春は起立性調節障害に要注意 体と心を理解して対応を

 自律神経のバランスが乱れ、朝に起きられなかったり、頭痛や倦怠(けんたい)感を伴ったりするなどの症状が見られる「起立性調節障害(OD)」。ホルモンバランスが変化する思春期の子どもに多くみられ、悪化すると不登校の引き金になることもある。急に気温が上昇したり、新しい学校生活でストレスをためやすかったりする4~5月は特に注意が必要だ。群馬県高崎市で地域のかかりつけ医として、子どもの起立性調節障害の治療にあたる星野綾美五百山クリニック院長は、適切に対処すれば起立性調節障害は改善できる身近な疾患であり、周囲の大人には、その子の体と心の状態を理解した対応や環境づくりが求められると強調する。

起立性調節障害は治療・改善できる身近な疾患

 起立性調節障害は自律神経のバランスが崩れることで引き起こされる疾患の概念で、1950年代ごろから日本やドイツで提唱されるようになった。心臓や血管を調節する働きがある自律神経が乱れると、脳をはじめとするさまざまな臓器に必要な血流量が行き渡らなくなる。すると、動悸(どうき)や頭痛、めまい、立ちくらみといった症状だけでなく、「朝起きられない」「寝つきが悪くなる」といった生活面への影響も出てくる。

 特に、第二次性徴でホルモンバランスが大きく変化し、体も成長する思春期を迎える小学校高学年から中学生で、起立性調節障害を発症する割合が高く、中学生の1割程度が症状を自覚しているという調査研究もあるそうだ。一方で、起立性調節障害は個人差も大きく、症状にばらつきもあることから、診断がつきにくいこともあるという。

これまで多くの子どもの起立性調節障害の診療に当たってきた星野院長(本人提供)

 星野院長は「現在は日本医師会の小児・思春期診療マニュアルでも起立性調節障害が解説されており、小児科や内科をはじめ、症状に応じて多くの診療科が連携して対応できるようになっている。まずはかかりつけ医などに相談してみてほしい」と話す。

 起立性調節障害は適切な治療や配慮をすれば、1年程度で症状が改善することも多い。ある程度治療が進めば、子どもが血圧や脈拍をみながら、少し休むなどの判断をして、体調をセルフコントロールすることも可能だ。

不登校の原因になることもある起立性調節障害

 そんな起立性調節障害だが、気になる指摘もある。

 起立性調節障害に関する啓発を行う起立性調節障害改善協会(https://odod.or.jp/)が2月に、起立性調節障害の当事者や家族76人に聞いたウェブ調査で、起立性調節障害によって何が大変だったかを尋ねたところ、「高校の単位取得が難しい」「学校へ行けない、朝起きること、進路、生きること」など、生活リズムの乱れから、学業や学校生活への影響についての声が寄せられた。

 実際に、起立性調節障害が悪化して学校に行けなくなり、不登校を経験する人もかなり多いという。「大人は心配しているだけでも、子どもは体調が追い付かない中で、先生や保護者の期待に応えようと頑張っている。そんな子どもにとっては、褒められるような存在から急に厄介者になってしまったような気持ちになるケースが多く、そこから来る不安や抑うつ状態が悪化因子になることもある」と星野院長。

 特に、4月から5月にかけては、気温が急上昇することもあり、自律神経がうまく機能しにくくなりやすい。ただでさえ新年度を迎え、新しい学校生活でストレスを感じて不登校が増える時期とも重なるため、注意が必要だ。

子どもが過ごしやすい環境づくりが大切

 では、子どもの起立性調節障害を想定し、教員や保護者はどう接していけばいいのだろうか。

 星野院長は「例えば、起立性調節障害の症状が出ていて、宿題ができなかった日もあるだろう。そんなときに先生がその子の体や心の状態を理解して、体調がいいときにリベンジを認めるなどして、単にその子が『さぼっている』『やる気がない』といった見方をしないようにできるかどうか。学級に数人はいるかもしれないと想像して、そうした子どもたちが過ごしやすい教室にしてほしい」とアドバイスする。

 また、学校生活の中では、上着着用のルールなどを厳格にせず、そのときの気温や体調に応じて自分で判断してよいことを促すことや、席替えの際はエアコンやストーブの近く、窓際などの気温の変化が激しいところなどに、起立性調節障害の傾向がある子どもを座らせないようにするといった、ちょっとした配慮も効果的だという。

 「体調が悪いとその子が感じたら、少し横になったり、しゃがんだりすることを周囲に言いやすい環境をつくることが大切。体調がよくなれば普通の生活ができるので、大げさにしたり、原因を追究したりせずに、『何かあれば助けるから大丈夫』と大人が余裕を見せて、子どもを安心させるような対応を心掛けてほしい」と星野院長。例えば、翌日にどこかへ出掛ける用事があったとしても、「今日は体調が悪かったので大事を取って休ませる」のではなく、「普段通り出掛けて、もしも体調が悪くなればその場で休ませる」といったように、子どもの行動をできるだけ制限させず、起立性調節障害であることに子どもが責任を感じないようにすることが重要だと呼び掛ける。

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