埼玉超勤訴訟の二審始まる 一審判決巡り真っ向から争う

 埼玉県内の公立小学校に勤める教員が、時間外労働に対し残業代を支払うべきだとして同県教委を訴えていた裁判(埼玉超勤訴訟)は3月10日、昨年のさいたま地裁での一審判決を受けて東京高裁での控訴審が始まった。原告側は、時間外に行っていた業務の一部は、労働基準法32条の労働時間に当たると判断したものの、残業代の支払いなどの原告側の主張を退けた一審判決を不当と主張。被告の県教委側も校長が命令していない教員の時間外の勤務は、労基法上の労働時間に含まれないとして、真っ向から争う姿勢を見せた。

 一審で原告側は、教員が勤務時間外に校内に残り、長時間勤務をしている状態は、1日8時間を超えて労働をさせてはならないとしている労基法32条に違反しているとし、労基法37条に基づく残業代を支払うべきだと主張。37条が適用されない場合でも法定労働時間を超えて労働を強制されたとして、国家賠償法上の損害賠償請求が認められるべきだと訴えていた。

 しかし、昨年10月に出た一審判決では、教員に残業代を支払わない代わりに4%の教職調整額を支給する「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)によって、37条は適用されないとして、原告の訴えを退けていた。

 一方、一審判決では校長の業務命令によって長時間の時間外労働が常態化していて、校長が業務の割り振りなどの注意義務を怠ったまま法定労働時間を超えて働かせ続けていれば、国家賠償法に基づく損害賠償責任を負うべきであるとも言及。原告が証拠として提出していた時間外に行った業務の一部を、労基法32条に基づく労働に当たると認定していた。

 この日行われた1回目の口頭弁論では、原告側が提出した控訴理由書を踏まえた意見陳述が行われた。控訴理由書では、一審判決で一部の時間外労働を労基法上の労働時間として認められたことを踏まえ、残業代が支払われないことや、管理職の責任が認められないとされたことは不当であると改めて主張した。

 これに対し、被告の県教委側が提出した訴訟答弁書では、時間外の教員の勤務は、校長による命令に基づく勤務を除いて自発的な勤務であり、労基法上の労働時間には該当せず、校長に管理責任はないと反論。校長は原告の教員に対して時間外の勤務を命じたことはないとして、原告の教員の時間外の勤務は自発的なものであるから、校長は労基法32条に違反しておらず、国家賠償法に基づく賠償責任も発生しないとの立場を鮮明にした。

記者会見で二審のポイントを説明する原告側代理人を務める弁護士ら

 同日に記者会見を行った原告の田中まさお(仮名)さんは「ここまで来たら強制労働だと言いたい。(時間外に仕事を)自主的にやっているのではなく、やらされている。そう主張しているのに『あなたの仕事は自主的だ』と言いながら雇用主が仕事を増やしている。これは現代的強制労働だ。そういう思いで今回の控訴審を迎えた。東京高裁の裁判長には、さいたま地裁の判決が不公平であることを訴えたい」と力を込めた。

 さいたま地裁に意見書を提出した、教育法が専門の髙橋哲(さとし)埼玉大学准教授は「一審判決の中では、時間外に行った業務の一部が労基法に基づく労働時間として認められたにもかかわらず、正規の勤務時間の中で空いている時間があれば差し引くということが行われている。これは民間の労働裁判ではあり得ない。途中から急に反則が許され、逆転負けを喫してしまったようなものだ。東京高裁には、本来のルールの下で法律判断をしてほしい」と求めた。

 次回は5月26日に予定されている。

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