「こども家庭庁設置法案」など子供4法案論戦スタート 衆院本会議

 「こども家庭庁設置法案」など内閣と与党、野党から提案された子供関連の4法案が4月19日、衆院本会議で審議入りした。どの法案も国連の「子どもの権利条約」の理念を国内法として初めて明文化し、子供の権利を最大限保障した内容が盛り込まれている。同時に子供施策を巡る省庁間の縦割り排除も掲げている。審議初日は法案の趣旨説明と質疑が行われた。

子供法案が審議入りした衆院本会議

 審議に入ったのは内閣提案の「こども家庭庁設置法案」のほかに、自民・公明提案の「こども基本法案」、立憲民主提案の「子ども総合基本法案」、日本維新の会提案の「子ども育成基本法案」。

 各法案の趣旨説明の後、質疑に入った。

 最初に内閣提出の「こども家庭庁設置法案」について、「なぜ省ではないのか」という質問があった。これに対して、野田聖子少子化担当相は「子供や若者に関する施策は、文科省だけではなく、警察庁、総務省、法務省、厚労省、経産省など、さまざまな省庁が関わっている。このため、政府を挙げて政策を強力に推進するためには、各省庁より一段高い立場から総理のイニシアチブのもと、政府部内の総合調整を行う権限がなければならない」ためであると答弁した。岸田文雄首相も「政策を強力に推進できるのは総理大臣直属の機関だけだ」とした。

 立憲民主案や維新案では福祉機能のほかに文科省からの教育機能の統合が盛り込まれているが、「こども家庭庁設置法案」では教育機能は文科省に残された。これについて岸田首相は「文科省所管の教育など学びに関する行政については、児童福祉など育ちにかかる行政と相互に関連する側面があるものの、それぞれの目的を追求する中で専門性を高めつつ、相互にしっかり調整し、密接に連携する方が、政府全体としての政策の充実、質の向上になる。就学前の子供にとって一番大切なことは、施設類型を問わず、しっかりとした教育保育がなされることであると考え政府案とした」と答えた。さらに「こども家庭庁は就学前の全ての子供の育ちの補償、いじめ、不登校等について、文科省との緊密な連携を図っていく」とした。

 子供施策の予算として立憲民主案ではGDPの3%が充てられるとしている。これに関連して、こども家庭庁のもとでの子供施策の予算を問われた岸田首相は「これまでもさまざまな子育て、教育支援を充実させてきた。引き続き、こども家庭庁が司令塔となって、子供の視点に立って政策の充実にしっかりと取り組んでいく必要があると考えている。財源については社会全体でどのように負担していくのかという観点から、幅広く検討していくことが重要であり、子供施策に関する予算を体系的に取りまとめ、その上で将来的に予算の倍増を目指していきたい」と期限は明示せずに子供予算の倍増を明言した。

 いわゆる子供コミッショナーの設置を法案に盛り込んだ立憲民主の法案提出者、城井崇議員は「子供コミッショナーは子供の権利が擁護されないケースを想定し、政府から独立した立場から子供の権利の擁護の状況を調査チェックするとともに、必要に応じて政府に対して勧告を行うことが必要であると考え設置することとした」と説明。一方、岸田首相は「子供コミッショナーについては、与野党においてさまざまな議論や提案がなされていると承知しており、その議論を注視している。政府としては、昨年12月に閣議決定した基本方針に基づき、子供の権利利益の擁護を任務とするこども家庭庁のこども家庭審議会等で有識者等の意見を聞くことにより、公平性、透明性を確保しつつ、その最善の利益を実現できるようしっかりと取り組んでいく」と答えた。

 この日の質問者は順に、伊東良孝議員(自民)、森山浩行議員(立民)、堀場幸子議員(維新)、中野洋昌議員(公明)、浅野哲議員(国民)、塩川鉄也議員(共産)。

 政府提出の「こども家庭庁設置法案」と、自民・公明、立憲民主、日本維新の会の各党が提出した子供関連法案について、4月19日の衆議院本会議で行われた趣旨と概要の主な説明は次の通り。

政府提出「こども家庭庁設置法案」

 説明者:野田聖子少子化担当相

【趣旨】

 この法律案は、子ども政策をわが国社会の真ん中に据え、子どもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、子どもを誰1人取り残さず健やかな成長、社会全体で後押していくため、強い司令党機能を有し、子どもの最善の利益を第一に考え、常に子どもの視点に立った政策を推進する子ども家庭庁を設置しようとするものである。

【概要】

 こども家庭庁の設置、任務、所掌事務について。こども家庭庁は、こども家庭庁長官を長として内閣府の外局として設置する。任務は、子どもおよび子どものある家庭の福祉の増進、保健の向上、子どものある家庭における子育てに対する支援、子どもの権利利益の擁護に関する事務を行うこと。そのために、子育て支援給付、保育、虐待の防止などを内閣府や厚労省から移管するほか、子どもと子育て支援に関連する政策の企画立案、少子化の克服に向けた基本的な政策の企画立案や総合調整を所掌事務とする。

 こども家庭庁には、こども家庭審議会、少子化社会対策会議、子ども若者育成支援推進本部、子どもの貧困対策会議を置く。施行日は2023年4月1日とする。

自民・公明両党提出「こども基本法案」

 説明者:木原稔衆院議員(自民)

【趣旨】

 これまで待機児童対策や幼児教育、保育の無償化、児童虐待防止対策の強化などに取り組んできたが、少子化の進行、人口減少に歯止めがかかっていない。児童虐待相談や不登校の件数が過去最多になるなど、子供を取り巻く状況は深刻で、コロナ禍が拍車を掛けている。このような危機的な状況を踏まえると、常に子供の最善の利益を第一に考え、子供に関する取り組みや政策をわが国社会の真ん中に据えて強力に進めていくことが急務。このため、政府のこども家庭庁設置法案と相まって、子ども施策の基本理念や基本となる事項を明らかにし、子ども施策を社会全体で総合的かつ強力に実施していくための包括的な基本法が必要である。

【概要】

 日本国憲法と「児童の権利に関する条約」の精神にのっとり、次代の社会を担う全ての子どもが自立した個人として等しく健やかに成長することができ、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会を目指すことを明示し、それに向けて子ども施策を総合的に推進することを目的としている。

 子ども施策の基本理念として「児童の権利に関する条約」の4原則である「差別の禁止」「生命、生存および発達に対する権利」「児童の意見の尊重」「児童の最善の利益」に相当する内容を想定。子供の養育、子育てについての基本理念をそれぞれ定めている。

 年次報告および「こども大綱」の規定を設ける。少子化社会対策基本法、子ども・若者育成支援推進法、子どもの貧困対策の推進に関する法律における国会報告や大綱を束ねることにより、関係する施策に横串を通し、行政の事務負担の軽減を図る。閣僚会議として「こども政策推進会議」を設ける。基本的施策として、子ども施策に対する子どもの意見の反映、支援の総合的かつ一体的な提供のための体制、関係者相互の有機的な連携の確保、子ども施策の充実および財政上の措置などを想定している。こども家庭庁設置法案の施行に合わせ、2023年4月1日から施行する。

立憲民主党提出「子ども総合基本法案」

 説明者:城井崇衆院議員(立憲民主)

【趣旨】

 子どもの最善の利益が図られ、その人権が保証され、社会全体で子どもの成長を支援する社会を実現するため、「児童の権利に関する条約」の理念にのっとり、子ども施策に関して基本理念を定め、国との責務を明らかにするとともに、子ども施策基本計画などの策定、子ども施策の基本となる事項、子どもの権利擁護委員会および都道府県などにおける合議制の機関ならびに「子ども省」の設置など、子ども施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項を定める。

【概要】

 子供施策とは、子育て、教育、福祉、保健、医療、雇用、少子化対策、そのほかの分野における子どもに関する施策を言い、若者を対象とすることが適当である場合にあっては、若者に関する施策も含む。基本理念として、全ての子供の最善の利益が図られ、その人権を保障することや、子どもの意見表明権など「児童の権利に関する条約」の4つの原則を余すところなく盛り込んでいる。

 子ども施策の基本となる事項として、子ども施策のための予算確保、すなわち子ども関連政策の支出を倍増して国内総生産(GDP)比3%以上とすること、子どもの生活を経済的に安定させるための施策として児童手当を高校卒業相当年齢までの全ての子供について支給すること、子どもの貧困率の低下についての具体的な数値目標の設定などを盛り込んでいる。妊娠、出産、育児および子どもの成長に関する切れ目のない支援、虐待の防止、小学校就学前の子どもに対する教育および保育の充実、ヤングケアラーの負担軽減、特別の支援を必要とする子どもが学び成長するための支援および環境の整備を定める。

 内閣府の外局として「子どもの権利擁護委員会」、いわゆる子どもコミッショナーを設置。文科省の初等中等教育、幼児教育を含め、一元的につかさどる「子ども省」の設置する。この法律は公布日から施行する。

日本維新の会提出「子ども育成基本法案」

 説明者:三木圭恵衆院議員(日本維新の会)

【趣旨】

 子どもが抱えている多種多様な問題に適切かつ臨機応変に対応するために、これまで分野ごとに分かれていた各省庁の取り組みを一体化し、教育と福祉が一緒になって力を合わせ、子どもを育む環境を整備することをもって、いじめ、虐待、貧困など諸課題の解決を進めるとともに、全ての子どもたちの幸福な未来を保証するため、また子供の保護者が安心して子どもを育てることができるための法律である。

【概要】

 時代の社会を担う子どもの育成への支援が日本の社会の未来への投資であるとの認識の下、子どもの教育、福祉などに関する政策にかかる縦割り行政の弊害を除去し、子どもの教育、福祉等にかかる施策を一体のものとして実施することにより、子どもの育成を支援する社会を実現するため、子どもの育成に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としている。

 基本理念として、子どもの育成に関する施策は、教育を基軸として、これと子供の福祉にかかる施策と適切に組み合わせて一体的に行われなければならないことを定める。

 国の責務、年次報告、子どもの育成に関する基本的な計画等について定めるとともに、子どもの育成に関する重要事項の審議や施策の実施の推進を行う機関として、内閣府に「子ども育成会議」を置く。

 子どもの教育と福祉にかかる施策を適切に組み合わせ、一体的に行うべき施策の事務をつかさどる行政組織として「教育子ども福祉省」を設置する基本方針を定める。この法律は公布日から施行する。

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