コロナ禍で発表の場を 中高生が企画・運営する「全オン祭」

 コロナ禍で文化祭などの学校行事が制限される中、学生の表現・発信の場をつくるオンラインイベント「全国オンライン学生祭(全オン祭)」が4月2日から、YouTubeで配信されている。中高生が運営を一手に担う全オン祭は今年で2回目を迎え、教育系YouTuberの出演や、協賛・賛同する企業・団体とのコラボレーション企画などを実施。ウクライナ情勢について考えた作品など、社会と自分をつなげる発表もみられた。そんな全オン祭の運営メンバーである中高生に、2回目となる全オン祭に込めた思いを聞いた。

今の学生の思いがいろいろな形になって集まった
中高生が企画から運営、出演までを手掛けた全オン祭(YouTubeで取材)

 「自分の学校でも学園祭や文化祭が実施できず、時間を持て余していた。何かに打ち込みたいと思ったのがきっかけで携わったのが全オン祭。去年の1回目は大人の力を借りて、クオリティーも高かった。それもよかったけれど、逆に学生らしさからは遠ざかったのではないかという指摘が運営メンバーの中から挙がった。今回は当日の進行を出演者に任せきりにせずに、あえてフランクにやろうと意識した。進行が予定通りにいかずにちょっとした失敗があっても、それらも含めて学生らしさだと思う」

 全オン祭の収録を一通り終えて、運営メンバーの一人で高校3年生の引田光咲(みさ)さんは、昨年の1回目と今回の全オン祭の違いをそのように振り返った。今年は関西の高校生も運営メンバーに加わり、収録も大阪で行われた。秋ごろから始めたミーティングは全てZoomで、関東と関西の運営メンバーが初めて直接会えたのも収録の当日。準備段階では直接顔を突き合わせて話し合えないことから生じる連携の難しさも感じていたという。

 そうした経緯もあり、オープニングを飾ったトークショーでは、元高校教師であり、一人二役で教育現場の実情を紹介することで知られる、YouTuberの「学先生」がファシリテーターを務めながら、関東と関西の高校生がお互いのことをどう思っているかなどを率直に語り合い、オンラインでは埋められなかった距離を縮めるとともに、会場の雰囲気を盛り上げた。

 続く「全国に魅せろ!全オン祭ステージ」では、吹奏楽の演奏をはじめ、動画によるパフォーマンスが披露された。中でも「平和と共生」をテーマに200文字のエッセーを募った文芸部門では、ウクライナ情勢のニュースを見ながら数日後のテスト対策をしている自分自身を対比し、無関心であることの上に築かれた日本社会の平和との葛藤を描いた作品が最優秀賞に選ばれた。

 関西のメンバーとして今年初めて運営に関わった高校3年生の村山竜輝さんは「自分たちがやりたいことを映像に残せたのはもちろん、応募企画では、コロナ禍で全国の学生がどう思っているかを感じ取ることができた。文芸部門であえてこのテーマにしたのは、こういう時代だからこそ、ウクライナ侵攻に対して、日本の学生が考えていることを聞いてみたかったから。そうした今の学生の思いが反応して、いろいろな形になって集まったのはうれしい」と手応えを感じていた。

学生でもこれだけのものができる

 さらに、全オン祭には多数の企業や団体なども協賛・賛同に名を連ねており、多くのコラボレーション企画も生まれた。

 例えば、英会話教室を運営するイーオンとの企画「英語好きあつまれ!学生の想いをショートムービーに込めろ!」は、テーマに合わせて英語でプレゼンテーションした動画のコンテストで、審査員はイーオンの外国人教師が務め、英語力だけでなく、メッセージ性や動画での表現の面白さなどを競った。

 また、競技かるたの名人である川瀬将義さんが、競技かるたの普及に向けて運営している「Karuta Club」との企画では、「もしも百人一首に一首加えるなら、どんな歌を作る?」というテーマで、百人一首の101首目となる歌を募集。Karuta Club特別賞に輝いた作品「卒アルの 勇気を出して 見る寄せ書き 彼にとっては 『クラスメイト』か」は、卒業まで胸に秘め続けた恋の結末の場面で、あえて字余りを使うことで主人公の勇気を表現した。

 こうした協賛・賛同を呼び掛ける仕事も高校生自ら奔走した。「さまざまな会社に話をさせてもらう機会があったが、親や先生などとは違い、知らない大人と話すのは難しかった。アポイントのお願いをしてもなかなか返事が来ないと、現実の厳しさを思い知らされた。全オン祭は始まったばかりだが、この姿に共感していろいろな方が協力を表明してくれたときは、本当にありがたかった」と、「営業」を担当した中学3年生の上野友誠さん。

 収録中、クイズの解答動画がうまく再生されないなどの予期せぬトラブルにも見舞われた。しかしそんなときも、それぞれが機転を利かせて対応に当たった。全体の司会を務めた高校3年生のフチーロ由茉さんは「去年は先輩に言われて動いていたけれど、今年は自分からアイデアや指示を出して周りを見ないといけない立場。今年は10人くらいのコアメンバーが仕事を分担して、リーダーだけが負担を抱え込まない組織作りを目指した。収録の本番で何かトラブルが起きても、みんなが全体像を頭に入れているのですぐに対応できる。これは去年よりも強みにできた部分だと思う」と話す。その上で「どの企画を見ても面白い。自分たちが最初にイメージしたものが実現し、満足できる内容だと思う。学生でもこれだけのものができるということを証明できた」と、やりきった表情を浮かべていた。

 全オン祭の模様はYouTubeで配信されている。プログラムの詳細などは特設サイトから確認できる。

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