【GIGA2年目】高校教員「ICTの目的化」懸念 教育新聞調査

 小中学校に続き、1人1台端末の整備が進められている高校。教育新聞が今年3月に実施したウェブアンケートでは、高校の教諭・学校管理職89人から回答があり、うち87.6%で端末整備が進んでいるか、または予定があるものの、活用の状況はまちまちである現状が垣間見えた。自由回答では不十分なインフラやスキルの差など、小中学校での1人1台端末導入時と同じような課題が指摘される一方で、高校段階ではとりわけ「何のためにICTを使うのか」とその効果を問う声や、ICTを使うことが目的化することに危機感をあらわにする声が目立った。

保護者負担のボリュームゾーンは「3~5万円」

 文科省の今年2月の調査によれば、公立高校では今年度中に全ての都道府県・政令市で1年生の1人1台環境の整備が完了し、2024年度には学年進行による整備も含め、全学年で端末整備が完了する見込み。設置者が原則、費用負担するのは24府県・5政令市、保護者が原則負担するのは23都道府県・13政令市となっている。

【グラフ1】1人1台端末の整備状況(今年3月時点)

 教育新聞のアンケートの回答者(国公私立含む)では、今年3月時点で1人1台環境が「全学年で実現している」のは21人(23.6%)、「一部の学年で実現している」のは18人(20.2%)で、半数に満たなかった=グラフ1参照。最も多かったのは「まだ実現していないが、予定がある」で39人(43.8%)。整備が進んでいるか、予定がある人は計87.6%となったが、「まだ実現しておらず、予定もない」も11人(12.4%)いた。

 全学年または一部の学年で1人1台環境が実現していると回答した39人に、誰が端末の費用を負担しているかを尋ねると、最も多かったのは「CYOD(学校が指定した機種の中から保護者が購入)」方式で17人。次いで「教育委員会・学校設置者」で12人、「BYOD(機種を問わず個人の端末を活用)」が8人だった。「保護者から委託を受け、学校で統一機種を購入」という回答も1人からあった。

 保護者が費用負担する場合(回答対象者26人)の負担額は「3万円以上5万円未満」がボリュームゾーンで13人。次いで「5万円以上7万円未満」で6人、「7万円以上10万円未満」が3人だった。少数ではあるが「1万円以上3万円未満」「10万円以上」との回答がそれぞれ2人からあり、保護者の費用負担にもかなりの差が生じていることが分かった。

 1人1台環境はまだ実現していないが、予定はあるという南関東の40代の私立高教諭は「私立ながら大変遅れている。公立は一律にICTが普及となっても、私立はそうもいかず財政面も問題となっている側面が多い。やってみたいが、チャレンジするにも機材と環境は自分の負担となるので、チャレンジする環境が整わなく遅れているのが現状」と嘆く。

 加えて「教員用タブレットが支給されておらず、またその予定もない。個人負担で、とのことなので、探究学習など学年統一の活動を行う際に教員が端末を使用する活動が計画できない」(甲信越/公立高教諭・40代)、「校内に整備されている教育活動用のインターネット環境(無線LAN)の回線が弱く、困っている」(東京都内/公立高教諭・30代)というケースなど、さらなる環境整備を求める声も多く聞かれた。

取り組みたいことのトップは「発表・プレゼン」

 今年3月の時点で、全学年または一部の学年で1人1台環境が実現していると回答した39人に、1人1台で特に効果を実感したことを尋ねると、最も多かったのは「アンケート・調査」で28人の支持が集まった=グラフ2参照。次いで、義務教育段階でも評価が高かった「発表・プレゼンテーション」(26人)、「インターネットを用いた情報収集」(24人)と続いた。

【グラフ2】2021年度に取り組み、効果を実感したこと(複数回答)

 さらに今年度取り組んでみたいことを尋ねると、「発表・プレゼンテーション」が21人でトップ=グラフ3参照。次いで「小テスト・確認テスト」(19人)だった。それぞれの選択肢に大きな差はなく、取り組んでみたい内容が多岐にわたることがうかがえた。「ICT活用は、生徒のプレゼン能力の育成に一番影響していると思う。探究の時間にはICTがなくてはならない存在になった」(南関東/私立中高一貫校教諭・20代)という声も。

【グラフ3】2022年度に取り組んでみたいこと(複数回答、すでに取り組んでいて、来年度も継続したいことも含む)

 また1人1台環境により新たな学びが実現していると思うかを尋ねたところ、「探究的な学び」や「情報活用能力の向上」では、実現していると思う人が7割を超え、手応えがうかがえる結果となった。一方で「学習内容の深い理解」は56.4%にとどまるなど、学びのポイントによって効果の実感に差が見られた。

【グラフ4】新たな学びの実感

 ICT活用の事例としては「コロナ禍で対話が不可能な場合は、チャットによる対話で対応している」(九州・沖縄/公立高教諭・50代)、「国語科授業で、作家や作品中の登場人物の人物像に迫るエピソード探しと共有」(東北/公立高教諭・50代)、「テスト採点・集計ソフトを使って、採点時間が大幅に軽減された」(九州・沖縄/公立高教諭・30代)といった声が寄せられた。

 また「本校では既存の情報部(保守・メンテナンスが中心)と校内のプロジェクトチーム(ICT機器を用いた授業展開などを検討)が連動し、今年度は乗り切った。次年度については、分掌を横断するような(「ICT活用推進委員会」のような)組織をつくる必要があると思い、校内で現在検討しているところ」(南関東/公立高教諭・30代)と、今年度のさらなる展開に意欲を見せる教員もいた。

「『生徒に買わせたんだから使いなさい』と言われる」

 義務教育段階と比べ、端末整備の状況が地域や学校によってまちまちである高校段階。自由回答では、小中学校での導入期と同じように、さらなる環境整備やスキルの向上を求める声が多かった。高校段階ではそれに加え、ICTを使うことが目的化していることへの危機感を訴える声や、ICTを使うことでどのような教育的効果があるのかを、もっと議論すべきではないかと指摘する声も目立った。

 中国地方の20代の公立高教諭は「行政や管理職からは『生徒に買わせたんだから使いなさい』と言われ、もはや1人1台端末を使うことが目的となっている。しかしICTは手段であって、必ずしもICTを使うことが良いとは限らない。ICTを使っている人が偉くて、そうでない人はサボっている、というような風潮を感じて、本末転倒ではないかと思う」と吐露する。

 他にも「ICTを活用することで、生徒があまり考えなくなってきているのではと感じることがある。ICTをどのように活用するのかを、教員がもっと考えないといけない」(中国/私立高教諭・40代)、「ICTツールを使わねばならないという気持ちに陥っている教員、ICTツールで従来の授業の全ての代用になると勘違いしている教員が多い」(東京都内/私立高教諭・30代)、「時折ICTの活用が目的になっている授業がある。ICT活用は授業の狙いを達成するための手段の1つだと教員が自覚する必要があるのではないか」(東北/公立高教諭・20代)――といった声が、各地の教員から相次いだ。

 ICTの導入期にあり「機器を活用することでどのような効果があるか、検証にはまだ時間がかかる。現状は、機器が配備され慣れることに手いっぱい」(国立特別支援学校高等部教諭・40代)という状況の中、効果的な活用方法を模索している学校現場の様子がうかがえた。

今回のウェブアンケートは今年3月18~24日に、教育新聞の購読者のほか、教育新聞の公式SNSなどで回答を募り、全国の小学校・中学校・義務教育学校・高校・中等教育学校・特別支援学校の教諭・学校管理職460人から有効回答を得た。

●アンケート回答者の基本属性は次の通り。

 【学校種】小学校33.3%、中学校36.7%、義務教育学校7.8%、高校15.9%、中等教育学校・中高一貫校3.9%、特別支援学校2.0%、その他0.4%
 【学校設置者】国立3.0%、公立67.0%、私立30.0%
 【職位】教諭93.7%、教頭・副校長3.5%、校長2.4%、その他0.4%
 【学校所在地】北海道10.4%、東北8.1%、北関東5.5%、東京都内17.2%、南関東18.2%、甲信越2.9%、北陸13.0%、東海2.3%、近畿6.8%、中国4.2%、四国1.6%、九州・沖縄9.7%
 【性別】男性54.3%、女性43.3%、その他・答えたくない2.4%
 【年代】20代23.5%、30代28.3%、40代34.8%、50代12.4%、60歳以上1.1%

●学校教員統計調査などの公的統計と比較すると、今回の回答者には以下のような特徴があることに留意(5ポイント以上の差がある項目を記載)。

 【学校種】中学校、義務教育学校の割合が高く、小学校、高校、特別支援学校の割合が低い
 【学校所在地】北海道、東京都内、北陸の割合が高く、東海、近畿の割合が低い
 【性別】女性の割合が低い
 【年代】20代、40代の割合が高く、50代の割合が低い

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