免許更新制「教員不足招いた」 衆院文科委で参考人質疑

 教員免許更新制を廃止し、新たに教員研修の記録作成を義務付ける法改正案を巡り、衆院文科委員会は4月1日、参考人3人に対する質疑を行った。教員免許更新制には、一定の評価をする見方も示されたものの、「教員の勤務環境に当初想定していなかった変化が起き、それに対応できないまま教員不足を招いた」などとして全ての参考人が廃止を支持。新たな研修制度については「学びを振り返りつつ、適切な目標の設定と現状の把握を行うために必要不可欠」と肯定する意見が出る一方、「研修記録と人事評価の関係を明確化すべきだ」「研修記録を義務化するならば、教員を管理統制するためではなく、教員が主体的・自律的に学ぶ機会を保障するための記録だという目的を明確化する条項の追加が必要」といった懸念点が指摘された。

 参考人の意見聴取が行われたのは、教員免許更新制を今年7月に廃止する教育職員免許法の改正案と、来年4月から教員一人一人の研修記録の作成を教育委員会などの任命権者に義務付ける教育公務員特例法(教特法)の改正案。中教審で関連審議にあたった加治佐哲也・兵庫教育大学長、瀧本司・日本教職員組合中央執行委員長、佐久間亜紀・慶應義塾大教職課程センター教授が参考人として登壇した。

 3人の参考人はまず順番に意見陳述を行った。加治佐氏は、中教審の審議内容を要約した後、改正案について「全体として中教審の審議まとめを的確に反映している」と評価。任命権者による教員一人一人の研修記録を作成することについては、「学びを振り返りつつ、適切な目標の設定と現状の把握を行うために必要不可欠なもの。自律的・体系的・計画的な教員の学びを実現する上でのベースになる」と必要性を強調した。

参考人として意見陳述を行う加治佐哲也・兵庫教育大学長(衆議院インターネット審議中継)

 研修記録の範囲については「市町村教育委員会の行う研修や、学校における研修・授業研究なども含め、多様な学びの履歴も含むことができるような仕組みが望ましい」と説明。校長が教員に相談対応、情報提供、指導助言を行う対話と奨励の仕組みが「教師の資質の向上に関する中核的な仕組みとなることを望んでいる」と狙いを語り、研修履歴の記録や対話、奨励を実効的に機能させるためには「こうしたプロセスが関係者にとって過度な負担とならないように留意することが重要」と指摘した。

 最後に「中教審の重要なメッセージの一つは、学びに専念する時間を確保した一人一人の教師が、自らの専門職性を高めていく営みであると自覚しながら、誇りを持って主体的に研修に打ち込むことができる姿を実現するというもの。このためには、学校における働き方改革を進めていくことが重要であると思っている」と述べ、新たな研修制度を機能させる前提として、教員の働き方改革が必要だとの見方を示した。

 瀧本氏は、教員の学びについて、子供たちの前に立つときに、教員は、どんな発言をしようか、どういうふうに語り掛けようか、というところから考えるものだと思う。その意味で、教員は常日頃から学んでいくことを続けている。それを担保しているのが、(教員は『絶えず研究と修養に努めなければならない』と定めている)教特法21条。その意味で中教審の審議まとめで『自律的に学ぶ』などと述べられているのは、教特法の精神にもまったく合致している」と述べ、教員免許更新制を廃止して新たな教員研修制度を導入する改正案の方向性を大枠で評価した。

 今後、改正案の国会審議を通じて明らかにすべき内容としては、①期待する水準の研修とは何か②研修受講履歴にはどのような研修が記録されるのか③研修記録は教員の人事評価とどのように関係してくるのか④教員の多忙化が問題になっている今の学校で、教員が望んで学び続けることが本当に可能なのか--の4点を挙げた。

 佐久間氏は、教員免許更新制の廃止と教員研修の記録作成を義務付ける新制度の導入を組み合わせた改正案の枠組みについて、「教員免許更新制は、ただ削除し、すっきりと廃止にするべきだ。発展的解消として、別の何かを付け加える必要はない」と否定的な見解を示した。「今回は、教育職員免許法の改正だけにすることが学校や教員を励ますことになる。教育公務員特例法の改正は必要ない」と強調した。

 その上で、「法案を読むと、いきなり研修記録の義務化が登場する。誰のための、何のための記録なのか。なぜ記録が義務付けられなければならないのか、が分からない」と指摘。研修記録を義務化する場合には①末松信介文科相が説明した法案の提案理由や中教審の審議まとめには、研修記録義務化の目的は、教員自らが主体的・自律的・継続的に学び続けられるようにするためと説明されているので、その目的を法文の中に明記する②教員が勤務時間内に研修できるように、具体的な措置を急いで講じることを附帯決議などに明記する--の2点が必要だと述べた。

 その狙いについて「教員を管理統制するために記録を義務化させるのではなく、教員が主体的・自律的に学ぶ機会を保障するための記録なのだ、という目的を明確にすることが、本法の安定的運用のために極めて重要になる」「教員が心に余裕を持って子供に関われるようにすること、子供の学びを本当の意味で充実させていくためにも、教員自身が人間らしい生活を送れるようにすることが必要。そのためにも、研修が勤務時間内に行われるようになることが必要不可欠」と説明した。

 教員免許更新制の評価については、加治佐氏は「教師の学びの機会の拡大、大学による教師の資質能力の向上に対する関与の拡大に貢献するとともに、良質な学習コンテンツの形成、免許状更新講習の経験を生かした養成段階の教育の充実など、一定の成果を上げてきた。教育委員会と大学との関係が深化したことも重要な成果だ」と肯定的な側面を説明。

 一方で、議員との質疑では「文科省による調査や中教審でのヒアリングを行ったが、正直に申し上げて、ここまで評判が悪いと思っていなかった」「教員免許更新制は、当初予定してなかった問題が起こり、それに対応できなかった。その最大のものは教師の勤務環境が変わったこと。臨時的任用教員を高齢な人に頼らざるを得ない状況で、教員免許更新制が人手不足を招いたことが最も深刻だった」と、マイナス面も率直に指摘した。

 また、教員の質の保証に関連し、「教員免許更新制は当初は指導力不足教員への対応がクローズアップされたが、それだけではなく、教員免許が永遠に有効ではなく、10年に一度更新講習でリニューアルすることによって、教員の質を社会的に証明する側面があったと思う。今回その部分がなくなる。だからこそ、(研修履歴を記録する)新しい仕組みで国民に対して、日本の教員は一定の質があることを証明しなければいけない。それが新しい学びの姿の基本中の基本であると思う」と述べ、法改正の枠組みを評価した。

 一方、教員免許更新制について、瀧本氏は「免許状更新研修を10年ごとに受けるから教員の質が保証されると考えること自体が幻想だったと思う。教員には日常的にどんな研修をしていくかが求められる。人手不足につながったことも明らか」と否定的に述べた。

 佐久間氏は▽更新制の導入によって、10年に一度、学校教員は失職する可能性が生じた。教員の身分保障が大きく損なわれた▽生涯有効だったはずの教員免許が期限付きになり、その価値が下げられてしまった。これは意図せざる結果として、国が教員は前よりも信頼できなくなった、というメッセージを発信する結果になった▽教員の多忙化に拍車を掛けた▽60代、70代で教員免許を失効させる人が増えたことで、非常勤講師の人材源が失われ、教員不足を深刻化させた--と厳しく評価した。

 こうした参考人との質疑を受け、野党議員からは「(新しい研修制度に対する)懸念が払拭(ふっしょく)されるように、今後の委員会での審議や附帯決議を通じて努力していきたい」(菊田真紀子議員=立民)、「すっきり教員免許更新制の廃止のみをすべきだ」(宮本岳志議員=共産)などと、これから本格化する法案審議の争点としていく考えが示された。

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