教育学は何ができるのか ウクライナ情勢受け緊急シンポ

 ウクライナへのロシアの軍事侵攻が続き、学校施設への攻撃や子どもたちの犠牲が出ている緊迫した状況を受けて、日本教育学会は3月24日、「ウクライナ情勢を考える:教育学に何ができるか?」をテーマとする緊急セミナーをオンラインで開いた。国連機関の教育担当官や国際協力機構(JICA)の専門家として、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、アフガニスタンなどの紛争経験地域で教育協力事業に関わってきた小松太郎上智大学教授が、北村友人東京大学教授と対談した。

紛争経験地の教育の再生について語る小松教授(左、Zoomで取材)

 開発途上国や紛争後の地域における教育政策について研究している小松教授は、ウクライナではコロナ禍によるオンライン授業で教育の質や子どもの学習意欲が下がっているところに今回の紛争が起きており、複合的な人道危機が起きていると指摘。

 これまで関わってきた紛争経験地の学校教育の状況を写真も交えて紹介しながら、「ウクライナでも学校が壊されているが、なぜ学校が標的になるのかと言えば、学校の建物は頑丈なので軍事目的で使われる恐れがあるからという理由と、コミュニティーのシンボル的な役割を果たし、次世代を育てるための学校を攻撃することで、住民に心理的なダメージを与えるという理由がある」と話し、学校が軍事目的で使用されないようにする国際的な指針「学校保護宣言」の重要性などを説明した。

 また、北村教授から、紛争が起きたときに学校ができる役割について尋ねられると、小松教授は「紛争が起きている場所や大規模な自然災害が起きている場所で、短期的な教育の役割として考えないといけないのは2つある。一つは子どもを保護する役割、もう一つは何とか学びを継続する役割だ。非日常の暴力から子どもの心と体を守る。教育と保護は密接に関わってくる」と答えた。

 その上で、ウクライナとロシアの和解に向けた教育の視点も強調し、「ウクライナが復興するときに、ウクライナとロシアの人々がどうなっていくか、外の人がどうやって支えられるか。和解が大事になる。人は『この国の人はこういうものだ』と集団で捉えがちで、物事をステレオタイプで見ようとする。だが教育は、集団の中にもいろいろな人がいるということを気付かせてくれる。ウクライナにもロシアにもいろいろな人がいる。それを理解し、大人が子どもに伝えていくのが大事なのではないか」と問題提起し、多様な人々と協働しながら学ぶプロセスの価値を語った。

あなたへのお薦め

 
特集