特別支援・ICT「教員の資質能力の柱」 文科省、研修指針を改訂

 教員免許更新制を廃止し、新たに教員研修の記録作成を義務付ける法改正案について、衆院文科委員会は4月6日、集中的な審議を行い、与野党の論戦が本格化した。文科省は席上、法改正に合わせて、教員の資質向上に関する指針を改訂するとともに、各教育委員会が教員研修の記録を作成する際のガイドラインを今年夏に策定する考えを表明した。教員の資質向上に関する指針には、これまでの学習指導や生徒指導などに加え、特別な配慮と支援が必要な子供への対応、ICTデータ利活用などを教員が持つべき資質・能力の新たな柱として明記する。研修記録のガイドラインでは、教委が実施する研修のほか、学校ごとの校内研修や研究事業など研修として記録すべき事項の例示を行う。期待される水準の研修を受けていないと判断する際の具体例や、新たな研修制度における校長の役割などもガイドラインに盛り込む考えを示した。

衆院文科委で答弁する末松文科相

 審議の対象となったのは、教員免許更新制を今年7月に廃止する教育職員免許法の改正案と、来年4月から教員一人一人の研修記録の作成を教委などの任命権者に義務付ける教育公務員特例法(教特法)の改正案。与野党から計8人の議員が質疑を行い、末松信介文科相と文科省幹部が答弁した。

 教員の資質向上に関する指針は、教員に研修を受ける機会を保障した教特法22条に基づき、文科相が告示するもので、各教委が実施する教員研修の基本的な方向性を示す。同法では「校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針」とされている。

 今回の法改正に合わせ、藤原章夫・総合教育政策局長は、この指針について、教師に求められる資質能力の再定義を巡る中教審の議論を踏まえ、「学習指導、生徒指導等に加え、特別な配慮と支援が必要な子供への対応、ICTデータ利活用等を資質能力の柱として明記する」と、改訂する方針を表明。特別支援教育やICTデータの利活用を、全ての教師に求められる基本的な資質能力として位置付けていく考えを明らかにした。

 改訂の内容については「社会の変化に対応した研修内容を設定すること、研修等に関する記録を活用した、対話に基づく資質向上に関する指導助言等の基本的な考え方、研修受講に課題のある教師への対応、研修の厳選・重点化を含む効果的・効率的な実施などについて新たに規定することを考えている」と説明した。

 ガイドラインは、指針の改訂を踏まえ、各教委に具体的な取り組みの事例などを紹介することが目的となっている。ポイントの一つは、法改正案が教特法第22条の5第2項第4号で記録すべき研修として「当該校長及び教員が行った資質の向上の取り組みのうち、当該任免権者が必要と認めるもの」としている規定を、具体的にどのように解釈したらいいかという点になる。4月1日に同委員会で行われた参考人質疑でも、内容が不明確などと懸念が示されていた。

 この点について、藤原局長は「市町村教育委員会が実施する研修、あるいは教職員支援機構が実施する研修、さらには、例えば、学校ごとに主題を設定した上で、年間を通じて組織的に行う研究活動のような、一定の校内研修や研究事業、こうしたものなどについて、教育委員会の過剰な負担とならないように留意しつつ、記録すべき事項について例示したい」と説明。

 中教審の審議などで取り上げられた、学校現場での教員の学びについては、「資質向上のための取り組みには、教師同士の自主的な勉強会等も含め、多様な内容・スタイルの学びが想定される。このような自主的な勉強会をはじめ、勤務時間外のさまざまな課題も記録の対象から除外するものではないが、都道府県教育委員会の責任において、しっかりと判断をしていくことが必要と考えている。そうした基本的な考え方について、ガイドラインで示していきたい」と答弁。学校現場での教員の学びがどのような範囲まで教員研修として記録される対象になるかは、各教委の判断に委ねる考えを示した。

 ガイドラインでは「期待される水準の研修を受けていると認められない」教員に、職務命令として研修を受講させるケースの判断基準についても盛り込まれる。

 藤原局長は「校長等管理職が研修の受講についての指導助言を繰り返し行ったにもかかわらず、期待される水準の研修を受けているとは到底認められない場合など、やむを得ない場合には、職務命令として研修を受講させる必要もあると考えている。このような基本的考え方を指針で示すとともに、具体的にどのような場合に期待される水準の研修を受けているとは到底認められないと判断するべきかについては、教育委員会が適切に対応できるよう、文科省でガイドラインを策定する」との考え方を表明した。

 この部分のガイドラインの内容について「例えば、合理的な理由なく、法定研修や教育委員会が定めた教員研修計画に基づき、全教員を対象にした研修等に参加しない場合、あるいは特段の支障がないにもかかわらず、必要な校内研修に参加しない場合、あるいは、例えば、ICT活用指導力など特定分野の質の向上に強い必要性が認められるにもかかわらず、管理職等が受講を促してもなお相当の期間にわたり、合理的理由なく研修を受講しない場合などについて、『期待される水準の研修を受けているとは到底認められない場合』として例示をすることを考えている」と、検討状況を説明。例えば、ICTへの苦手意識などから研修を避け続ける教員がいた場合には、職務命令として研修の受講を求めることを想定しているとみられる。

 ガイドラインでは、新たな研修制度における校長の役割についても明確化する考えを示した。藤原局長は「今回の改正では、教育委員会に資質の向上に関する指導助言等を行うことを義務付けているが、実際は校長と管理職が、教員育成指標、教員研修計画を踏まえつつ、当該記録を活用して所属校の教師に対し、資質の向上に関する指導助言等を行うこととしており、校長の役割は極めて重要になる」と説明。

 続けて「指針やガイドラインにおいて、校長の役割を明確化し、教育委員会が定める教員研修計画に、当該役割を踏まえた適切な指導助言等の方法を定めるようにすること。教育委員会において校長に特化した育成指標を策定し、それに基づき教育長等が校長への指導助言を行うこと。それから、国による新任校長向けの講習動画の配信や、オンラインフォーラムの開催、全校長向けの研修動画を含む必要な情報等を集約した特設サイトの開設などにより、校長の資質の向上に努めてまいりたい」と、校長の資質向上を重視していく考えを示した。

 こうした研修を巡る指針の改訂やガイドラインの策定を踏まえ、末松文科相は「これまで日本型学校教育が世界に誇るべき成果を上げてきたのは、子供たち自身の学びに対する意欲や関心だけでなく、子供のためであれば頑張るという、教師の存在があった。一方、コロナ禍、ウクライナ情勢、経済の不安定など、さまざまな分野で予測のできない非連続的な変化が起こっていく中で、教員や学校が変化に背を向けるのではなく、訪れる変化を前向きに捉えることが大変重要だと思う」と指摘。

 教員へのメッセージとして「教員自身が継続的に新しい知識や技能を学び続けていくことで、子供一人一人の学びを最大限に引き出す質の高い指導が可能となる。加えて、教員自身がいっそうやりがいを感じて、教職生涯がより充実したものになると考えている。高度専門職業人としての教員の地位を高め、教員が誇りをもって働くことができる環境整備を可能な限り整えていきたい」と述べた。

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