「子供の将来を守る努力が必要」 ウクライナ大統領が国会演説

 ロシアによる侵攻を受けているウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3月23日、日本の国会でオンラインによる演説を行い、「多くの街では、殺された人をちゃんと葬ることさえできない。数千人が殺され、そのうち121人は子供だ」と惨状を説明。「子供や孫の将来を守るための努力が必要だ。責任のある国家が一緒になって平和を守るために努力をしなければならない。世界の安全を保障するために、既存の国際機関は機能できないので、本当に侵略を止められるツールを作らなければならない」と安全保障の確保に向けた新たな国際的な枠組みを構築する必要性を強調。そのために日本にリーダーシップを発揮するとともに、ロシアに対する経済制裁の継続やウクライナの戦後復興への支援を求めた。

オンラインで演説するウクライナのゼレンスキー大統領(衆議院インターネット審議中継)

 ゼレンスキー大統領はまず、日本の援助に謝意を表明した上で、1986年に事故を起こしたウクライナ北部のチェルノブイリ原発について「事故当時のがれきが埋められた土の上をロシア軍の装甲車両が通った。いまも危険な核物質の処理場をロシアが戦場に変えた。欧州最大規模のザポロジエ原発が攻撃を受けた。工業施設の多くに被害が出ており、環境に対するリスクになっている」と、ロシアによるウクライナへの侵攻が世界規模の環境問題を引き起こす恐れがあると指摘。

 ウクライナの惨状について「1000発以上のミサイル、多くの爆弾が落とされ、多くの街が破壊されている。そうした街では、殺された人をちゃんと葬ることさえできない。庭や道路沿いなどに埋葬している。数千人が殺され、そのうち121人は子供だ。多くのウクライナ人が住み慣れた家を出て、身を隠すために避難している」と伝えた。

 その上で、「ウクライナとそのパートナーだけが世界の安全保障を作ることができる。全ての民族、国民にとって、社会の多様性を守り、それぞれの国境の安全を守り、子供や孫の将来を守るための努力が必要だ」と強調。「国際機関が機能しなかった。国連安全保障理事会も機能しなかった。責任のある国家が一緒になって平和を守るために努力をしなければならない」と訴えた。

 日本に対しては「ウクライナに対する具体的な支援に感謝している」と謝意を表明。「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのが、日本だ。(ロシアに対する)制裁の継続をお願いする」と求めた。

 さらに、戦後復興についても言及。「ウクライナの復興を考えなければならない。避難した人たちが、故郷に戻れるようにしなければならない。日本の皆さんも、きっと住み慣れた故郷に戻りたい気持ちが分かると思う」と、復興支援の局面で日本のリーダーシップに期待を表明した。

 さらに「全世界の安全を保障するために、予防的に動けるツールが必要だ。既存の国際機関はそのために機能できない。本当に侵略を止められる、新しい予防的なツールを作らなければならない。日本は、そのツールの開発のために大きな役割を果たせる」と述べ、国連改革など安全保障の新たな枠組みでもリーダーシップを発揮するよう求めた。

 最後に、日本に対して「距離があっても、価値観がとても共通している。それはもう、距離がないということ。心が同じように温かい」と親近感を示し、日本語で「ありがとう」と述べて演説を結んだ。

 演説の視聴は国会内の会議室で行われ、岸田文雄首相や衆参両院議員が出席した。同時通訳は在日ウクライナ大使館が行った。

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