小学校教員免許、養成学科以外でも取得可能に 文科省が論点提示

 教員の養成・採用・研修の見直しを巡り、文科省は3月15日、オンラインで開かれた中教審の合同会議で、今年4月から本格導入される小学校高学年の教科担任制に対応するため、小学校の教員免許について、大学の教員養成を主たる目的とする学科以外の学科においても取得可能にする考えを論点として提示した。また、データ活用やSTEAM教育、外国語など特定分野に強みや専門性を持った教員の養成にあたり、最短2年間で取得できる二種免許状を活用し、教職課程の履修負担を軽減する方向性も明らかにした。今後、中教審で議論が進められ、来年2月ごろにまとまる答申に具体的な内容が盛り込まれる見通し。

オンラインで行われた合同会議

 こうした方向性や論点は、この日行われた中教審の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会基本問題小委員会、初中教育分科会教員養成部会の合同会議の席上、文科省が提出した資料「特定分野に強みや専門性を持った教師の養成・育成に係る検討の方向性と主な論点(例)」で示された。
 
 小学校高学年の教科担任制では、外国語、理科、算数、体育が優先的に専科指導の対象となることを踏まえ、必要な教員確保のためには、「小学校教員養成の在り方について検討していくことが重要」との現状認識を確認。検討の方向性として、専科指導にあたる担当教員が小学校と中学校両方の教員免許状を併せ持つことを促進するとともに、「特定教科の指導に強みを持つ小学校教師を養成する取り組みを促進することが重要ではないか」と指摘した。
 
 そのための主な論点として、▽養成段階における小学校教員と中学校教員の免許状の併有推進に向け、中学校教員養成課程を開設する大学の学科に小学校教員養成課程の開設を促進するには、どのようなことが考えられるか▽小学校高学年の教科担任制を推進する特例措置として、教員養成を主たる目的とする学科等以外の学科等においても、小学校教員養成を行うことについてどう考えるか--の2つを挙げた。

 小学校教員の養成については、児童の発達についての理解や教科担当の範囲などから、2001年7月に中教審教員養成部会が定めた教職課程認定基準において、「小学校教諭の教職課程は、教員養成を主たる目的とする学科等でなければ認定を受けることができない」と定められている。ただ、教員養成大学・学部以外の大学・学部であっても、教員養成を主たる目的とする学科や課程・コースを設けることで小学校教員の養成は可能となっており、件数は少ないが、体育学部や外国語学部で小学校教員の養成コースが設置されている例もあるという。

 一方、特定分野に強みや専門性を持った教員の養成や採用については、全ての学校種を対象に、「高い専門性を持った人材が教師になることを促進することが重要となっている」との現状認識を説明。特例的な措置として、特定分野に強みや専門性を持った教員については、「教職課程の履修負担の軽減を図る」との検討の方向性を示した。特定分野については、データ活用、STEAM教育、障害児発達支援、日本語指導、心理・教育相談、社会福祉、社会教育などのほか、「高い語学力や外国語指導力、グローバル感覚を身に付けるために、海外留学を希望する学生を念頭に、教職課程の履修にかかる負担を軽減することも考えられる」と説明している。

 こうした特例的な措置を具体化するための論点として「例えば、4年制大学においても、最短、2年間で免許状取得に必要な基礎資格・単位を得られる二種免許状の取得を念頭に置いた教職課程の開設や履修モデルを設定することについてどう考えるか」と、二種免許状を活用して、特定分野に強みや専門性を持った教員の養成や採用を促進する考えを打ち出した。

 続いて、専門性のある教員養成に取り組んでいる3つの大学が事例を報告。国士舘大学体育学部こどもスポーツ教育学科、明治学院大学心理学部教育発達学科、関西外国語大学英語キャリア学部英語キャリア学科の担当者が、それぞれ体育、心理学、英語の専門性を生かした教員養成の状況を説明した。

 委員の質疑で、松田悠介委員(Teach For Japan 創業者)は「課題意識として、教員のなり手不足問題への対応がある。良い人材は民間企業との取り合いになるのだから、文科省が示した論点の全ては大学側が本気で取り組まないと、うまく機能しないのではないかと危惧している。二種免許状を前提としたカリキュラム編成をしても、そもそも教職を目指す母数を増やしていかないと、話にならない」と指摘。

 その上で▽大学側が教職課程を履修していない学生に、教員の魅力を積極的にアウトリーチしていく▽教職課程に参加していない学生に、NPOやボランティアなどの教育活動に参加する機会の提供や、参加した学生に対して単位を認定していくような仕組みの整備▽教員になる人材を多く輩出した大学に、国が特別な予算を付けるといった、大学側へのインセンティブの付与--の3点を提案した。

 これに対して、国士舘大学の三小田美稲子教授は「本学の体育学部には競技力が高く、教職を目指す気持ちを持たない学生もいる。だが、小学校でのボランティアを組織的にやることで、『教職って、素晴らしい』と考え、スポーツに進もうとした学生が教職に切り替えることが起きている。なるべく早く大学の外での体験をさせるように企画している」と、取り組みを説明した。

 明治学院大学の水戸博道教授は「学校現場での学生の体験活動は、もろ刃の剣でもある。一つの学校に定期的に通うと、学校の負の側面を見てしまい、すごく高いモチベーションを持っていたはずなのに、教職を諦める学生もいる。逆に、教員になるつもりはなくても、体験活動にいって教員の魅力を知って、教員になろうと考えを変えていく学生もいる。本学では、体験活動を単位化しているが、学生に対してきめ細やかに対応することが大きな課題になっている」と、現状を報告した。

 松木健一主査代理(福井大学副学長)は、文科省が示した検討の方向性と論点について、「小学校の教員になる学生は文系学部が多い。逆に、算数や理科を深く学んだ学生が小学校の免許を取れる可能性は難しいように思える。STEAM教育へのニーズなどを踏まえ、特定分野に強みや専門性を持った教員を増やすならば、理系の教員免許を取ろうとする学生を増やすことが大切ではないか」と指摘。

 これを受けて、加治佐哲也主査(兵庫教育大学長)は「小学校の免許を希望する学生は、文系が圧倒的に多い。理系の学生には民間企業での就職先も多く、このままでは、理系教員の専門性を高めることは相当難しいように思える」と応じた。

 荒瀬克己委員(教職員支援機構理事長)は「教職の魅力を考えるとき、『教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない』とする教育公務員特別法の条文が、死文化している、との指摘が気になる。教師は『授業に支障のない限り、勤務場所を離れて研修を行うことができる』と定められている。そうした教員の魅力をきちんと担保して、発信できるようにすることが大切ではないか」と述べ、学校の働き方改革によって、教職が本来持っているはずの魅力を発揮できる環境の確保が必要との考えを示した。

文科省が示した「特定分野に強みや専門性を持った教師の養成・育成に係る検討の方向性と主な論点(例)」のポイント

■特定分野に強みや専門性を持った教師の養成・採用(二種免許状の活用)

【検討の方向性】
〇学校教育課題が多様化する中、学校現場における今日的教育課題に対応した特定分野(※)に強みや専門性を持った教師を養成することが求められている。こうした新たな現場ニーズに対応した特定分野に関して高い専門性を持った人材が教師になることを促進することが重要。
 ※ データ活用、STEAM教育、障害児発達支援、日本語指導、心理・教育相談、社会福祉、社会教育の他にも、例えば、高い語学力や外国語指導力、グローバル感覚を身に付けるために、海外留学を希望する学生を念頭に、教職課程の履修にかかる負担を軽減すること等も考えられる。
〇このため、専門分野の学びを深めたり、在学中に教師を志すようになった者が卒業までの間に教員免許状を取得したりすることにも柔軟に対応できるよう、特定分野に強みや専門性を持った教師の養成に係る特例的な措置として、教職課程の履修負担の軽減を図ることとしてはどうか。

【主な論点】
〇特定分野に強みや専門性を持った教師の養成に係る特例的な措置として、例えば、4年制大学においても、最短、2年間で免許状取得に必要な基礎資格・単位を得られる二種免許状の取得を念頭に置いた教職課程の開設や履修モデルを設定することについてどう考えるか。
〇上記を可能とするとした場合、具体的な現場採用ニーズに即したものであることを明らかにすることや、免許状の上申に適切に対応すること等の一定の条件を付すことについてどう考えるか。
〇特定分野に強みや専門性を持った教師の養成・採用を一体のものとしていくため、大学と教育委員会との連携の在り方についてどう考えるか。
〇特定分野に強みや専門性を持った教師の採用を促進するための取り組みとしてどのようなことが考えられるか。

■小学校高学年における教科担任制の推進

【検討の方向性】
〇各地域や学校の実情に応じた小学校高学年における教科担任制の取組を進めていく観点から、小学校と中学校の教員免許状の併有促進に留意しつつ、特定教科の指導に強みを持つ小学校教師を養成する取組を促進することが重要ではないか。

【主な論点】
〇学校規模や地理的条件等、各地域や学校の実情に応じ、義務教育9年間を見通した教科担任制の取組を推進する観点から、養成段階において小学校教員と中学校教員の免許状の併有を推進するため、中学校教員養成課程を開設する学科等において小学校教員養成課程の開設を促進する方策についてどのようなことが考えられるか。
〇小学校高学年における教科担任制を推進していくための特例的な措置として、例えば、開放制による教員養成の特性を生かし、教員養成を主たる目的とする学科等以外の学科等においても、小学校高学年における教科担任制に対応した小学校教員養成を行うことについてどう考えるか。

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