教員免許更新制廃止、参院で論戦開始 休眠免許も「期限なし」に

 先に衆議院を通過した教員免許更新制の廃止と新たな教員研修制度を定める法改正案について、国会は4月20日、末松信介文科相が参議院本会議で趣旨説明を行い、参議院での論戦が始まった。末松文科相は、失効や休眠状態の教員免許状の扱いについて、「いわゆる休眠状態も含め、現に有効な教員免許状については、有効期間のない免許状となる。一方、教員免許状が失効した者は、自動的に復活することはないが、再申請をすれば、有効期間のない免許状の再授与を受けることが可能」と説明。教員確保に向け、「免許状が休眠状態、または失効している人が、教師として活躍してもらえるようにすること、教育界内外から人材を確保することは大変重要」と述べ、法施行後、教員免許状の扱いや社会人向けの特別選考について、周知広報を強化する考えを示した。

 参議院での審議が始まったのは、教員免許更新制を今年7月に廃止する教育職員免許法の改正案と、来年4月から教員一人一人の研修記録の作成を教委などの任命権者に義務付ける教育公務員特例法(教特法)の改正案。

参議院本会議で趣旨説明を行う末松文科相(参議院インターネット審議中継)

 末松文科相は、衆議院での趣旨説明と同じく、社会が急速に変化する中で「教師自身も高度な専門職として、新たな知識技能の習得に継続的に取り組んでいく必要が高まっている」と指摘。「教師の学びの在り方もまた変化することが必要。新たな教師の学びの姿として、主体的な学び、個別最適な学びと協働的な学びなどが求められている」と強調した。

 続く質疑では、休眠状態となっている教員免許状の扱いについて、末松文科相は「いわゆる休眠状態も含め、現に有効な教員免許状については、本法案の施行日となる本年7月1日をもって、有効期間のない免許状となる」と説明。失効した免許状については「本法律の施行日前に更新を行わなかったことにより、教員免許状が失効した者は、自動的に復活することはないが、再申請をすれば、有効期間のない免許状の再授与を受けることが可能となる。このため、円滑な再授与を可能とする手続きの在り方について、都道府県教育委員会とも検討を進める」と述べ、失効した免許状の再授与に必要な手続きの簡素化を検討する考えを改めて示した。勝部賢志議員(立憲民主)の質問に答えた。

 さらに、教員不足への対応を念頭に、休眠状態や失効している教員免許状の保持者を含めた社会人への働き掛けについて、末松文科相は「免許状が休眠状態、または失効している人が学校現場に携わりたいという意欲を有するようになった場合などに、教師として活躍してもらえるようにすること、教育界内外から人材を確保することで、多様な専門性を有する質の高い教職員集団を実現することは大変重要」と強調。「法案成立の暁には、文科省としても、ホームページやSNSなど、あらゆる機会や手段を通じて、法改正の趣旨、目的や施行後の免許状の扱い、社会人向けの特別選考の実施状況について、分かりやすく周知広報を行っていく」と、失効・休眠状態になっている教員免許保持者や、社会人へのアプローチに意欲を示した。伊藤孝恵議員(国民民主)の質問に答えた。

 これに先立ち、末松文科相が4月15日の閣議後会見で明らかにした文科省の調査によると、教員免許更新制の下で30時間の講習の受講が必要となる更新手続きを行わず、免許が失効した現職教員は、2020年度で1716人。このうち、退職者は1133人だった。その内訳は、失効時点で65歳以上だった人が1066人、65歳未満の人は67人となっている。

 一方、休眠状態となっている教員免許保持者について、末松文科相は「把握が難しいのは、資格だけ取って一度も教壇に立ったことがない、いわゆるペーパーティーチャー。毎年20万件ぐらい授与されているので、相当いるはず」と説明している。

 文科省によると、休眠状態の教員免許保持者については、これまで実態調査がなく、正確な人数は把握できない。「1年間にだいたい20万件の教員免許が授与されていて、その中には1人が2つ以上の免許を持っているケースもある。だいたい年間10万人くらい免許を持っている人が登場してくるが、そのうち採用されて実際に教員になる人は毎年3万人か4万人。残る6万人から7万人の教員免許状は休眠状態になっている。それが40年分積み重なっていると考えれば、何百万人の免許ホルダーがいることになる」という。

 同省では「そうした休眠状態の教員免許保持者にとっては、今回の法改正で教員免許更新制による30時間の講習は法的な義務ではなくなるので、そういう人が教壇に立つチャンスは、より広がることにはなる」(総合教育政策局教育人材政策課)としている。

 20日の参議院本会議では、新しい教員研修制度に盛り込まれている、教員研修の記録作成の義務付けが、教員に対する管理強化につながるのではないか、との懸念についても質疑が行われた。末松文科相は「法案では、校長等の管理職が、教員自身の過去の研修記録を活用しつつ、今後の能力を伸ばす必要がある分野などについて、一人一人の教員から相談を受け、情報提供や指導助言を行うことを想定している。これにより、教員が自ら学びを振り返りつつ、適切な現状把握と目標設定の下で、自ら必要な学びを行う主体的で、個別最適な学びが実現されるものと考えている。従って、法案は教師の管理統制を強化するものではない」と述べ、管理強化につながるとの批判を一蹴した。

 また、教員研修を巡る校長など管理職による指導助言が、従来行われている期首や期末の面談の席上で行うことを想定しているため、研修記録が実質的に人事評価と連動するのではないか、との指摘もあった。これについて末松文科相は「教育委員会が行う研修等に関する記録は、校長等管理職により、各教師の質の向上に関する指導助言等の際に活用されるものであり、人事評価制度とは、その趣旨と目的が異なる。なお、今回の改正に基づく指導助言等を人事評価の期首・期末の面談を活用して行うことを想定しているのは、指導助言等を過度な負担とせず、学校現場で、効率的かつ合理的に行われることを意図するものであり、人事評価と異なる趣旨であることに変わりはない」と説明し、理解を求めた。いずれも吉良よし子議員(共産)の質問に答えた。

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