教員研修の履歴管理に懸念 日本教師教育学会が公開シンポ

 教員免許更新制の廃止に代わり、教員研修の履歴を管理するシステムの導入を進める教員研修の政策方針を巡り、日本教師教育学会は3月13日、「『令和の日本型学校教育』と教師」をテーマにした公開シンポジウムをオンラインで開催した。中教審の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会で部会長代理を務めた荒瀬克己・教職員支援機構(NITS)理事長が登壇し、特別部会が昨年11月に示した「学び続ける教師」の実現を目指すとした審議まとめの狙いを説明。教員養成、教員研修に関わる研究者らが、政策に対する懸念点をディスカッションした。

シンポジウムで特別部会の審議まとめの意図を解説する荒瀬理事長(Zoomで取材)

 昨年3月に中教審に対し「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」が諮問され、教員免許更新制の廃止を含めた特別部会での議論が始まったのを受けて、同学会では昨年6月、特別部会に向けて、教員免許更新制の廃止に代わる研修の仕組みには、教師や学校の自律的で主体的な研究活動を促進する環境条件の整備を進めることが望ましいとする要望書を提出。それ以来、特別部会の議論を注視しながら、議論を重ねてきた。

 この日のシンポジウムではまず、安藤知子・上越教育大学教授と、久保富三夫・元立命館大学教授が特別部会の審議まとめの課題を述べた。

 安藤教授は審議まとめがイメージしている教師の学びの在り方は、用意されたコンテンツによって習得した知識や技術を得点化して、それが高ければ資質・能力が高いとする考え方であり、教師の本来の職能発達の視点に立てば容認し難いが、教員採用試験の倍率低下などによって教師になる人材の質に変化が起こり、教師自身の「単純労働者化」が進んでいるとするならば、この方向性は否定し難いものでもあると指摘。

 審議まとめで提言された教員の研修履歴を管理するシステムの導入や学校管理職との対話による研修受講の奨励について、「簡単に対話といっても、今の状況では教員評価の面談が、受けなければいけない研修の指示に置き換えられるということが簡単に想像できる。今回の審議まとめに出ている『対話』とは何か。研修受講履歴を管理するのはあくまでも当事者本人であり、教育委員会や管理職は、把握はしても管理してはいけない」と話し、教員評価と研修受講履歴の確認を明確に切り離しておかなければ、管理職との対話は人事管理権限の拡大につながると警鐘を鳴らした。

 教育公務員特例法の研修条項との関係に着目した久保元教授は、審議まとめで掲げている専門職としての教師にふさわしい自主性、主体性、多様性、自律性を尊重する研修理念と、実際に想定されている制度の内容には矛盾があると批判。具体的に「質が高い」として推奨されているのは、教職大学院での学びや教育委員会、NITSが開設した研修、民間のさまざまなセミナー、校内研修など限定的であり、教職大学院以外の大学での学びや学会への参加、幅広い民間教育研究団体の主催する研究会などが含まれていないとした。

 その上で、教員の研修・研究の自由を定めた教育公務員特例法の研修条項の理念に基づき、「研修とは、研究と修養を意味するもので『研修を受ける』というのは適切ではない。『主体的』という文言が審議まとめではあふれているが、受講という表現も随所にある。研修は行うべきものであり、その主語は教師。教育委員会などが主語となるのは、あくまでも研修の機会の確保だ」と話し、研修の主体と研修の機会の主体を分けるべきだと強調した。

 これらの懸念に対し荒瀬理事長は、審議まとめで盛り込まれた教員の研修履歴を管理するシステムの構築やNITSによる研修コンテンツの利用などは、必ずしも中心的なものではなく、審議まとめの「おわりに」で示したような、学びに専念する時間を確保した一人一人の教師が、自らの専門職性を高めていく営みであると自覚しながら、誇りを持って主体的に研修に打ち込む姿を実現していくことや、教師の学びの多様性と自らの日々の経験や他者から学ぶといった「現場の経験」も含む、学びのスタイルの多様性を重視するといったことがより重要だと強調。

 研修履歴を管理するシステムについても、「あくまでも教師のキャリア発達のための学びの記録であって、自分のために使ってもらうことが前提だ。設置者が人事に使うことはあり得るだろうが、その研修を受けていて有利になることはあっても、その研修を受けていないから不利になるということがあってはならない。その研修の必要性を教師自身が判断できるようにすることが重要だと思っている」と説明した。

あなたへのお薦め

 
特集