教員免許更新制廃止へ国会論戦スタート 末松文科相が趣旨説明

 教員免許更新制を今年7月に廃止し、来年4月から教員一人一人の研修記録の作成を義務付ける法改正案について、国会は3月24日、末松信介文科相が衆院本会議で法改正案の趣旨説明を行い、論戦がスタートした。末松文科相は「社会的変化、学びの環境の変化を受け、教師の学びの在り方もまた変化することが必要だ」と強調。教員免許更新制を廃止する代わりに、公立学校の校長や教育委員会などの任免権者が校長や教員の研修記録を作成し、それを元に指導助言を行うことによって教員の質を担保する、とした制度改正の概要を説明した。今国会で成立すれば、7月1日以降に免許の期限を迎える教員は免許状更新講習を受講する必要がなくなり、実質的に来年度から免許状更新講習が不要となる。

教員免許更新制を廃止する法改正案の趣旨説明を行う末松文科相

 趣旨説明が行われたのは、教育公務員特例法と教育職員免許法の一部を改正する法律案。末松文科相はまず、「グローバル化や情報化の進展により、社会の在り方そのものが急速に変化する状況が生じつつあり、教育を巡る状況の変化も速度を増している。このような中、教師自身も高度な専門職として、新たな知識技能の習得に継続的に取り組んでいく必要が高まっている」と、教員が時代の変化に対応する必要性を指摘。一方で「教師についてもオンライン化された学びが、新型コロナウイルス感染症に対する対応を契機に、急速に広がっている」と、オンラインによる教員研修が普及してきたことに言及した。

 これからの時代に応じた教員の学びについて、「このような社会的変化、学びの環境の変化を受け、教師の学びの在り方もまた変化することが必要であり、『令和の日本型学校教育』を実現する新たな教師の学びの姿として、主体的な学び、個別最適な学びと協働的な学びなどが求められている」との見方を示した。

 そうした教員の学びの変化に対応する必要性を踏まえ、末松文科相は「この法律案は、校長および教員の資質の向上のための施策をより合理的かつ効果的に実施するため、公立の小学校等の校長および教員の任命権者等による研修等に関する記録の作成、ならびに資質の向上に関する指導および助言等に関する規定を整備し、普通免許状および特別免許状の更新制を発展的に解消する等の措置を講ずるものである」と、改正案の狙いを説明した。
 
 続いて、改正案の概要を3項目に分け、

  1. 公立学校の校長および教員の任命権者は、校長および教員ごとに研修の記録を作成しなければならない。同時に、指導助言者は、校長および教員に対し、質の向上に関する指導助言を行う。こうした指導助言を行う場合、校長および教員の資質の向上に関する指標や教員研修計画を踏まえるとともに、研修記録の情報を活用する
  2. 普通免許状および特別免許状を有効期間の定めのないものとし、更新制に関する規定を教育職員免許法から削除する。本法律案の施行の際に、現に効力を有し、本法律案による改正前の規定により、有効期間が定められた普通免許状および特別免許状には、本法律案の施行日以後は、有効期間の定めがないものとするなどの経過措置を講じる
  3. 普通免許状を有する者が、他の学校種の普通免許状の授与を受けようとする場合に必要な最低在職年数について、当該年数に含めることができる勤務経験の対象を拡大するとともに、主として社会人を対象とする教職特別課程について、その終了年限を1年以上に弾力化する

 と述べた。

 質疑に応じた末松文科相は、廃止する教員免許更新制について、「教員免許更新制は、教師の学びの機会の拡大、大学による教師の資質の向上に対する関与の拡大、良質な学習コンテンツの形成など、一定の成果を上げてきたものと認識している。一方で、10年に一度の講習は常に最新の知識技能を学び続けていくことと整合的でないといった課題のほか、教師に時間的、金銭的な負担があるとの声もあった」と、成果と課題を整理。

 「今回提出した法案では、グローバル化などの社会変化や、オンライン化の進展による研修環境の変化、教員免許更新制の成果・課題を総合的に踏まえ、個々の学校現場や教師のニーズに即した新たな研修システムによって、これからの時代に必要な教師の学びを実現させることとし、これに伴い、教員免許更新制を発展的に解消することとした。これにより、文科省として、教師の資質向上に資する研修環境の整備を進めいく」と理解を求めた。

 また、教員の長時間勤務が問題となる中で、教職調整額を上乗せする代わりに時間外勤務手当を支給しない現行の給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)について、「公立学校の教師の職務を規定している現在の給特法の仕組みでは、教師の職務は自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が大きく、どこまで職務であるか切り分けがたいという特性を踏まえ、時間外勤務手当を支給しないかわりに、勤務時間外の内外を包括的に評価するものとして、教職調整額を支給している。一方、給特法の制定から半世紀が経過し、教師に求められる仕事の内容も変化した。また2016年度に実施した調査においても、法制定当時の規定、想定を大きく超える長時間勤務の実態が明らかになっている」と、制度が実態に合わなくなっているとの認識を表明。

 「これらを踏まえ、19年に法改正を行い、教師の勤務時間の上限等を定める指針を策定するなど、学校の働き方改革に取り組んでいる。今後こうした働き方改革のさまざまな取り組みと成果等を踏まえつつ、22年度に勤務実態調査を実施し、教師の勤務実態や働き方改革の進捗(しんちょく)状況をきめ細かく把握する予定。その結果等を踏まえ、給特法等の法制的な枠組みを含め、検討していく」と、制度改正も含めた今後の取り組み方針を説明した。

 また、鈴木俊一財務相は、教員の時間外勤務手当について、「公立学校の教員については、いわゆる給特法において、教員の職務の特殊性等から、時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない代わりに、教職調整額を支給するものであると理解している。その上で今後については、現在の勤務実態を追認することなく、教員の働き方改革を進めることが重要であると考えている。22年度予算においても、教員の事務負担を軽減するための外部人材活用等に係る予算を計上し、教員が授業等に注力できる環境を整備することとしている」と述べ、働き方改革によって対応すべきとの考えを説明した。

 いずれも荒井優議員(立民)の質問に答えた。

 教員免許更新制の廃止を盛り込んだ教育職員免許法改正案は、開会中の国会で成立すれば、7月1日に施行される。これにより、7月1日以降に教員免許の更新期限を迎える教員は免許状更新講習の受講や更新手続きが不要となる。ただし、産休・育休や海外在住などで施行日以前に有効期限が切れる教員は、更新講習を受ける必要がある。

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