「個人として尊重」 こども基本法案が国会審議へ

 子供の基本的人権を保障し、置かれている環境に関わらず、健やかな成長を推進するための「こども基本法」案が4月4日、自民・公明両党から衆院に提出された。すでに政府から国会に提出されている「こども家庭庁設置法」案などと共に、子供施策の柱となることが期待されている。日本は1994年に国連の「子どもの権利条約」を批准したものの、これまで子供の権利や処遇について総合的に規定する法律がなかった。基本法案では同条約の精神にのっとり、子供の意見表明権など権利の擁護が大きく図られている。

 法案では、基本理念として、全ての子供について、「個人として尊重され、基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにする」「適切に養育されること、生活を保障されること、愛され保護されること等の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられる」「年齢及び発達の程度に応じ、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会、多様な社会的活動に参画する機会が確保される」「意見の尊重、最善の利益が優先して考慮される」としている。

 さらに「こどもの養育は家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識のもと、十分な養育の支援・家庭での養育が困難なこどもの養育環境の確保」「家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境の整備」が掲げられた。

 基本施策としては、政府に子供施策を総合的に推進するための大綱を定めることを義務付けた。大綱は子供施策の基本的な方針や重要事項を定めるとされ、少子化対策や子供・若者の育成支援、子供の貧困対策についても含むこととされている。この大綱の作成のために、こども家庭庁に設置される「こども政策推進会議」は、内閣総理大臣を会長とし、子供施策の重要事項の審議・実施のほか関係諸機関との調整を行う。大綱について内閣総理大臣は閣議の決定を求めることとされた。

 ほかに、国や地方自治体は子供施策を策定、実施する際には子供の意見を反映することなども盛り込まれた。

 法律の施行はこども家庭庁設置と同じ、来年4月を予定している。附則として国はこの法律の施行後5年をめどとして、こども施策の実施状況について検討を加えることとした。

 こども基本法を巡っては、与党内で当初、行政から独立した立場で子供の権利や利益を守るために、子供の代弁者として、専門的な見地から法制度の改善の提案や勧告ができる第三者機関の設置が議論されたが結局、提出法案には盛り込まれなかった。

自民党と公明党が国会に提案した「こども基本法案」の概要

【目的】
日本国憲法および児童の権利に関する条約の精神にのっとり、
・次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、
 自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ
・こどもの心身の状況、 置かれている環境などにかかわらず、その権利の擁護が図られ、
 将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、
〇こども施策を総合的に推進すること

【定義】
「こども」…心身の発達の過程にある者
「こども施策」…·①~③の施策その他のこどもに関する施策・これと一体的に講ずべき施策
新生児期、乳幼児期、学童期および思春期の各段階を経て、おとなになるまでの心身の発達の過程を通じて切れ目なく行われるこどもの健やかな成長に対する支援
②子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現に資する就労、結婚、妊娠、出産、育児等の各段階に応じた支援
③家庭における養育環境その他こどもの養育環境の整備

【基本理念】
①全てのこどもについて、個人として尊重されること・基本的人権が保障されること・差別的取り扱いを受けることがないようにすること
②全てのこどもについて、適切に養育されること・生活を保障されること・愛され保護されること等の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること
③全てのこどもについて、年齢および発達の程度に応じ、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会・多様な社会的活動に参画する機会が確保されること
④全てのこどもについて、年齢および発達の程度に応じ、意見の尊重、最善の利益が優先して考慮されること
こどもの養育は家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、十分な養育の支援・家庭での養育が困難なこどもの養育環境の確保
⑥家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境の整備

【責務等】
〇国、地方公共団体の責務
〇事業主の努力 (雇用環境の整備)・国民の努力(こども施策への関心と理解等)

【白書・大綱】
年次報告(白書)
こども大綱の策定
 (※少子化社会対策/子ども・若者育成支援/子どもの貧困対策の既存の3法律の白書・大綱と一体的に作成)

【基本的施策】
〇施策に対するこども等の意見の反映
〇支援の総合的・一体的提供の体制整備
〇関係者相互の有機的な連携の確保
〇この法律・児童の権利に関する条約の周知
施策の充実および財政上の措置

【こども政策推進会議】
〇こども家庭庁にこども政策推進会議を設置。以下の事務を担当。
大綱の案を作成
②こども施策の重要事項の審議・こども施策の実施を推進
③関係行政機関相互の調整
 等
〇会議は、会長(内閣総理大臣)および委員(こども政策担当の内閣府特命担当大臣、内閣総理大臣が指定する大臣)をもって組織

【附則】
□施行期日 令和5年4月1日
□検討 国は、この法律の施行後5年をめどとして、法律の施行状況およびこども施策の実施状況を勘案し、こども施策が基本理念にのっとって実施されているかどうか等の観点からその実態を把握し、および公正かつ適切に評価する仕組みの整備その他の基本理念にのっとったこども施策の一層の推進のために必要な方策について検討
 ⇒法制上の措置その他の必要な措置を講ずる

 ※太字は、自民・公明両党が国会提出にあわせて作成した資料で強調されている部分。

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