「特別支援教育の経験、どの教員にも役立つ」 検討会議が報告

 文科省の「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議」は3月31日、教員の特別支援教育に関する専門性向上に向けた方策を盛り込んだ報告を公表した。採用後10年以内に特別支援教育を複数年経験する、管理職の任用にあたり特別支援教育の経験を考慮するなど、教員のキャリアパスの中で特別支援教育を経験する機会を設けることを重視。同省初等中等教育局特別支援教育課の山田泰造課長は「特別支援教育は、個別最適な学びの最たるもので、この経験はどの先生にとっても役に立つ」と述べるとともに、現状での非正規教員の比率の高さなど、計画的な人材育成が不十分な実態に課題があるとした。

教員のキャリアパスに応じた専門性向上策

 報告では、養成段階、初任者~10年目、中堅、管理職といった教員のキャリアパスに応じて、特別支援教育の専門性を向上させる方策をまとめた。養成段階では、特別支援学校教諭免許状の教職課程で最低限、身に付けるべき資質・能力をコアカリキュラムとして履修するほか、教育実習や介護等体験で、特別支援学校や特別支援学級の経験を推奨する。

報告について説明する文科省の山田特別支援教育課長

 また採用段階では、特別支援教育の経験を採用時に考慮するほか、採用後10年以内に特別支援教育を複数年経験することを推奨する。10年以内というタイミングについて、山田課長は「自治体によるが、初任校から1度の異動を経て2校ほど経験する時期。指導のスタイルが確立する前に、特別支援教育を経験してほしい」と意図を説明する。

 ただ地域や学校種の状況によって、全ての教師を特別支援学級の担任として配置することが難しい場合は「特別支援学級において、年間を通じて責任をもって特定の教科の授業を担当させることとするなど、必要な経験が得られるよう努める」といった、柔軟な対応を取るよう求めている。

 10年目以降の中堅教員に対しては、校内研修や交換授業、OJTを推進するほか、特別支援学級などの教員による特別支援学校への人事交流を充実させる。また、特別支援学校で特別支援学校教諭免許状を有しない教員の条件を限定する。さらに管理職の任用にあたって、特別支援教育の経験を考慮するほか、特別支援教育に関する目標を学校経営方針の中で設定し、校内の体制を整備する。

検討会議がまとめた方策
計画的な人材育成に課題

 特別支援教育を担う教員の体制については、多くの課題が指摘されている。直近では小中学校の82.3%に特別支援学級が設置されているが、全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の調査(今年1月)によれば、特別支援学級を設置する小学校の校長の70.6%、中学校の校長の75.4%が、特別支援教育の経験がないと回答している。

 また、小学校の学級担任のうち臨時的任用教員は11.49%だが、特別支援学級では23.69%に上っている。同様に、中学校の学級担任のうち臨時的任用教員は9.27%だが、特別支援学級では23.95%となっている。これらの現状について山田課長は「臨時的任用教員だから質が低い、というわけではない。ただ、特別支援の経験を持った教員を計画的に育成する体制になっていないということで、非常に大きな問題意識を持っている」と危惧した。

 その上で「今までなら特別支援学校や特別支援学級に行っていたはずの子供も、保護者の希望などにより通常の学級で一緒に学ぶことがある。どの先生も、特別支援教育を見て見ぬふりはできない状況になっている。現場の経験として、実際に障害のある子に向き合って対応することは、特定の教員だけでなく、全ての教員に求められる資質になっている」と説明。

 さらに「特別支援教育では、年齢や障害の程度が子供によって異なる。子供ごとに教材を考え、『この子にはこういう絵を使った方が伝わる』『掲示物は少なめにしよう』など、子供の特徴を考えた学級運営をしながら、子供の力を伸ばしていく。一方で、通常の学級でも発達障害のある子供はもちろん、いろいろな特性を持った子供がいる。特別支援教育の経験は、学級運営に必ず役に立つものだと考えている」と強調した。

 検討会議は昨年1月に取りまとめられた「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」の報告で、全ての教員、特別支援学級・通級による指導を担当する教員、特別支援学校の教員――のそれぞれに対し、求められる知識や技能などの方向性が示されたことを受け、同年10月に設置された。

 今回の報告に盛り込まれた方策のうち、養成段階でのコアカリキュラムは今年の7月ごろをめどに策定し、2023年または24年の4月から、コアカリキュラムに基づく教職課程を開始する。それ以外の方策は24年度の実現を目指し、各自治体などへの周知を図る。

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