出せるかを考える実証実験」(初等中等教育企画課)としてスタートした。

 報告したのは、埼玉県や岐阜県、京都市、大阪府箕面市、広島県安芸太田町の教育委員会と京都教育大学の6グループ。それぞれの報告内容について、大学教授や教育研究者からなる事業推進委員たちが論評しパネルディスカッションを行った。

 箕面市の事例では、ベテラン教員が大量に退職し現在、教職歴5年以下の若手が教員全体の6割を占めている厳しい実情を背景に、「ベテラン教員の指導技術を効果的に若手教員に継承させる目的」でICT化に取り組むようになったと説明。

 対象の小学校では教室の天井などに5台のカメラとマイクを設置し、センサーを通じて児童の声や動作を記録。その動画や音声データをAIが分析して、授業中の児童や教員の発言回数、発言時間などをグラフや図表に表示し、教員が児童を引き付けた授業をしているかどうかなどを判定する仕組みを取り入れている。またタブレット端末を使った「AIデジタルドリル」を通し、児童の自発的な学習を促したり宿題として用いたりすることで、教師が採点したり宿題を準備したりする手間を省力化しているという。

協働学習でのAI活用を紹介する京都市教委

 京都市の事例では、小学校の協働学習の授業でAIを活用している。教室に設置したカメラやマイクの音声認識機能を用いて、40人前後の児童全員の発言状況を分析してパソコン上にグラフ化するなどし、1人の教員が必ずしも把握しきれないクラス全員の発言数をチェックできる仕掛け。発言数が少ない児童などへのきめ細かい指導に役立てているという。

 また埼玉県では、小中学校合わせて約30万人が受ける同県の学力・学習状況調査(学力テスト)の結果と、それぞれの学校が保有している児童生徒のデータの両方をAIで分析。ビッグデータを短時間で解析することで、児童生徒一人一人に合った学力の指導をはじき出し、「個別アドバイスシート」に分析結果を記載して保護者に配布しているという。

 事例報告に続き、小柳和喜雄・関西大学総合情報学部教授や白水始・国立教育政策研究所総括研究官ら事業推進委員が参加してパネルディスカッションも行われた。先端技術を教育現場で使うことの意義や問題点などが話し合われ、「どう使えば子どもたちの教育の改善に役立つのかといった哲学やビジョンが、あらかじめ必要になる」「まずは使ってみて試行錯誤することが大事。成功例から学ぶことも必要だが、失敗例から得るものも多い」「はじき出されたデータと生身の教員の感覚のずれがなぜ生じたのかを考えることも重要」など、さまざまな意見が出された。

 文科省では、3年間の実証研究の成果を近くガイドブックとしてまとめるほか、3月中にも同報告会の模様をYouTubeに編集して、同省のHPで公開する。

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