「10年目までに特別支援経験」案 委員の懸念で条件緩和も

 特別支援教育を担う教員の養成を議論している文科省の検討会議は3月15日、第6回会合を開き、教員全員が「採用後10年目までに、特別支援教育を複数年経験する」などの方策を盛り込んだ報告書案について検討した。併せて、特別支援学校の教員の専門性を担保するための教職課程のコアカリキュラム(コアカリ)案を報告。コアカリは2023年または24年の4月に開始し、その他の方策は24年度には実現できるよう取り組むとした。委員からは方策の実現性を懸念する声が上がり、前回素案から一部、条件を緩和する修正も行われた。検討会議は3月下旬に次回会合をメール開催し、報告書を取りまとめる。

オンラインで行われた第6回会合(文科省YouTubeで取材)

 検討会議は、特別支援教育の「個別最適な学び」と「協働的な学び」に関する知見や経験は、障害の有無にかかわらず、教育全体の質の向上に寄与するとして「特別支援教育の専門性を担保しつつ、特別支援教育に携わる教師を増やしていくことが必要」と強調。①養成段階での育成②採用段階での工夫③校内体制の整備、キャリアパスの多様化、人事交流の推進による専門性向上④研修(校外)による専門性向上⑤国による調査・把握――の各段階で、具体的な方向性を示した。

 その中で前回の素案では、専門性向上の方策の一つとして「全ての新規採用教員がおおむね10年目までの期間内において、特別支援学校の教師や、特別支援学級、通級指導教室の担任を複数年経験することとなるよう、人事上の措置を講ずるよう努める」という記述が盛り込まれていた。

 これに対し、市川裕二委員(全国特別支援学校長会会長、東京都立あきる野学園校長)は「前回の報告書(素案)が出た時、周りの校長からは『そんなことできるのか。人事配置はそんなに簡単ではないのでは』という声が率直な感想としてあった。また、担任でなくても特別支援学級の子供と関われる機会はある。担任に限らず、『特別支援学級の授業をする機会が増える』といった形にならないか」と指摘した。

 また濵田豊彦委員(東京学芸大学副学長)も「特に『10年以内に複数年(経験)』という言葉に、非常に反応する人が多かった。毎年、経験のない人たちがどんどん特別支援の場に、入れ代わり立ち代わり来てしまう状況を生んでしまうと、子供たちにとって望ましくないのではないかという意見があった」と述べた。

 こうした指摘も踏まえて今回の報告書案では、特別支援学級の担任が経験の浅い教員だけに偏った配置になってしまうなど、配置が難しい場合には「特別支援学級において、年間を通じて責任をもって特定の教科の授業を担当させることとするなど、必要な経験が得られるよう努めること」とする記載を追加。文科省の担当者は「一律の機械的な運用にならないよう、目指すところと、そこに至るまでの柔軟性を合わせた表記とした」と説明した。

 加えて、養成段階での育成に関しては、特別支援学校の教員の専門性を担保する「特別支援学校教諭免許状コアカリキュラム」の案が報告された。同コアカリはパブリック・コメントの募集を経て今年7月頃に策定し、大学への周知を行う予定。同コアカリに基づく教職課程は23年または24年の4月に開始するスケジュールも示された。

 加治佐哲也座長(兵庫教育大学長)は「特別支援教育は学習指導、生徒指導に並ぶ大きな柱になってきている。また、現職研修として(教員免許更新制を発展させた)新しい学びの姿を作っていかなければならないが、そこでも特別支援教育は大きな位置を占めることになる。特別支援教育の養成と研修における質保証、レベルアップや底上げを確実に図れる報告書であり、コアカリになると思う」と話した。

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