失効免許の再授与しやすく 更新制廃止法案、衆院文科委で可決

 衆院文部科学委員会は4月8日、教員免許更新制を廃止し、新たに教員研修の記録作成を義務付ける法改正案を賛成多数で可決した。文科省は、改正法が施行される7月1日時点で有効な教員免許状について、「特段の手続きがなくても有効期間のない免許状として、教壇に立つことが可能となる」と確認。更新講習を受けないまま失効してしまった教員免許状についても、都道府県の教育委員会が定める申請書など必要書類を提出すれば「再授与を受けることが可能」であり、その際の事務手続きの簡素化を検討する考えを明らかにした。議決にあたり、同委は、教員研修が教員の負担増にならないよう配慮することなどを求めた7項目の附帯決議を採択した。

答弁する末松文科相

 可決されたのは、教員免許更新制を今年7月に廃止する教育職員免許法の改正案と、来年4月から教員一人一人の研修記録の作成を教委などの任命権者に義務付ける教育公務員特例法(教特法)の改正案。文科省はこれまでの審議で、今年夏をめどに、教特法に基づく教員研修の指針を改訂し、特別な配慮と支援が必要な子供への対応、ICTデータ利活用などを教員が持つべき資質・能力の新たな柱として加えることや、研修記録の作成を義務付けられる教委向けに記録すべき研修の内容を例示したガイドラインを示すことを明らかにしている。

 この日の質疑で、文科省の藤原章夫・総合教育政策局長は、教員免許更新制を廃止する教育職員免許法の改正案が今年7月に施行されて以降、教員が持つ現行の教員免除状がどう取り扱われるかを聞かれ、「特段の手続きがなくても有効期間のない免許状として、更新講習の受講を必要とせず、教壇に立つことが可能となる。(旧免許状で休眠状態になっている場合も)同様になる」と説明。さらに、2009年3月までに授与された旧免許状と、同年4月以降に有効期間10年で授与された新免許状について、「いずれについても、有効期間の定めのない免許状となり、7月1日以降は法令上、全く違いのないものとなる」と述べた。

 教員免許更新制の下で失効した免許状の再授与については、「法律に基づく有効な制度の下で更新講習を受講しなかったことにより失効しているものであり、自動的に復活することはない」とした上で、「ただし、申請書のほか、教員免許状の授与に必要な単位等の修得状況の証明書など、各都道府県教育委員会が定める所定の書類をそろえて申請を行うことで、都道府県教育委員会から再授与を受けることが可能であると考えている」と指摘。免許更新制の下では、失効した免許状の再授与には30時間の更新講習を受けることが前提となっていたが、今年7月に改正法が施行されて以降は、必要書類を提出することによって再授与が可能になると説明した。

 さらに、都道府県教委が行う再授与の手続きについて、「例えば、過去に免許状が授与された事実が確実に証明できる場合、一部の書類を省略するといったような余地もあろうかと考えている。都道府県教育委員会と具体的な検討を進めていきたい」と述べ、一部の教委が再授与にあたって必要としている単位修得証明書の提出など、事務手続きの簡素化を検討する考えを示した。いずれも吉川元議員(立憲民主)の質問に答えた。

 教員不足に悩む自治体には、更新制に伴う免許状の失効が退職教員などによる非常勤講師の確保などを難しくしているとの見方もあり、文科省では「更新講習の負担がなく、失効した教員免許状の再授与が受けられるようになれば、一部の自治体にとっては教員確保に一定の意味があるのではないか」とみている。

改正案を賛成多数で可決した衆院文科委(衆議院インターネット審議中継)

 こうした質疑に続き、衆院文科委は、教育職員免許法と教特法の改正案について採決を行い、自民、公明、立憲民主、維新、国民民主の賛成多数で可決した。

 さらに可決した改正案に対し、自民、公明、立憲民主、国民民主の4会派が提出した附帯決議を賛成多数で議決した。

 附帯決議では、改正案が施行される際に文科省や各教委が配慮すべき内容を7項目にわたって列記した。まず、教特法改正案に盛り込まれた、新しい研修制度で校長など学校管理職が教員に行う指導助言について、教員の意欲や主体性を前提に「教員の意向を十分にくみ取って実施する」ことを求めた。職務として行う研修については勤務時間に実施し、教員自身に費用負担がないことを周知するよう文科省に促している。

 また、新しい研修制度が教員の多忙化や負担増にならないよう留意する必要を強調。校長など学校管理職が教員に行う研修の指導助言は人事評価とは趣旨が異なることを周知することも求めた。教師不足への対応を念頭に、教員免許更新制の下で失効した免許状の再授与にあたり、事務手続きの簡素化を図り、休眠状態となっている教員免許状の保有者にも周知することも指摘した。

 この附帯決議を受け、末松信介文科相は「趣旨に十分留意して、対処してまいりたい」と応じた。

 教育公務員特例法および教育職員免許法の一部を改正する法律案に対し、衆院文部科学委員会で議決された附帯決議の内容

 政府および関係者は本法の施行にあたっては次の事項について、特段の配慮をすべきである。

(1)校長および教員に対して行う資質の向上に関する指導助言等については、教員の意欲、主体性と調和したものとすることが前提であることから、指導助言者は十分に当該教員等の意向をくみ取って実施すること。

(2)オンデマンド型の研修を含めた職務としての研修は、正規の勤務時間内に実施され、教員自身の費用負担がないことが前提であることについて、文部科学省は、周知徹底すること。

(3)本法による新たな研修制度が円滑に機能するよう、新制度への移行に向けた支援の充実を図るとともに、その周知に万全を期すこと。また、教育委員会等は、教員の資質の向上につながり、子供の実態に即して、教員が必要とする研修を実施すること。

(4)文部科学省および各教育委員会は、本法の施行によって、教員の多忙化をもたらすことがないよう十分留意するとともに、教員が研修に参加しやすくなるよう、時間を確保するため、学校の働き方改革の推進に向けて、実効性ある政策を講ずること。また、任命権者による教員の研修等に関する記録の作成に当たって、当該教員から研修の報告等を求める場合には、負担増とならないように留意すること。

(5)任命権者による教員の研修等に関する記録の作成については、各学校で実施する校内研修、授業研究および教育公務員特例法第22条第2項に規定する本属長の承認を受けて勤務場所を離れて行う研修も、任命権者が必要と認めるものとして、その記載対象とするものとすること。

(6)地方公務員法の規定により、現在行われている人事評価は、職務を遂行することにあたり、発揮した能力および上げた業績をもとに実施されており、本法による研修等に関する記録の作成および資質の向上に関する指導助言等は、この人事評価制度と趣旨目的が異なることを周知すること。

(7)教師不足を解消するためにも、改正前の教育職員免許法の規定により、教員免許状を失効している者が免許状授与権者に申し出て、再度免許証が授与されることについて、広報等で十分に周知を図るとともに、都道府県教育委員会に対して、事務手続きの簡素化を図るよう周知すること。また、休眠状態の教員免許状を有する者の取り扱いについて周知徹底すること。

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