教員の特別免許「小学校で複数教科の担当も」 文科省が改革案

 教員の養成や採用の見直しを集中的に議論している中教審の小委員会は3月25日、第5回会合をオンラインで開き、社会人による教員免許の取得を想定しているものの、授与数が低迷している特別免許状の課題と改善策について、ヒアリングと意見交換を行った。文科省は席上、社会人の潜在的な教員希望者の掘り起こしに向け、▽教職課程を経ていない人が特定免許状を取得して教員になるための標準的な研修コンテンツの整備▽特定の教科に限定して授与されている特別免許状で、小学校段階で複数教科を担えるような制度の在り方の検討--などを具体的な取り組み案として提示した。また、教職員支援機構が実施する教員資格認定試験についても、教科『情報』を先行して「民間企業などで培った専門性を踏まえて免許状が授与できるようにする」との改革案を示した。

特別免許状の課題と活用策を議論した中教審の小委員会

 会合の冒頭、文科省は、特別免許の課題と改善策を整理した見直し案「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の在り方に関する検討」を説明した。

 教職の特別免許状は、多様な専門性を持つ人材が教員として学校教育に関わる仕組みとして1988年に導入されたが、教員免許状が年間約20万件授与される中で、大学で必要な単位を修得する普通免許状がほとんどを占め、特別免許状は約200件で、全体の0.1%程度にとどまっていることを指摘。本来、全教科の授与が可能なのに、実際には外国語(英語)、看護、理科など特定の教科に偏って授与されている現状を説明した。

 また、特別免許状の授与に必要な検定を行う都道府県教育委員会にアンケートしたところ、専門人材を対象とした検定の受検者は全員合格していることが判明。「受検前の事前相談の取りこぼしや、潜在的希望者へのアプローチ、また検定の基準やプロセスなどが不透明であることが課題である可能性がある」と指摘した。

 こうした現状から、文科省では、特別免許状の授与数が増えない背景には、3つのミスマッチが生じているとの見方を表明。授与希望者の専門分野の範囲と、教科の範囲が完全一致しないことに起因する「教科区分と専門性のミスマッチ」、教育委員会が行う検定手続きが随時行われていないため、授与希望者の希望時期と検定実施時期にズレが生じる「時期のミスマッチ」、専門人材を希望する学校や市町村教委と検定を行う都道府県教委の円滑なコミュニケーションが図れていない「主体のミスマッチ」--が想定されるとした。

 さらに、潜在的な教員希望者の掘り起こしに向け、学校・教委側と専門人材側の課題を整理。学校・教委側には「教師としての資質能力への懸念と予算の制約などの観点から、民間企業などの専門人材の活用に対して消極的な傾向がある」、専門人材側には「興味がありつつも、学校現場への参画の仕方、制度の理解、自らのキャリアを生かした参画などの情報が不足している」と指摘。

 こうした分析を踏まえ、潜在的な教員希望者を掘り起こすための具体案として、(1)教職課程を経ていない特別免許状授与候補者らが円滑に学校現場に参画できる、標準的な研修などコンテンツを整備(2)教育委員会の積極的な活用を促すために、特に小学校段階で複数教科を担えるような制度の在り方、特別免許状を活用する場合のインセンティブ措置を検討(3)特別免許状授与者の有用性、制度の周知、学校現場への多様な勤務形態での参画などの優良事例の積極的な創出と横展開を行う(4)教職課程を経て普通免許状を取得したものの、学校現場に参画せず、民間企業などで勤務する者などの掘り起こしを行う--の4点を挙げた。

 また、教職課程を経ずに、教職員支援機構が実施する試験によって、教員免許状が授与される教員資格認定試験の改革にも言及。教えられる教員の確保が問題になっている教科「情報」について、「国や教職員支援機構が主導して、(他教科に)先行して民間企業などで培った専門性を踏まえて免許状が授与できるようにする」との改革案を盛り込んだ。

 会合では、文科省の学校教育への外部人材活用事業として、愛媛県立新居浜東高校で陸上競技のアスリートが体育やキャリア教育の授業、部活動の指導にあたった事例について、監査法人トーマツの吉田圭造シニアマネジャーが報告。また、特別免許状を巡る学校側のニーズと外部人材のマッチングなどについて、東京都教育庁人事部選考課の荒木進太郎課長が実情を説明した。

 委員の意見交換で、松木健一主査代理(福井大副学長)は「特別免許状の役割を考えると、やはり特別な能力のある方に学校に入っていただくことが目的として大きい。もう一つは、地方の学校にとっては、Uターン、Iターンで教員になってもらいたいので、そうした希望者をサポートしていく仕組みとしても特別免許状の役割があると思う。一方で、さまざまな特殊能力のある教員が学校に入ってくると、学校全体をチームとしてまとめていく教員の存在がさらに重要になってくる」と述べた。

 加治佐哲也主査(兵庫教育大学長)は「特別免許状について、文科省からさまざまなアイデアが示された。これまでと違う、だいぶ思い切った提案になっている。教師不足をなんとかしたい、特色ある学校作りに資する人に教員になってもらいたい、という思いは十分に分かる。ただ、一方で、トーマツの報告では『専門分野で実績や経験があるからといって、簡単に教員にしていいわけではない』旨の指摘もあった。教員の質保障もやはり考えないといけない。そうした兼ね合いが重要と思う」と述べて、会合を締めくくった。

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