困窮家庭の大学進学「受験費用に公的支援が必要」 キッズドア提言

 大学進学を目指す困窮家庭の子供たちにとって受験費用が重い負担となっており、受験校数を1校のみに絞った人が46%を占めていることが、子供の貧困問題に取り組んでいる認定NPO法人キッズドアが4月27日に公表した「困窮家庭の大学進学アンケート」の結果で分かった。学校推薦型選抜(推薦入試)で受験した人のうち47%が経済的な理由で「推薦入試を選んだ」と回答しており、同団体では、複数校を受験する経済的な余裕がない家庭の子供は一般入試以外の受験方法を迫られている可能性があるとみている。記者会見した渡辺由美子理事長は、政府の高等教育修学支援新制度の利用者が多いことを評価しつつ、「修学支援新制度による給付が受けられるのは大学入学後になる。困窮家庭では大学入試に先立つ受験料の負担に苦しんでおり、公的な支援制度の整備が必要だ」と強調した。

 キッズドアでは、2020年度から困窮家庭の高校生・浪人生の進学支援を目的とした奨学金制度を独自に設けており、21年度には困窮家庭の高校3年生と浪人生に5万円、高校2年生に3万円を計804人に給付した。アンケートはこの奨学金を受給した人を対象にインターネット経由で実施したもので、601人が回答した。回収率は約86%だった。

 その結果によると、21年度の受給者は、ひとり親家庭(84%)と児童養護施設・里親養護家庭(6%)を合わせて9割で、年収200万円未満の家庭が96%を占めた。コロナ禍による経済的な影響を受けた世帯は46%となり、子供の進学を控える困窮家庭にコロナ禍が追い打ちをかけている状況が浮かび上がってくる。

文科省内で記者会見する認定NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長(手前)ら

 コロナ禍における受験勉強について困ったことを聞いたところ、60%の子供が学校の休校を挙げた。渡辺理事長は「困窮家庭の多くは部屋数が少なく、受験生でも自分一人の空間を確保できない。コロナ禍で休校になり、学校の自習室や図書室が利用できなくなると、勉強場所に困る子供が多くなる。ネット環境が不十分な家庭も多いので、受験に必要な情報収集も難しくなる。アンケート結果からは、困窮家庭の子供たちがさまざまな点で不利な条件で受験に臨んでいたことが分かる」と説明した。

 受験校数については、「1校のみ」が46%で、ほぼ半数を占めた。一般選抜(一般入試)で受験した場合には、1校から4校までがそれぞれ20%前後となっているが、推薦入試で受験した場合には、経済的な理由で「一般入試ではなく推薦入試を選んだ」との回答が47%を占めた。経済的な理由による進学への影響を聞くと、「受験校数を減らした」が57%、「塾・予備校に通わなかった、減らした」が56%と上位を占めた。こうした結果から、キッズドアでは「本当は複数の大学に挑戦したくても、経済的な理由から一般入試で複数の大学を受けることを諦め、推薦入試で1校だけを受験しているケースが多いのではないか」とみている。

 受験にかかった費用については、塾代を除いて、5~10万円未満が26%、10~30万円未満が36%、30~50万円未満が14%だった。受験校数が2校を超えると、受験にかかる費用が10万円を超える場合が60%以上となり、5校以上を受験した場合は全員が10万円以上かかっていた。

 受験制度で改善してほしいことを聞いたところ、「受験料の免除」(63%)、「ひとり親家庭への支援」(59%)、「給付型奨学金の対象拡大・増額」(45%)、「入学金・学費の支払期限の延長」(38%)と続いた=グラフ

受験制度への改善要望(受験生)

 こうした結果を踏まえ、渡辺理事長は「子育てをしている困窮家庭では、大学の学費や入学金の手前で、受験料などの確保が難しく、望む進路に進めない状況がある。これは教育機会の公正性を損なっている」と、語気を強めた。

 政府が2020年度に導入した高等教育の修学支援新制度について、「支援対象となる家庭の85%が利用しており、困窮家庭の子供たちにとって希望になっている。こういう制度が待たれていた」と高く評価する一方、修学支援新制度による給付が大学入学後になることを問題点として挙げ、「大学に合格し、3カ月後に入学すれば給付を受けられることが分かっていても、受験料を支払う段階で困窮家庭の子供たちは進路を阻まれている。大学受験の段階では、いま現在、公的支援がほとんどない」と指摘した。

 その上で、東京都が受験生チャレンジ支援貸付制度として、高校3年生に受験料として上限8万円を無利子で貸し付け、大学などに入学すれば返済免除となる制度を導入していることに触れ、「非常に優れた制度で、困窮家庭の子供たちが安心して受験に臨むことができる。こうした公的支援制度を全国に拡大してほしい」と訴えた。

 このほか、困窮家庭の子供たちに対して大学進学の機会を確保するため、▽高校生のいる困窮家庭に対する奨学給付金の拡充▽修学支援新制度による奨学金給付の時期と大学に入学金や授業料を納入する時期のタイムギャップの解消▽コロナ禍における学校の自習室や図書館などの利用制限の解消など、受験勉強のための環境整備▽児童手当の高校段階までの延長--を提言した。

あなたへのお薦め

 
特集