バーチャル転校生で多様な意見を創出 小規模中学で活用

 人間関係が固定化されがちな小規模学級でも、多様な意見を出し合ったり、協働的な学びを促したりできるようにしたいと、3Dキャラクターが画面越しに参加する「バーチャル転校生アプリ」を活用した道徳の公開授業が3月18日、福井市立越廼(こしの)中学校(野坂訓由校長、生徒13人)で行われた。アプリを開発した小林渓太・福井大学助教は「教育用アプリとして一般化し、地方の小規模校でも質の高い深い学びが実現できるような取り組みにしていきたい」と意気込む。

 バーチャル転校生のキャラクターは、簡単な表情の変化や口の動きをAI技術で再現できる。教師があらかじめ発話内容を複数パターン入力しておき、授業の展開に合わせて選択して発言させて使う。学級の実態に応じて、あえて反対の意見を話させたり、間違いを言ったりすることで、協働的な学びを誘発させる狙いがある。同中では昨年12月から、このアプリを授業で活用しており、今回で3回目となる。

バーチャル転校生と意見を交わす道徳の授業(福井大学提供)

 この日、1年生で行われた道徳の授業では、難病を患った喜世美さんと、喜世美さんの介護をする夫の和威(かずたけ)さんのエピソードを取り上げた教科書の題材から「思いやり」について議論。前時に題材を読んでそれぞれが考えた問いを踏まえ、自分の意見を述べ合った。

 3人の生徒がそれぞれの意見を発表する合間に、バーチャル転校生の「カズヤさん」は「和威さんは思いやりがあるのに後悔したというのは変だと思います。もっと何かをしてあげたかったのではないでしょうか」「もう少し詳しく教えてほしいです」「『喜世美さんのためになったのか』という問いは気になります。和威さんは喜世美さんのためにと考えてやったのに、喜世美さんのためにはなっていなかったからです」など、生徒の意見をさらに深めていく発言を重ねていった。

 授業は最後に、4月から入ってくる新入生に向けて、上級生としてどのようなことを心掛けていきたいかをまとめて終了した。

 授業を行った向井敏幸教諭は「今日の授業は思っていたよりも生徒の深い意見が出ていたので、バーチャル転校生の活躍は少なかったが、社会科の授業で南米の環境保全と開発のどちらを優先すべきかというテーマでディベートをしたときは、生徒は全員が自然保護の立場で、バーチャル転校生に開発優先の立場から討論してもらった」と、さまざまな教科で応用できることを強調した。

 小林助教は「現在は、どんな場面やどんな教科で発話をすればいいのかなどの検証を始めた段階だ。今回のアプリはプログラミングが必要など、教員だけで手軽にできるものにはなっていない。それらや発話内容の改善をしたり、同級生だけでなく下級生や上級生といったいろいろなパターンも展開したりして、教育用アプリとして一般化していきたい。地方の小規模校でも質の高い深い学びが実現できるような取り組みとして考えていきたい」と展望を語った。

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